異世界で無能扱いされた俺、現実に戻ったら最強すぎて人生逆転した
勇者として異世界に召喚された高校生・レイン。
しかし彼のステータスは“最低値”。魔法も発動せず、仲間からは「無能」と蔑まれ、ついにはパーティーから追放されてしまう。
絶望の中、元の世界へ帰りたいと願ったその瞬間――
彼の前に現れたのは、空間を裂く謎の亀裂だった。
気がつけば、そこは元の現実世界。
だが、帰還した彼の体には――
異世界で一度も発動しなかったはずの“魔法”が宿っていた。
さらに響く謎の声。
「制限解除――全能力解放」
その直後、空が割れ、異世界と現実が繋がる。
“無能”と呼ばれた少年は、今や世界を救う唯一の存在へ。
これは、異世界で全てを失った男が、現実世界で最強となり――
全てを覆す逆転の物語。
「……お前、本当に何もできないな」
吐き捨てるようなその一言が、やけに鮮明に耳に残った。
異世界アルディア。勇者召喚によって呼び出された俺――レインは、その日もまた“役立たず”の烙印を押されていた。
「なあガルド、本気でこいつ連れてくのか?」
後ろから、仲間の一人が笑い混じりに言う。
「ステータス見ただろ? 一般人以下だぞ」
「……聞こえてるぞ」
思わず口を挟むと、数人が肩をすくめた。
「お、無能くん喋った」
「無駄にプライドは高いんだな」
くすくすと笑い声が広がる。
悔しい。だが、否定できない自分がいるのが、余計に腹立たしかった。
「レイン」
低い声で名前を呼ばれ、反射的に背筋が伸びる。
パーティーリーダーのガルドが、冷めた目でこちらを見ていた。
「前に出るな。後方で待機してろ」
「……でも、俺も戦える」
「無理だ」
間髪入れずに切り捨てられる。
「まだやってもいないのに――」
「やっただろ。何回も」
ガルドはため息をついた。
「そのたびに、何も起きなかった。違うか?」
言葉が詰まる。
確かにそうだ。何度魔法を試しても、発動したことは一度もない。
けれど――
「……今回は、いけるかもしれない」
絞り出すように言うと、周囲から失笑が漏れた。
「“かもしれない”で戦場に出る気か?」
「命いくつあっても足りねえな」
ガルドはしばらく俺を見つめ、それから小さく息を吐いた。
「……一回だけだ」
「え?」
「やってみろ。ダメならもう二度と前には出すな」
その言葉に、胸が高鳴る。
チャンスだ。
「わかった……!」
俺は前に出て、魔物へと向き直った。
深く息を吸い、魔力を意識する。
(いける……いけるはずだ)
何度も繰り返したイメージをなぞる。
力を、外へ。
「――っ!」
だが――
何も、起きない。
風すら動かない、完全な静寂。
「……は?」
仲間の一人が呆れた声を漏らす。
「おい、何も出てねえぞ」
「マジでゼロじゃん」
背後で笑いが弾ける。
「違う……今、何か……」
確かに、何かが引っかかった気がしたのに。
「もういい」
ガルドの声が、冷たく響く。
「下がれ」
「待ってくれ、もう一回――」
「レイン」
その一言で、体が硬直した。
「お前は“無能”だ」
断言だった。
疑いも、迷いもない声音。
胸の奥が、鈍く痛む。
「……っ」
「これ以上、仲間の足を引っ張るな」
何も言い返せなかった。
言い返す資格すら、ない気がして。
⸻
その日の夜。
俺はギルドの中で、最後の宣告を受けた。
「決まったぞ、レイン」
ガルドが腕を組んだまま言う。
「お前、今日でクビだ」
「……は?」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「パーティーから正式に外すってことだ」
横から仲間が補足する。
「待てよ……俺、まだ何も――」
「何もできてねえだろ」
かぶせるように言われ、言葉が止まる。
「現実見ろよ」
冷たい視線が突き刺さる。
「ここは遊びじゃねえ。命懸けなんだ」
「……」
「無能を連れてる余裕はない」
静かな断罪だった。
「装備は置いていけ」
ガルドが続ける。
「それ、パーティーの金で買ったもんだ」
「……それでも、俺が使ってきた」
「だから?」
言葉に詰まる。
何を言っても、覆らない。
それがわかってしまったから。
「……わかった」
俺は剣を置いた。
外套を外し、机の上に置く。
「じゃあな、“元勇者”」
誰かが笑った。
俺は何も言わず、その場を後にした。
⸻
外に出ると、冷たい風が頬を撫でた。
「……帰りたいな」
ぽつりと、言葉がこぼれる。
日本に。
普通の生活に。
こんな場所じゃなくて。
その時だった。
――ピキッ
空間に、ひびが入る。
「……え?」
目の前の空気が裂け、黒い亀裂が現れた。
吸い込まれるように、体が引き寄せられる。
「ちょ、待っ――」
抵抗する間もなく、視界が暗転した。
⸻
次に目を開けた時。
「……ここは」
見慣れた天井があった。
白い壁、机、スマホ。
「……俺の部屋、か?」
日本だ。
戻ってきた。
安堵が胸に広がる。
だが――
ドクン、と心臓が強く鳴った。
「……なんだ、これ」
手を見る。
その瞬間――
バチッ!
青白い光が、指先から弾けた。
「……は?」
思考が止まる。
今のは、明らかに“魔法”だった。
試しに意識を集中させる。
すると、掌に炎が灯る。
「……使えるのかよ、俺」
異世界では一度も発動しなかった力が。
この世界では、当たり前のように。
その時、頭の奥に声が響いた。
――制限解除。全能力解放。
「……は?」
次の瞬間、世界が揺れた。
⸻
外に飛び出す。
空を見上げて、息を呑んだ。
「……空が、割れてる」
巨大な裂け目が、そこにあった。
異世界で見たものと、同じ。
そして――
その奥で、何かが蠢いている。
「……マジかよ」
嫌な予感がする。
いや、もう確信だ。
あれは、こちらに来る。
俺は自分の手を見つめた。
炎も、雷も、使える。
あの時とは違う。
「……なるほどな」
小さく笑う。
「今度は俺が、守る側か」
空の裂け目が、さらに広がる。
――戦いが、始まる。




