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神の降臨(やや番外編)

ストレスがたまってやりました。

 ライラとダイアナは、二間続きの部屋へ案内された。入ってすぐの部屋は、柔らかく分厚い絨毯の敷かれた部屋で、一枚板の木のローテーブルと、その周りに丸く平たいクッションが幾つか並んでいる。木のローテーブルから、仄かに良い香りがしているのが、不思議だった。

 ライラは、テーブルの中央に敷かれた(多分、テーブルクロス兼アクセントだ)幾何学模様の丸い布から香りがたっているのかと、コッソリ嗅いでみたけれど、どうもテーブルの木から強く香りを感じた。


 あたしたちをここへ入れるって事は、普段誰も使っていない部屋って事だよね? そんな部屋へ置くテーブルにまで、何やら珍しい木を使ったものを置くなんて、ムカつくぐらいお金が有り余ってんのね! 


 そう思ってフンと香りを鼻から締め出した。

 そうしていると、先に奥の部屋へ偵察に行ったダイアナの歓声が聴こえた。


「ライラ! おっきなベッド!!」

「も~、ダイアナ、はしゃぎ過ぎ!」

「だって、見てライラ!」


 ライラはダイアナに呼ばれて奥の部屋へ行き、歓声を上げた。

 今まで見た事の無いサイズで、幅はライラとダイアナがもう一組寝転んでも大丈夫そうだったし、マットの厚さは床からライラの腰程まであった。


「うわ~!? な、なにこのベッド!?」

「ライラ、飛び込もう!」


 ダイアナが目をキラキラさせてライラに提案した。

 ライラはうずうずして頷いた。


「ちょ、ちょっと待ってダイアナ、天蓋! 天蓋がジャマ!」

「どけよう、早く、やっちゃって!」

「うん、……よし! 行くよ? イチ、ニ、さ~ん!!」


 キャーッと歓声を上げてベッドを転がる二人を、冷めた目で見ていたのはレイリンだ。


「お品の無いのがまた増えましたわね」

「良いじゃない。はしゃぎたい気分なんだよ」


 アシュレイはニコニコしている。ライラのスカートが思い切り捲れていて「いいぞ、もっとやれ」だったからだったが、彼の慈愛に溢れた表情カモフラージュにレイリンは「お兄様は寛大過ぎますわ」と唇を突き出した。


「お二人とも、そんな汚らしい恰好でシーツを汚さないで下さる?」

「レイリン! あんたもいらっしゃいよ」


 ダイアナと再会出来た喜びで、緊張の糸が切れたのか浮かれまくったライラが誘った。 彼女は、クスクス笑っているダイアナ(こちらも何かが切れている)と自分の間にスペースを作って、ポンポンと手で叩くと、「ホラ!」と言って笑い声を上げる。

 レイリンはその誘いに、とんでもないとばかりに後ずさった。


「そ、そんな事しません!」

「レイリン、手伝ってあげるよ! それ!」


 ムキになるレイリンの身体が、ふわりと浮いた。


「え!?」


 アシュレイが後ろからレイリンを捕まえて、そのままライラ達のベッドへ飛び込んだのだった。

 

「きゃあああ!? ぶっ!」


 二人が飛び込んだ弾みで飛び上がったライラとダイアナが、ケタケタ笑った。


「いらっしゃいレイリン~」


 ライラがベッドに埋まったレイリンの頬を両手で包んだ。


「アシュレイも」


 寝転がって肘を突き、手で頭を支えながらダイアナが言って、アシュレイは「やぁ、ハーレムだ」と悦に浸っている。

 スッと彼から視線を外し、ぎこちなく距離を取るライラに、ダイアナは目ざとく気付くとちょっと小首を傾げた。


 アレ? 何だか、アシュレイが言っている以上に彼を避けている気が……。私を迎えに来る前に、何か二人にあったのかな? でも、アシュレイとした話にそんな様子は無かったハズ。

 え? ヤダ、もしかしてライラ、意識してる? しちゃってる?


