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黒ノート ~あれが世界を救うらしい~  作者: 時 とこね
最後の書
86/87

作品No.01 「黒ノート」

そうか

あの日の私は

まだ何も

知らなかったんだ


窓から飛び立つ鳥のように

自由になれるとだけ思っていた


どうして

人が生きることは

こうも

簡単になったのだろう


この命が尊いものだって

感じることが少なくなった


大地を蹴って

大気の中へ

夢を握って

眠りについた


明日になったら

今日の私は

何事もなく

消えていくんだ


だから書き留めよう

今の記憶おもい




そうか

あの日の私は

まだ何も

知らなかったんだ


窓から見える景色だけが

私にとっての世界だった


どうして

人が生きていくのかを

稚拙な

文章に書き留めた


たいして生きてもいないのに

大層なことを連ねていった


言葉を借りて

矮小な声で

夢を語って

瞳を閉じる


時が進めば

現在いまの私は

過去に巻かれて

消えていくんだ


だから書き留めよう

今のことば




そうか

あの日の私は

まだ何も

知らなかったんだ


それ以上に未来いまの私は

暗がりにいるように何も見えていない


どうして

人が生きていくのかを

稚拙な

文章に書き留めた


それなのに未来いまの私は

生きることすら諦めたがっている


風雨に晒され

人波に飲まれ

慈愛に飢えて

眠りについた


未来いまの私は何も見えてない

だから声のする方へと向かう


喜びを捨てて

悲しみが凪いで

怒りを沈めて

楽を求めて


そんな私も

ずっと前には

生きようとして

産声をあげた


そうかあの日の

私は何も

知らなかったけれど

生きようとして


稚拙なままの

文章で綴った

生きる意味や

借り物の愛が


あの日の記憶おもい

あの日のことば

未来いまの私を

繋ぎ止めている


黒歴史だけど

生きようとして

未来いまに託した

あの日の欠片


そうか

あの日の私は

まだ何も

知らなかったんだ


思い付きで書いたものが

たった一人を救っていると


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