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作品No.74 「桜の日」
少し黒ずんだ雪のように
白い空が広がって
咲き誇っていた花が
雨に打たれて散っていく日に
私が死ねなかったのはたぶん
扉が開けなかったせいだ
嘘。
私が死ねなかったのはきっと
始めからそんな気がなかったから
命の権限は私が
握っているはずなのに
咲き誇っていた花が
雨に打たれて散っていく日に
「私が死ねなかったのはたぶん
自分が弱いせいだと思っていた。
嘘。
私が死ねなかったのはたぶん
どこかで生きていたいと思ったから。
……みたいな続きを、書こうと思っていた気がする」