第36話【救出】
宿で一晩眠り、体力も魔力も回復させた5人はルヴァク、ルスヴィズに乗り封印されている俺の元へと急いだ。
ムーンは気絶から目覚めたが、前ほどの力が無いのでみんなのサポート役として着いてきた。
「師匠がこんな……」
「先生! せんせーい!!」
「マシオ聞こえるか? 今助けるぞ!」
「触れてはダメです! 魔力を吸われます!」
事前に確認していたムーンは結界に触れようとするリアンを止め、全員に離れるように促した。
「これからどうするんですか?」
「魔族もずっと放ってはおかないはずです。 いずれは様子を見に来るはずです」
「いつくるかもわからない魔族をここで待つの?」
「そうではありません。 直ぐに来るようにすればいいのです」
「どうやって?」
ディーンは首を傾げて考えるが何もわからない。
「この作戦にはリアンさんが重要です」
「私ですか!?」
「はい、リアンさん新しいスキルを身につけましたよね?」
「は、はい。 今回調べていくつか……」
「そのスキルの中のひとつ、【魔力吸収】を使います」
「魔力吸収ですか?」
「あの結界があそこまで大きくなったのはマシオさんの高い魔力を吸収しているからでしょう……結界が魔力を吸収して大きくなっているんです。 それなら……」
「そうか! それなら魔力を吸い取っちゃえば!」
「そうです……ただこれにはリアンさんの体にかなり負担がかかるはずです」
「そうなんですか?」
ムーンはリアンを見ながらもかなり不安が拭いきれない。
「……リアンさんが吸収する魔力は結界が吸収したマシオさんの魔力なんです。 つまり……」
「そっか……私が先生の魔力を吸収し切れるかどうか……」
「そうです……吸収し切れないと失敗になりますし、リアンさんがどうなるかわかりません。 最悪過剰の魔力に寄って倒れてしまうかも知れません」
「そんなのダメだ! リアンにそんな危険な事させられないよ!」
「……やる! 私やるわ! 先生を助けるためならそのくらい平気よ!」
「リアン……」
「大丈夫よ兄さん。 私だって先生の弟子なんだから……今まで修行してきたのは無駄じゃなかったって先生に教えてあげるんだから!」
「わかった……僕も手伝う」
リアンは結界に手を添えると、新たに身につけた【魔力吸収】を始めた。
「先生……今助けます!」
リアンの周りにふわっとした光りが輝き、魔力吸収が始まった。
リアンの魔力吸収で水晶の様になった結界が一つ、また一つと消えていく。
「やった! いいぞリアン! その調子だ!」
「ライラさんとルナは魔族がいつ来てもいいように周りに注意を払ってください!」
「はい!」
「もちろん!」
リアンの魔力吸収で俺の周りにあった無数の結界の結晶は少しづつだが消え始めていくが……。
「くっう……」
魔力を吸収していたリアンが苦しみ始めた。
「リアンさん! そこまでです!」
「……まだ……まだいけます!」
「ダメです! このままではリアンさんが!」
ムーンがリアンを結界から引き離そうと手を出すが、バチッと弾かれてしまう。
「!!! 今の私じゃ……、……ルナ! リアンさんを引き離して!」
「わかった!」
「ダメです! ……せめて……魔族が来るまでは……」
「そんな事を言ってる場合ではありません!」
リアンに近づくルナの前にディーンが立ち塞がる。
「待って! もう少しだけリアンを信じてあげてよ!」
「しかし……」
リアンはすでに膝をついてしまっている。
だが結晶はだいぶ少なくなってきていた。
それでも俺の周りの小さな結晶を消すのが限界のようだ。
「おやおや、私の結界が消えているかと思えばやはりあなた達でしたか」
結界の上に浮かんで魔族ヘナスが現れた。
「現れたわ! あの魔族がマシオさんを閉じ込めた張本人よ!」
