家事マスターに妻がなりますようにっ!!
殿のネコババ事件の日の夕。
政信は職務を終えて、民の様子を
観察しながら帰宅の途につく。
政信の家は城下町の端っこの方の木造平屋建て。
「ただいま、」
立て付けの良くない引き戸を引く。
「お帰りなさいませ、ご主人様っ♪」
ウキウキとはしゃいだ声で迎えられらる。
迎えてくれたのはメイド、…では無く妻の和子
年は政信の1つ下の19歳。
腰まで伸びる長い黒髪と対照的な白い肌。
黒目は少し細く、凛々しくもどこか抜けた感じがする。
まだ新しく汚れがついていないエプロンが更に初々しい。
「それはメイドが言うことだよ、和子」
「知ってますよ~今、巷で話題のメイドさんの真似です!
お殿様とこの前お話したとき、
メイド喫茶をこの国につくるんだ!、って躍起になってましたから」
「あのジジイ……また公私混同しようとしてるのか、」
ほんの数十分前に尽きた説教のネタがもう出来てしまった。
「それよりあなた♪ご飯作ってくれる?お風呂沸かしてくれる?
そ・れ・と・も私にマッサージをしてくれる?」
「なんで全部俺がしないといけなくなってるんだ!?」
殿に気力を全て奪われたが突っ込まずにはいられない。
「うふふっ冗談ですよ♪全部失敗しましたけど、一応
愛を込めて頑張りましたっ!。」
ふふんっ、と褒めて欲しそうに満足気な表情。
「そうか、ありがとう…ってまた全部失敗したのかっ!?
飯も風呂も!?」
はい♪と相変わらず褒めて欲しそうな表情でこたえる。
なんで自信気なの…
しかし一様に和子を責める事は出来ない。
ほんの半年前まではここは近世の国。
そんな人達に簡単でハイテクな家電を渡されても
なおさら苦労しなければならなくなる。
……まぁ、技術革新の前から和子は家事が
終わっていたことは置いといて…
そしていつもの間違い探しが始まる。
「それで、今日は何を間違えたの?」
「えーとね、白亜紀でお米を炊いたんだけど、」
「炊飯器、ね。うん、それで?」
「炊き上がりの米が真っ赤に染まってたの、キレイでしょ?♪」
「う…ん…、何入れたの?…」
「普通にやったよ?だから私、今日は大安の日だから
お米が自動的に赤飯になる機能なのかな~、って♪」
「なるか!!!!ハイテク過ぎるだろ!!
ってか昨日は青い米炊いてたし!
リトマス試験紙でも入れてるの?…で風呂は?」
「えーっと、ポエマー使ってお風呂沸かしたんだけど、」
「ボイラー、ね。それで?」
「沸きました、って機械が言うから見に行ったら
水面にぼこぼこ泡がでていたの」
「沸騰してんじゃん…というかどうやったら沸騰させれるのか
逆に知りたい…」
嗚呼、とため息と共に頭を抱える。
そんな政信に不満気なのは和子。
「でも一生懸命頑張ったもん!そこは褒めてよね♪」
「ああ…偉い偉い、良い嫁さん貰えて俺は幸せだよ…うん…」
「そんなに褒めないで~♪」
顔を両手で覆い恥ずかしそうに、嬉しそうに舞い上がる。
俺の周りには変な人間しかいなかった。殿とか、父とか、
そしてあの「右大臣」も。
それだからこそ、和子の凛々しいしっかりしてそうな見た目に
惚れたのに… 中身が伴ってなかった…
こんなに変人が俺の周りに集まるのは何故なんだ?
類は友を呼ぶって言うが、俺がおかしいのか?
変人だらけの国の左大臣、政信は大いに悩んだ。