第3話 【弟子】
助けた2人の子供を弟子にする事になった……。
2人の事を改めて聞くと、兄の方は【ディーン】10歳、妹の方は【リアン】8歳と2人の名前と歳がわかった。
「師匠の名前はなんて言うんですか?」
早速ディーンは師匠と呼び始めたな。
「俺は【霜塚 真柴雄】年は一応18歳ってなってる」
「マシオ師匠!」
「マシオ先生!」
「その師匠や先生はつけなくていいぞ。 マシオって呼んでくれてかまわない」
「わかりましたマシオ師匠!」
「はい! マシオ先生!」
うん、わかって無い……。 ま、呼び方はいいか……。
「俺はこれから君達の師匠や先生になるわけだが守ってもらう約束がある。 今から言う約束を守らなければ破門にするからな」
「約束ってなんですか?」
「1つ、俺の事は詮索しないこと。 2つ、俺の言う事をちゃんと聞くこと。 3つ、師匠や先生として教えて行くのは5年間だけ、5年経ったら俺の元から去ること……いいな」
「5年間……」
「そうだ。 2人が強くなってもなれなくても、5年で契約は無しだ。 それでいいなら鍛えてやるよ」
「それでいいです!」
「私も頑張ります!」
これから2人を弟子として鍛えていかないといけないのか……俺も頑張らんとな……。
「師匠、詮索はしませんが少し聞いてもいいですか?」
「答えられる事ならな」
「マシオ師匠はどこ出身なんですか? 名が分かれているなんて珍しいです」
「俺の出身か……ずっと遠い場所さ。 名が分かれていて珍しいなら、呼び方はマシオだけでいい」
「わかりました」
ディーンもリアンも名前はそれだけだから確かに珍しいのかも知れない。
「マシオ先生! 私も聞きたいです!」
「いいぞ」
「マシオ先生は私をゴブリンから助けてくださった時、どうやって来たんですか?」
「ふむ、渡した石にはサーチで居場所がわかる魔法をかけていてな、破裂した時にサーチから一瞬反応が消える。 消えた場所まで転移すればそこにいるってわけだ」
「探索魔法に……転移……魔法……世界でも使える人は限られているスキル……」
「さすが師匠!」
「……居場所がわかるって事は、兄さんの居場所も直ぐにわかってましたよね? 探索魔法は範囲内の魔力に反応して居場所を特定する……、つまりゴブリンの事もわかっていた……、あの時先生は何かに気がついていたし、助けに行くなら転移魔法で行けたはず……」
「おっと、詮索はそこまでだ。 2人とも合格したんだから深く考えないように」
危ない危ない……リアンには俺がわざと転移しなかった事がバレる……鋭いな。
「どう言うことだよリアン?」
「先生は兄さんがゴブリンを倒していた事に気がついていた……そして私のための2匹目を倒す時間をくれた……」
「リアンのため? よくわからないけど?」
「ううん……いいの」
リアンは俺の方を見てにこにことしている。
説明しなくていいんだぞリアン。 恥ずかしくなるから……。
「さて、俺の弟子になったからにはまずそのボサボサの髪をどうにかしないとな」
「川で洗ってきます」
リアンが出て行こうとするのを慌てて止めた。
「まてまて、俺に着いて来てくれ」
2人とも不思議に思いながら宿の1階にある受付まで連れて行く。
「おばちゃん、連れて来たから頼むよ」
「あいよ! あら? 可愛い子達だね。 2人は兄妹?」
「ああ、だから一緒に頼む」
「あいよわかった。 それじゃ2人ともこっちおいで」
「「???」」」
「いいから着いていきな」
2人をおばちゃんに預け部屋でしばらく待つ。
「僕はいいよ! 自分でやるよー!!」
下の階からディーンの声が聞こえてくる。
やってるな。
俺は弟子にする前から2人を風呂に入れて欲しいと宿のおばちゃんに頼んでおいた。
弟子にならなくても、風呂くらいは入れてやろうと思ってたからな。
下が静かになると扉が叩かれる。
「入りな」
「し、失礼します……」
「あ、あのマシオ先生……」
「お、2人ともさっぱりしたじゃないか」
「は、はい、ありがとうございます」
「マシオ先生、この服……」
「服? ああ、おばちゃんに頼んでだいたいこのくらいの身長と体格の子供用の服を用意してもらっておいたからな。 う〜ん、似合うが少しブカブカか? もしかしてデザイン気に入らなかったかな?」
2人はボサボサの髪も切ってもらい、将来有望な顔立ちがはっきり見えた。
ディーンは短髪のツンツンした髪の毛、リアンはサラサラのショートになった。 2人とも兄妹なのでディーンは赤い髪、リアンはピンクの髪で、ボサボサしていた時の薄汚れた髪とは見違えていた。 でも子供用の服なんてよくわからないし、旅が出来る服でと割と無茶な注文をしていたからな……。
「い、いえ! とっても気に入りました!」
「でもこの服高いんじゃ……?」
「そんな事なら気にするな。 気に入ったならよかったよ。 そうだ、俺はおばちゃんに話があるから部屋で待っててくれ」
俺はおばちゃんに夕食の相談に行った。
俺1人なら手持ちの食材でどうとでもなるが、2人はまだ子供で育ち盛りだ。 ガリガリの2人の栄養面が気になっての相談だ……。
なんだか子持ちになった気分だな……。
「そう言うことなら任せておきな。 腕によりをかけてやるよ」
さすが宿のおばちゃん頼りになる。
夕食は任せても大丈夫そうだ。
「それじゃお願いします。 これを……」
「あら? いいのかい?」
「とびっきり美味い物を頼みますよ」
渡して夕食を豪華にしてもらおうとおばちゃんにチップを渡しておいた。
