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三題噺もどき4

今日のハイライト

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくさんじゅうきゅう。

 




 窓を叩く雨音が聞こえてきた。

 少し前までは雷の落ちそうな音がしていたから、そんな気はしていたが。

 まぁ、でも今日の散歩はすでに行ってしまったし今から降っても何も支障はない。

 その散歩中も今にも雨が降り出しそうだったので、早々に切り上げてしまったが。

「……」

 それでも一応公園には行ったのだ。

 相変わらずあの犬がいて、今日はどこから持ってきたのか、汚れた黄色いテニスボールを持ってきていた。硬球というのかは分からないが、硬式テニスに使うようなやつだ。

 持ってきたと言うよりは、過去にそのボールで遊んでもらったから持っていたのだろうけど……アイツの飼い主はいろんな球技をしていたらしい。

「……」

 その犬と適当に遊びながら、ブランコに座って話をしたりもした。

 時間が限られていたとはいえ、いつも通りのゆっくりとした時間ではあった。

 帰りは多少駄々をこねられたが、雨が降りそうだと言えば納得はしてくれる。それに周りにはあのブランコよりも大人びた遊具たちがいるから説得もしてくれる。

「……」

 どうせあの公園にはそれなりの頻度で行くのだ。

 そこまで惜しむような別れでもない。あの子にしたらそれでも駄々をこねるには十分な理由なのかもしれないが。……子供というのは分からない。

「……」

 あまり頻繁にはいけない墓場の方にも、一応子供はいるのだけれど。

 あの子の方がまだ大人びている……生前の環境のせいだろうけど。

 そろそろ顔をのぞかせたいところだ。あの子も好きに動けるようになったらしいから……そうだとしても墓場からはあまり離れはしないだろうが。

「……、」

 ガリ―と、口内で何かが割れる音が聞こえる。

 もう小さな欠片しかなかったから忘れていたが、飴玉を口に入れていたのを思い出した。

 甘い桃の香りが申し訳程度に漂ってくる。

「……」

 やはり飴玉は果物系に限るな。

 ノド飴みたいなハッカ?が入っているようなものはそもそも好きではないし、キャラメルみたいな甘すぎるのも集中には向いていない。あれはどうにも口の中に残る甘さが気になってしまう事がある。集中するために飴玉を舐めているのに、途切れさせる原因になっては意味がないだろう。

 塩が入っているようなのはそもそも好きではない……甘いのにしょっぱい意味が分からない。すっぱいにしょっぱいとか……どうして食べようと思うのか。熱中症対策にはいいのだろうけど、それとは生憎縁がないので食べる必要もないな。

「……」

 そういえば買い物に行ったときに、たまたま見たのだが、チョコレートの味の飴とか、プリン味の飴とか、飴玉ひとつとっても色々と種類があるのだな。

 大抵果物系しか買わないから手に取ることもないし、見ることもなかったのだ。買う物はいつも決まっているからな。

 ああいうのもたまには食べてみたいと思うが……想像とギャップがあると嫌なので買わないかもしれない。

「……」

 外から聞こえる雨音が酷くなってきた。

 ついでに頭痛がし始めて、集中は切れている。

 思考が仕事以外のことに行っている時点で集中はしていないのだけど。

「ご主人」

「……」

 いきなり声がかかったと思えば、いつの間にか開かれた部屋の戸に小柄な青年が立っていた。

 時計に目をやると、いつもの休憩の時間だった。

 散歩からの帰りが早くていつもより長時間仕事をしていたせいか、すっかり忘れていた。

「休憩にしましょう」

 廊下からの光のせいで逆光のようになっている。

 手元には珍しく洗濯物を抱えていた。追加で洗濯を回したのだろうか。

 よく見ればパジャマだった。わざわざ回したのか。

「ん……」

 返事とも取れないような返事を受けながら、持っていた洗濯を片付けていく。

 私は私で、猫背を伸ばしながら、机の上を軽く片付けていく。

 ある程度整理して、見れるようになってから立ち上がる。

「これは持って行きますよ」

「あぁ、ありがとう」

 机の上に置かれていたマグカップを取り、先にリビングへと戻っていく。

 さて、今日の休憩のお供は何だろうな。





「ん、うまいなこれ」

「それはよかったです」

「コーヒーによく合う」

「ココアでも美味しいですよ」










 お題:飴玉・硬球・洗濯


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