15 最初は
「剣崎さんもいますし、なにかいつもとは違う形で話題を作れませんかね」
神代 七が変なことを言うのは日常である。
特に彼氏の玖来 烈火が学校で隣の席にいる時は、授業の合い間にある短い休み時間ごとに言ってくる。
連れて来た剣崎 京子が傍にいて、よっていつも通りとは趣が異なる。それを自覚的で、だからこそ変化を取り入れたいと七は言う。
烈火としても嫌はない。
「別にいいが、どんなだよ。女が増えたしガールズトーク的な?」
「ガールズトークは女同士で話すからこそだろう」
「というか玖来さん、ガールズトークに混ざりたいんですか? カマ野郎ですか?」
何故か両側からフルボッコにされた。
沈黙することにした。
していると剣崎が挙手。
「ではわたしから話題を振ろう」
「おお、いいですよ、なんでもどうぞ」
「二人は付き合っているんだろう? では、お互いどこを好きになったんだ」
「…………」
「…………」
なんでもどうぞとか安易に言うから……。
烈火は曰く形容し難い顔色で俯き、七は顔を真っ赤にして挙動不審。唯一、剣崎だけがその鋭い目を動じさせずにふたりを見つめる。
はぁーと、最初に口火を切ったのは烈火であった。別に隠すことでもなし。
「とりあえず最初は顔だ」
「お前は普通に酷いことを平然と言うな、烈火」
「本音だからな。ま、その後に中身も好きになったし、いいだろ」
「ふむ、そんなものなのか。では神代は?」
烈火が場を和ませたお陰でだいぶ言いやすくなった。
七は曖昧な笑顔を浮かべて一応本音を告げる。
「んー、そうですね。最初はプロフィールでしょうか」
「ぷろっ。それもそれで大概酷いな」
「出会いが少々特殊でしたから」
「どんな出会いだったんだ?」
不意に烈火と七は目を合わせ、示し合わせたようにニヤリと笑んだ。
「「それは秘密だ」」
見事なハモリ具合に、剣崎さんは追及の言葉を失ったのでした。
「実にファンタジーだったとだけ言っておこう」