夢の中の声
気づいたとき、私は知らない場所に立っていた。
白い世界。
どこまでも続く光。
「ここ……どこ?」
声が静かに響く。
でも誰もいない。
足元を見ると、水のような光が揺れていた。
まるで空も地面も、同じものでできているみたいだった。
そのとき。
遠くに「何か」が見えた。
巨大な影。
私はゆっくり近づいていく。
なぜか怖くなかった。
むしろ
懐かしい感じがした。
「……誰?」
思わず声に出す。
すると。
頭の中に、やさしい声が響いた。
「あなたは……」
「来てくれたのね」
驚いて振り返る。
でも誰もいない。
声は確かに聞こえている。
「どこにいるの?」
私は叫んだ。
その瞬間。
世界が少し揺れる。
光が集まり始める。
そして。
目の前に現れた。
巨大な存在。
人の形をしている。
でも大きすぎる。
星よりも、ずっと。
私は息をのんだ。
「……あなたは」
声が震える。
その存在はやさしく光っていた。
「私は」
「この世界」
「そのもの」
意味がわからなかった。
でも。
なぜか涙が出そうになる。
胸が苦しい。
「どうして……」
「こんなに……」
そのとき。
黒い影が一瞬、世界の奥に見えた。
光を侵食するような何か。
私は思わず手を伸ばす。
「危ない!」
すると。
光が一気に広がった。
その存在が私を見る。
「まだ」
「その時ではない」
声はやさしい。
でもどこか悲しい。
「あなたは」
「いずれ思い出す」
「私の力を」
私は首を振る。
「わからないよ……」
そのとき。
光が私の体に触れた。
あたたかい。
やさしい。
心の奥に何かが流れ込んでくる。
知らないはずの記憶。
星。
宇宙。
命。
全部がつながっている感覚。
「私は……」
何かを言いかけたとき。
世界が崩れ始めた。
「待って!」
私は叫ぶ。
でも光は離れていく。
最後に声が聞こえた。
「大丈夫」
「あなたは一人じゃない」
「その時が来たら」
「私は、あなたの中にいる」
目が覚めた。
ベッドの上。
いつもの部屋。
朝の光。
「夢……?」
でも。
胸がまだあたたかい。
手を見る。
わずかに光が残っていた気がした。
その日からだった。
私はときどき夢を見るようになった。
白い世界。
やさしい声。
そして
黒い影。
まだ意味はわからない。
でも一つだけ確かなことがある。
あの声は。
あの光は。
きっと。
私を呼んでいる。
外伝 終わり