ダイアナはそう思うと、コッソリ親友にキュンとなった。


 ライラ……今まで好きになったら強がってグイグイ行ってたのに、あんな風に意識するなんて……。好き過ぎて戸惑いってヤツ?

よし! 私、この二人を絶対くっつけてやる!!

 ……さてどうしたものか、ライラは意地っ張りな所があるから、あまり冷やかさない方が良い。かと言って、押してやらないと話が進まないかも知れない。


 別にダイアナが押さなくても全然へーきなのだけれど、彼女はそれが自分の使命と思い込んだ。

 思索していると、兄の無体に暫し呆然としてシーツに埋もれていたレイリンが、キーッとヒステリーを起こしてベッドからずり降りて、


「貴女達! シーツが汚れるって言ってるでしょう!? それとも汚れたシーツでお休みになるのが貴女達流なのかしら?」

「だって、じゃあベッドで寝るなって事?」


 ライラが膨れると、レイリンは「ふん」と肩でふわりとさせた金髪を揺すって、「身体を清潔にしてらっしゃいな」と提案した。

 ダイアナが手を打って喜んだ。


「お風呂! 入りたいね」

「まだお風呂屋さん開いてるかな? 近くにあるの?」


 ライラ達の街では余程の金持ちでない限り個人でお風呂を所有せずに、公共の風呂場を利用していた。それ程頻繁に入るものでも無く、大抵裏庭などで水を浴びたり、布で身体を拭いて始末するので風呂場へ行くのは気晴らしのご褒美に近かった。今まさに、そのご褒美が彼女達には打って付けで、ライラもダイアナも「カナロールの浴場ってどんなかしら?」とウキウキしてレイリンに聞くと、彼女は「え? ウチにありますよ」とキョトンとした。

 ライラとダイアナもキョトンとして目をパチパチする。そうか、余程の金持ちの家だった。とライラとダイアナは苦笑いするしかない。


「時間も気にされなくて結構よ。……わたくしは毎日入るので、用意も出来ていますわ。今すぐベッドから降りて、どうぞ」

「じゃあ、レイリンも一緒に入ろうよ!」


 ライラが気安い態度でレイリンに言って、ダイアナも頷いた。


「使い勝手が解らないかもだしね」

「わ、わたくしも? お、お風呂なんてどこも一緒じゃなくて?!」

「何よレイリン、恥ずかしいの? オンナ同士じゃない」


 ライラに肘でつつかれて、レイリンは真っ赤になって抗議した。


「そ、そんなワケないでしょう!?」

「レイリンは、世話役の召使い以外と入った事無いんだよ。是非一緒に入って女の子達がお風呂でどんなに楽しい時間を過ごすのか教えてやってよ」

「お、お兄様!! こ、困ります! こんな、見ず知らずの方と……」

「お~、レイリン! 普通は見ず知らずの人と仲良くワイワイ入るものなんだよ! 僕も一緒に入れたら良かったけどね……」


 チラッ、チラッと何故かライラを見て、見事に無視される。

 ダイアナは、彼女がそうすると余りロクな事が無いのだけれど、ピンと閃いた。


「そうだよ! 皆で入っちゃおう!」

「!?」

「な、何を言ってらっしゃるのかしらこの人は!? は、はしたない!」

「はしたないのは当たり前! 酒場の踊り子なんだから! ね! ライラ! 恩人にサービスしなくっちゃ!」


 驚愕の表情で固まるライラに、ダイアナはウインクして見せる。


(ライラ! あなたの踊り子仕込みのプロポーションを、アシュレイにアピールするチャンスよ!!)


