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17 ノクターンじゃないし





 下ネタ? 注意。










「パラリラパラリラ」


 神代 七が変なことを言うのは日常である。

 特に彼氏の玖来 烈火の部屋にいる時は、およそ変なことを言わない日はない。

 七ちゃんは定期的に暴走族みたいなノリで襲ってくる。


「はーい、汚物は消毒でーす」

「ぐわー」


 適当にやられたフリをしてみると、七ちゃんはそのままベッドへ移動。


「汚物はどこだー、です」


 ベッドの下を覗き込み、そこになにか隠された深遠の秘法を探す。

 定番だが、定番ゆえにそれはない。


「おや、エロ本がありませんね。玖来さん、どこに隠しているんですか」

「いや持ってないし」

「あぁ、パソコンですか。電子的な方向ですか」

「いや持ってないし」

「二次ですか三次ですか」

「いや持ってないし」

「…………」

「…………」

「冗談、ですよね……?」


 烈火は一切目を逸らさずにいてやった。

 七は震え上がった。


「くっ、玖来さん……もしかして、あなた本当に、いっ、ED……なんですか?」

「ちげぇーよ!」


 なんで短絡的にそうなるんだよ。

 烈火としてはやれやれである。

 七としてはわけがわからない。思春期の性欲はサル並であってしかるべきだろうに。と、ネット知識で確信している。


「じゃあ、だって、玖来さんは性欲がないんですか? 健全ハーレム物の主人公なんですか?」

「いや……そりゃ性欲くらいあるけど……」


 なんでこんな話を異性としなきゃならないんだ。ある種の拷問だよ。

 七としては拷問どころか興味津々。全力でこの話題を盛り上げにかかる。


「では、どうやって発散してるんですか。まさか普通に行為してますよってことですか? 誰とです! ぶっ殺してきます!」

「怖いやめろ。大丈夫だ、まだ童貞だって言ってんだろ」

「ぅぅ、本当ですよね、信じていいですよね」

「信じろ」

「はい。では、性欲の発散はどのように?」

「……言わなきゃ駄目か」

「言わなきゃ信じられませんね」


 その言い方はずるい。

 烈火は当然に童貞だが、童貞を証明することは難しい。彼女を悲しませないためには信じられる材料を示さざるをえない。

 烈火はそれでも最後の抵抗。


「……引くぞ」

「引きませんよ。私を信じてくださいな」

「…………」


 深い深い沈黙。

 互いに目を合わせて口を閉ざす。時間だけが過ぎ去り、やがて烈火は観念する。

 物凄く言いづらそうに、ぱくぱくと何度か言おうとして失敗して、最終的に顔を覆うように俯きながら、言う。


「なっ――七ちゃん」

「えっ」

「七ちゃんの、写真……」

「…………」


 七の顔に火が吹いた。

 だが顔を俯かせた烈火は沈黙の返答ととる。


「ほら引く! だから言いたくなかったんだよ! 嫌いにならないで!」


 さしもの烈火もこの爆弾発言には自虐的にもなる。最悪、気持ち悪いと切って捨てられ嫌われてしまうかもしれないと思っていた。

 だが七は慌ててそれを否定。引いてなんていないし、嫌いになんてならない。


「そんなことないです! 引いてませんよ! むしろ興奮しました!」

「はぁ?」


 七ちゃんも結構おかしい方向にぶっ飛びだす。


「ていうか私も玖来さんおかずにしてますよ! 今日もこの会話を思い出してすげぇはかどります!」

「えぇ……ちょっと恥ずかしい……」

「あれですね、今度タイミング合わせてテレフォンセックスしますか!」

「しねぇーよ!」


 七ちゃん下ネタ激しいよ。ちょっとは淑女の自覚をして控えてほしいよ。

 ていうか、だったらそんなまどろっこしいことなんかせずに。


「行為、すればいいじゃん」

「……え」


 今度は七が固まる番。

 しかし七の復帰は素早い。何故ならそれは待ち望んでいること。フリーズなんてしていられない。

 勢い込んで期待の眼で詰め寄る。


「いっ、いいんですか。していいんですか?」

「まあ卒業したらな」

「玖来さぁん!」


 結局それかよ!

 七はその日、最後までねだったのだけど、全てすかされてしまいましたとさ。












「やっぱりEDなんじゃ……」

「違うって!」





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