「あ、先生……」
「師匠おかえりなさい」
「……2人とも服はどうした?」
俺がおばちゃんと話している間に2人は前のボロ服に着替えていた。
「せっかく先生からいただいたのに汚したくなくて……」
「初めてもらったから大事にしたいよな」
「ふむ、2人とも着替えなさい。 そしてそのボロ服は俺が預かる」
「えー! でも!?」
「師匠命令だ」
「……わかりました……」
俺は着替えが終わるまで部屋の外で待つ。
2人とも物を大事にする事はいいけど、さすがにな……。
着替えが終わり部屋の中で2人には試験について話そうとしていた時に食事が運ばれて来た。
「おまたせ、腕によりをかけたから味わって食べとくれよ」
「美味そうです。 ありがとうございます」
「器は廊下にでも出しといてくれ」
「はい」
おばちゃんが持って来てくれたのは、野菜がたっぷり入ったスープ、香草で焼いた肉、そんなに固くないパン、サラダと3人分だ。
2人は喉をゴクリと鳴らして見つめている。
「美味しそうじゃないか。 それじゃいただこうか」
椅子に座るが2人は立ったままだ。
「どうした?」
「い、いえ……僕達も食べてもいいんですか?」
「もちろんだ。 そのために作ってもらったんだからな、早く座りなさい」
「は、はい……」
2人は恐る恐る席に着き、ディーンは我慢出来ずに手を伸ばす。
「兄さん!」
リアンに止められている。
「ダメよ兄さん! まだ先生が食べてないでしょ!」
「そ、そうか……師匠ごめんなさい」
「いや、気にするな。 それよりせっかくの食事が冷めてしまうぞ。 早く食べよう……いただきます」
「い、いただ……き?」
「マシオ先生どう言う意味ですか? 何かのお祈りですか?」
そうか、この世界にはない文化だったな。
せっかくだし教えてやるか。
「いただきますは俺の国の文化さ。 食材に、それを取ってくれた人に、そして調理してくれた人に、この食事にかかわっている全てに感謝して、食べる事をいただきますって言うのさ」
「へー、いいですね。 私も感謝していただきます!」
「僕もいただきます!」
2人とも素直だ。
食事は美味しかった。 おばちゃんの腕が良くてこの宿は当たりだったな。
「よし、食事も済んだし寝る前に今回試験のおさらいでもしておこうか」
「はい」
「今回のゴブリン退治についての反省点だが、期日までにこなそうと思うのはいい事だが、無鉄砲過ぎだ」
「無鉄砲?」
「そう、ちゃんと計画を立ててゴブリンの事を調べてから挑むべきだ。 戦う時は相手を知っておく事が重要だぞ。 相手がどんな事をしてくるのか、調べていたら石を使わなくて済んだかも知れないしな」
「ゴブリンは弱い魔物だよ。 調べる必要あるんですか?」
ディーン、自分が怪我をしたこと覚えてないのか?
「確かに1匹なら弱い魔物だが、ゴブリンは基本的にグループ行動をする魔物だ。 それに武器もナイフや弓矢を使う。 ナイフに毒を塗っている奴もいるだろう。 今回は良かったが毒塗られてたら死んでたかも知れないぞ」
「確かに……」
「それに、ゴブリンは女性をさらって繁殖に使う事も多い。 リアンを狙ったのもその1つだろう。 石を使っていなければ手足を折られて連れ去られた可能性がある」
「ひっ……」
「危険を出来るだけ回避するなら相手を良く知ること。 わかったか?」
「「はい!!」」
返事がいい。 少しはわかってくれたかな?
「でも師匠ほどの腕があれば何があっても問題無いですよね?」
「実力差がかなりあれば問題無いかも知れないが、相手の実力がわからない以上は知っておく必要がある」
「そうですよね……相手を知るか……わかりました」
リアンはわかってくれたようだ。
「それと、2人は何かスキルを持っていたりするか?」
「スキルですか?」
「冒険者じゃ無い私達のスキルは教会でしか調べられなくて……私達は知りません」
「そうなんだ、冒険者じゃ無い僕達はスキルを調べるためには教会にお金を払わないといけないんだ」
「なるほど……それじゃ明日は教会で2人のスキルを調べよう」
「え!? で、でも……」
「教会に支払うお金は高いって聞いた事があります!」
「ふむ……2人とも、もうひとつ約束を追加だ」
「追加ですか?」
「そうだ。 遠慮する事は美徳だが、俺が2人の面倒を見る事になったのだから遠慮は無用だ。 毎回話をするたびに遠慮されてると面倒くさいからな」
「でも……いいんですか?」
「気になるなら1度だけ遠慮する事を許す。 それでも俺が良いと言ったら遠慮はしないこと」
「わかりました……ありがとうございます」
「それじゃもう寝よう。 俺はちょっと出てくるから2人はもう寝るように」
「は、はい」
2人は部屋のすみの床で眠ろうとする……。
「おいおい、寝るならベッドがあるだろ」
「え、でも……」
「師匠がベッドを使ってください」
「俺はちょっと外に出るから2人が使いな」
「い、いいんですか?」
「さっきも言ったろ? 遠慮はするなって」
「は、はい。 使わせていただきます」
疲れや初めてのベッドでの睡眠。
よほど気持ちよかったのだろう。 俺が部屋を出てしばらくしたら直ぐに眠ってしまったようだ。
寝顔は本当に子供だ。
俺は部屋に結界を張って椅子で眠る事にした。
読んで頂きありがとうございます。
頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。