 完全に絡まった糸に、分けも判らずライラはもがく。と言うか、思考が上手く回らない。


「な、何言ってるのダイアナ……?」

「カナロールも浴衣で入るんでしょう?」


 風呂とは言っても、ライラ達の風呂は湯気で熱された室内で汗をかき、それを流す、というモノなので、それ用の浴衣がある。ライラ達が使っていた街の浴場にも浴衣はあったけれど、使う者と使わない者半々で、ライラ達は使わない派だ。せいぜい下半身に薄布を撒く位だった。


「そうですが、混浴じゃなくてよ!」


 レイリンがキーキー言うので、ダイアナは「このガキ、邪魔過ぎる」と思った。そして、「コイツも何とかしなければ」と胸中で鼻息を荒げる。


「あなたの家のお風呂なんだから、良いじゃない。あなただって、たまにはお兄様のお背中をお流しあそばしたら?」

「そ、そうだよレイリン! スキンシップだよ!」


 この機を逃すまいとしたのはアシュレイだ。

 でも、ライラとレイリンの頭上に、ほぼ同時に下着一枚で駆け回る自分の姿がもわんと沸き上がった事には気付かない。


「な、なんだレイリンその顔は!? 裸で入ろうってワケじゃないじゃないか!? それとも何? 僕が妹を不埒な目で見る最低野郎だと思っているのか?」

「そ、そんな事は……」

「それに、仕事帰りの兄を労ってくれないなんて……なんて冷たい妹なんだ……」

「お、お兄様……そんな悲しい事言わないで下さい……わたくし、いつでもお兄様のお役に立ちたいと思っています……」


 可哀想にレイリンは涙ぐんで首を振る。最低だ。最低の兄貴だ。


「ちょっと待って! アシュレイ、あんた前に自分は紳士って豪語してたじゃない! ここは辞退するのが紳士じゃない!?」


 アシュレイは負けじとライラに首を振り、腕を組んで仁王立ちして捲し立てた。


「僕は淑女の有難い申し出を断るのは紳士じゃないと思うね。据え膳喰わねば男の恥だし、僕を労おうとしてくれたダイアナ様だって、『はしたなかったかしら?』って恥ずかしくなっちゃうんじゃないかな!?(ダイアナ様ありがとう! 本当に僕の味方してくれるんだね!!)」

「ダ、ダイアナ様……!?」

「そうよライラ、せっかくワタシ達なりのお礼をしようってのに、突っ撥ねられたら悲しい!(ライラ、普段の恋愛モードなら嬉々として乗って来るのにどうしちゃったの!? まさか……出し惜しみして気を引く戦法? でも無駄だよ! 私達にはこういうのがお似合いで、お得意なんだから!)」

「ほらね! ダイアナ様を僕は悲しませたくないな!(いいぞ! ダイアナ様、僕達良いコンビだ!)」


(な、なんなの? 一体どうしちまったのダイアナ!? アシュレイの気張りが気持ち悪すぎる!!)


「い、いいよ。ダイアナ。好きにしなよ。あたしはアシュレイに別のサービスをするから、お風呂にはアシュレイとなんか入らない!」

「「!?」」


 思わぬ(?)反撃に、一気にダイアナとアシュレイの頭の中がピンク色に染まった。


(べ、別のサービス、だと!? な、なんだろう!? ぐはぁっ)

(な、なに!? ライラ! 別の……!? そっか、二人っきりが良いんだね!? ゴメン! 私足手まといだった!)


 キュンキュンする二人の心中に気付かずに、ライラは「早くお風呂して来なよ! あたしは後からゆっくり入るから!!」と腕組みしてベッドに座り直し、あぐらをかいて背中を見せてしまった。

 

 そして、何だか変な事になった。


 ……ちょっと待って。じゃあ、私とアシュレイと、このレイリンってと入るって事……?


 これはかなりなんか違う。

 見れば、アシュレイも微妙な表情でダイアナを見ている。

 ダイアナはチラ、とライラの頑固そうな背中を見て、お手上げのポーズをとった。

 だが、ここで諦めないのがアシュレイ・ナザールだ。


 妹と彼女(未定)の親友と風呂? 後々汚点しか残らないじゃないか。これはマズイ。……いいだろう。ライラ、君からのご褒美は「後からあげる♡」ってヤツと「一緒に風呂」と、両方頂くよ!!


 アシュレイの未だ力強い目の輝きに、ダイアナは勇気づけられた。そして、こう思った。


「まだ負けてない」


続きます。すみません。

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