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番外編 ちょっとどうでも良い話

本編に入れるつもりで書いていましたが、思い留まりました。

番外編なうえに、タイトル通りです。飛ばして頂いて構いません。


 彼女はつやつやした真っ黒な髪を風にそよがせ、黒目がちな大きな瞳を潤ませていた。

 視線の先は、緑が波打つ野原。そこには、いずれ自分の夫となるものが、他の女達の尻を追いかけ回している。


 ああ、厭だ。


 彼女は首を振り、溜め息を吐いた。


 私はあんな浮かれた色のヤツは厭。

 もっと、自分のご主人様みたいな……ううん、むしろご主人様が良い。

 ご主人様は不良少女だった私に、根気よく、愛を持って優しく接してくださった……。そうして、私を立派な淑女レディに変えてくれた……。最近はお忙しいのかあまりお乗りになって下さらないけれど、私は指折り数えて待っている。彼のテクニックは最高。彼に馬乗りになられると、私は自分を押えられずにどこまでもどこまでも……。

 彼女はハッとし、自分のはしたなさを恥じて鼻息を荒くした。

 ……男は茶色の髪に限る。私は、白なんてイヤ。受け狙いで、軽薄だわ。

 ああ、ご主人様、私はあんな軽薄そうなヤツとなんてイヤ。

 彼女が叶わぬ恋に思いを馳せて悶えていると、聞き慣れた足音がした。

 彼女が大好きな音だ。彼女は首を伸ばして、足音の方を見る。


 ああ! ご主人様だわ!!

 

 彼女のご主人様は、彼女の大好きな茶色い髪を風に揺らして

「シディ!」と名前を呼んでくれた。


 彼女は目をキラキラさせて喜びの声を上げたが、次の瞬間目尻を釣り上げた。

 ご主人様の横に、得体の知れない下品そうな娘が並んでいたからだ。よ~しよしされて「ご主人たま……」と心がデレデレになりつつも、彼女は娘を睨み付けた。

 娘はあろう事か微笑みかけて来て、余計に彼女の苛立ちを煽った。


「ライラ、僕のお気に入りのシディだよ」

「うわぁ、真っ黒! 綺麗ねぇ」

「ちょっと待ってて、クリスティンをあの村へ連れて行く様に言って来るから」

「うん」


 ご主人様が立ち去ると、娘が馴れ馴れしく彼女に手を伸ばしたので、彼女は怒って威嚇の大声を出した。

 

 触んじゃねぇっテメーの顔面直視出来ない程滅茶苦茶にしてやろうか!? と、彼女は喚いた。

今は淑女のナリでも、結局のところ彼女は荒れていた頃の自分とは決別できやしないのだ。

 

「うわっ! 何!? きゃっ!」


 彼女が娘の服を乱暴に引っ張ると、そこへ、サッと娘と自分の間に割って入る者がいた。


『!』

「ラ、ラルフ!」


 戸惑う彼女に、ラルフと呼ばれた男が鼻息を吐いた。


シディさんとやら、アンタ、急に乱暴なんじゃないのか?


 な、なによ、と言う風に、彼女はそっぽを向いた。

……だって……急に触ろうとするなんて失礼よ。


 ラルフはフンと鼻で笑って、シディの頭に、自分の頭をゴンとぶつけた。


 な!? 何するの!?


「ラルフ!? 喧嘩しちゃ駄目だよ!?」


 急に威嚇するあんたはどうなんだ?

 お転婆は良くないぜ。


 シディはフンと鼻息を吐いて、自分の部屋の奥へ行き背中を向けた。

 ……なによ、アイツ! 最低!


「お~い。準備出来たよ」

「あ、アシュレイ。ラルフ、シディと相性悪いみたい。シディとちょっと喧嘩して、ほら、シディお尻向けちゃった」

「え~? 大丈夫だよ! 種付け時期になったら仲良くやるさ」

「そうゆうもの? そっか。ラルフ、お嫁さん出来て良かったね!」


 誰がこんなヤツと!


 シディはフンと鼻息を荒げてチラッとラルフの方を見た。

 彼はご主人様に連れられて、憮然とした表情で新しい自分の部屋へ入って行くところだった。

 その逞しい体つきと、艶やかな毛色を、彼女はようやく目にとめた。

 

『!』


 ……茶色……。ご主人様と同じ……。


 ラルフは彼女になど目もくれず、去りゆくご主人様の横に並ぶ娘をジッと切なげに見詰めている。

 その切なそうな眼差しに、シディは彼の気持ちを理解した。

 

アイツ……私と同じ、報われない恋をしている……。


 苛立たし気にしている姿は、あの軽薄なクリスティンよりずっと「何かある」様に見えて、シディの胸は怪しく高鳴り始めたのだった。ひひ~ん。


ごめんなさい。


馬って色識別できるんでしょうか。(小声)

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