「魔力を吸収して結界を消すとは……、……その吸収もどうやらそろそろ限界のようですし、放っておいても良さそうですが……この勇者、これだけ魔力を吸収されているのにまだ死なないとは……復活されては面倒ですからね、このゴミどもも倒しておきましょうか……っと!」
ヘナスが結晶の中の俺を見ている時、ライラの矢がヘナスを襲うが直ぐに転移して矢を躱す。
「エルフの矢か……面倒ですね……」
ヘナスはライラの背後に転移して結界で封印しようとするが……その一瞬、ルナが飛び込んでヘナスを殴り飛ばした。
「ぐはっ! ……まさか私の顔に当てるなど……」
「どうニャ! これがママから受け継いだ私の力ニャ!」
ルナはすでに獣化して体からはバチバチと電気が走っている。
「なるほど……聖獣の力か……面白い」
ルナとヘナスの戦いが始まった。
ヘナスが転移した先にルナは稲妻の如く追いかけ、ヘナスは防戦一方だ。
「ホルド!」
「ニャっと!」
ヘナスが放つ結界魔法をルナは体を捻り余裕で躱すとヘナスを追い詰めていく。
「ちっ! 厄介な聖獣だ!」
ヘナスはルナの攻撃を両手で防御するが吹き飛ばされて地面を転がった。
「ニャ、にゃんだこれー! 手が動かないニャー!」
「まったく聖獣とは厄介な存在ですよ……しかしこれでもう動けないでしょう」
ルナの手がヘナスの結界で固定されしまい暴れても外せないでいる。
「ルナ!」
「ルナさん!」
「そこで大人しくしていてください。 さて、聖獣がいなくなれば他のザコは楽そうですね……っと……本当に厄介なエルフですよ……」
ライラは矢を飛ばし空中に転移したヘナスを狙う。
ムーンは倒れたリアンを介抱しているので、戦えるのはディーンとライラのみ……。
「こうなったら僕の新しい技で!」
「ディーンさん待ってください……ディーンさんの技は最後に、まずは私の技で!」
ライラはヘナスに弓を構え、弦を引き絞り矢を放つ。
「ファントム・アロー!」
ライラの放った一本の矢は数十本に分離しヘナスを襲う。
「数は多いが所詮は1方向への攻撃だ」
ヘナスは転移し易々とライラの矢を躱すが……。
「ぐぅ! な、何故わかった……」
転移したヘナスが現れる場所にライラは矢を放ちヘナスの肩を矢で射抜いていた。
すかさずファントム・アローで攻撃し、転移した先に矢を放つ。
「くっ! ……なるほど、まぐれでは無いと言う事か……だが私がここから消えてしまえば勇者は助けられ無いだろう! 私の勝ちだ!」
「に、逃げるのか! 師匠を出せーー!!」
ヘナスは転移で消えてしまった。
「くそっ! これじゃ師匠を助けられ無い……」
「私が仕留めし切れなかったから……」
「ニャアアアア! ニャっせーい!!」
ルナの一撃で結晶の一部が砕ける。
「ルナ! どうやって……?」
「そんなの簡単だニャ。 片腕しか封じられて無いんだから、もう片方の手で結界を壊せばいいだけニャ」
「簡単って……」
「あとはこの結界を再生する前に破壊しちゃえばいいニャ?」
「そうだけど……」
「それならいっくニャー! ニャニャニャニャニャニャニャーー!!」
ルナはガンガン結界を削っていくが、俺がいる中心に近くなるにつれて再生が早く削り取る事が出来ない。
「これ以上無理ニャ!」
「……よ〜し、こうなったら僕が! 全身に魔力の膜を作って……いくぞ! フェニックス・ダーイブ!!」
ディーンの全身が赤々と燃え上がり、背中には炎の翼が現れると空へと飛び上がり、体ごと急降下して結界に直撃した。
結界が砕ける音ともうもうと土煙を上げたそこには、ディーンを抱えた俺の姿があった。
読んで頂きありがとうございます。
頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




