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8 甘い






「チョコレートとココアの甘い甘い同盟は向かうところ敵なしですね」


 神代 七が変なことを言うのは日常である。

 特に彼氏の玖来 烈火の部屋にいる時は、およそ変なことを言わない日はない。

 学校も終わり、烈火は七を連れて自宅に帰還。先の約束通り隠していたお菓子の提出と、ついでに飲み物に注文のココアを出す。

 いつもの組み合わせだが、烈火としてはそれはどうだろうと言いたい。


「甘すぎじゃねぇの?」


 甘いチョコに甘いココアって、組み合わせとしては虫歯が心配になる。甘い口内に甘いものを突っ込んで、ちゃんとそのおいしいは正しいのか。

 烈火の言に七はなにもわかっていませんね、とばかりに鼻で笑う。


「はっ。それがいいんじゃないですか。世の中に苦いものなんて不要です、甘さ。そう甘さ糖分だけがこの世の真理なんですよ!」

「甘党も大概にな。太るぞ」


 いつもの調子で軽く言った。

 すると爆発のような反応が返る。


「玖来さん! さっきも思いましたけどね! 女性に太るとか、そう簡単に言わないでください! マナー違反というかもはや罵倒ですからね!」

「え、あ、ごめん」


 そこまで怒るとは思ってなかった、みたいな顔をする。烈火は微妙に女心をわかっていない。

 これは今日昨日で積もった鬱憤ではないのだ。烈火のささいな無神経が積もり積もって発露した怒りなのだ。それを理解してほしい。


「全く。私が寛大だからこの程度で済ましてますけどね、本当ならビンタの一発でも足りませんからね? 玖来さんはもっと女性へ配慮しなくてはいけません」

「わっ、悪かったって。ちょっと想像を怠ったよ」

「それでよく紳士を自称できますね。女性を立ててこそ紳士でしょうに」

「ぐぅの音もでません」


 久しぶりに烈火は降参。両手を挙げて平謝りだ。

 こういう七優位の場面は珍しい。ちょっと嬉しくなって調子付く。ぴしりと烈火の手元のチョコを指す。


「罰として、そのチョコレートを私に食べさせなさい」

「そのって、おれもう齧っちゃったけど」

「そっ、それで構いません……」

「…………」


 烈火は数瞬、意味を考える。思いついて、ニヤつけばいいのか恥ずかしがればいいのか困惑してしまう。

 ともあれ罰と言われて応えぬわけにはいかない。悪いことをしたという自覚はあり、それをどうにか許してもらいたいと思っているのだから。

 できるだけ素っ気無く、顔を背けて、でも目線だけは七の顔を見つめて。


「どうぞ」

「あーん」


 あむあむと七は躊躇いなく烈火の手からチョコを食べる。

 烈火が上手いこと手を引っ込めなければ指ごともってかれるところだった。そこについて、七はやや不満そうな顔はするも、すぐに口でとろける甘さにふにゃりと頬が緩む。


「どうだよ」

「甘い、です」


 頬が落ちそうなのは、きっと食べさせてくれた人があなただから。

 七ちゃんは緩む頬を抑え込むのに大変な労力を要しましたとさ。







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