鼓動5
リビングの中央にかけられている
時計の時刻は4時半を指していた。
洋子が決まった献立にそって
食材を次々とクックパッドで
検索しながら、
みんなの好みを確かめる。
「やっぱり今日の晩は
ビーフカレーにして、
明日の晩は
ビーフシチューにしましょう。
このクックパッドだとカレーには
塩、コショウ、バター、コーン油、
玉ねぎ、セロリ、人参、にんにく、
生姜、ホールトマト、ビーフブイヨン、
ケチャップ、はちみつ、ウースターソース、
クミン、コリアンダー、ローリエ、
パセリの茎、マッシュルーム、じゃがいも、
そして牛肉とカレー粉が必要よ」
実がおったまげたという表情で、
「洋子さん、そこまで
レシピ通りじゃなくてもいいよ。
それ全部を軽井沢
のスーパーで揃えたら
いくらになるかわからない」
不安な顔をすると。
やりとりを見ていたユキチが、
「ビーフブイヨンに野菜で
フォンドボーを作って、
牛肉はバラで、カレー粉は
『ディナーカレー』
でいいんじゃね」
と冷めた表情でいうと。
「うん、わかった。
それでいきましょう」
と洋子は表情を崩しながら、さらに
「説子、どこかに
圧力鍋がないか探してくれる?」
と指示を出す。
「圧力鍋?」と意味が
わからなずオタオタしている
のを見てユカが、
そんなことも
わからないのか、
という様子で笑いながら、
「ビーフシチューの肉を
トロトロにするための魔法の道具よ」
とあやすように答える。
「だってそんな鍋
見たことないもん。
どんな形なの?」
と収納の中でさらに探索は続く。
ユカが加わり探しまくったあげく、
シンク下の扉の奥に、他の鍋と
明らかに雰囲気の違う
圧力鍋を見つける。
「あったわよ、洋子」とユカ。
「よかったわ。じゃあ、手間をかけずに
ビーフシチューもできるわ」
と安心したところで、今度はユキチが、
「それなら赤ワイン
は絶対外せないぜ」
と念を押す。
「この組み合わせだと
隠し味にウースターソースが
あったほうがいいわね」
と洋子がさも知ってます、
というそぶりを見せると。
「野菜は玉ねぎ、人参、
じゃがいもがあれば十分さ」
と大介が必要最小限を強調する。
「そうね、じゃあバーベキューは
盛大にしましょう」と洋子。
「どんなバーベキューにするんだ」
と言い出しっぺの謙二がワクワクしていると、
ユキチも、
「野菜と、肉を丸ごと
焼いていけばいいのさ」
とそっけない。
「ちょっと待って、
コテージの事務所に
電話して、バーベキュー用の
鉄板を貸してもらえるか聞いてみるわ。
やっぱ外でやった
ほうが気持ちいいもんね」
とスマートフォンを
取り出し洋子が電話をかけはじめる。
その間に実が、
「魚介類のエビ、イカ、ホタテ、
それにフランクフルトや厚切りの肉。
そして焼きそばやピザ
なんかも超オススメだぜ」
と、さももったいぶっていうと、
「聞いただけでヨダレが出ちまう。
海の幸も悪くないな」
「謙二、あまり期待するな。
海はここからかなり遠いぞ」といえば、
「大介、今回の合宿で
バーベキューは俺の夢だったんだ」
「お前、キノコのバター焼なんか知らねえだろ」
「なるほど、美味そうだな」
「ダメだ、こいつの食欲は底なし沼だ」
「もう遅い、最終日までとても待っていられないぜ」
みんなが盛り上がってきたところで、
突然洋子が大きな声で、
「明日持ってきてくれるって!」
「ワオ!ヤッター」
と謙二が思わず両手でガッツポーズ。




