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第2話 【兄妹】

 旅の途中で立ち寄った町で、からまれた相手を倒した所を2人の子供に見られ、人身売買の奴らから追われていた兄妹を助ける事になったので、そのアジトで少し暴れるために向かっている。


「ここだな……」


 マントを身に付けフードをかぶり見た目をわからないようにする。

 逃げ帰ったゴロツキが入って行ったのは少し大きな倉庫のような場所。


「ふむ……中に沢山の人がいるな……、どうやら地下にも何人か囚われてる人もいるようだ……」


 倉庫の前には見張りのゴロツキがいる。


「おい、何かようか?」


 倉庫を見ていると1人のゴロツキから声をかけられた。


「そうだな……お前らみたいな奴には用事は無い……が、ある兄妹から頼まれてな」

「なに!?」


 ドーン! と音を立てて扉ごと見張りのゴロツキを吹っ飛ばした。


「なんだ!」

「誰だ!」


 せっせと働いている家の人達は突然の出来事に驚き武器を持って集まってきた。

 

「室内は思ってるより広いな」

「なんだてめえ!」

「こ、こいつ! あのガキどもの所にいた奴じゃねえか!」


 あ、逃げた奴だ。

 その横から代表的な筋骨隆々なおっさんが出て来た。


「何しに来やがった!?」

「そうだな……交渉に来た」

「交渉だと!? ガッハッハ! 1人で来るとはいい度胸じゃねーか! それとも許しをこいにでも来たのか? 身ぐるみ置いていっても許さねえけどな」

「あの兄妹に手を出さないなら、俺も手を出さないって言う交渉だ」

「……ガッハッハ! それの何処が交渉だ!? 頭おかしいんじゃねーか!?」

「しかしお頭、こいつ強えぜ」

「全員でかかりゃ問題無いだろ? 命乞いするなら今のうちだが、許すわけねえけどな」


 ゴロツキどもは言いたい放題。

 こう言う馬鹿の台詞は聞いてて疲れる……。


「それじゃ、交渉決裂だな。 片付けるか……」


 俺は手の平に火炎魔法を出して火を球体に変えてあちこちにポイポイ投げつける。

 あちこちで爆発が起こり、ゴロツキが吹き飛ばされて行く。


「おい! 騒がしいぞ!」

「何があった!?」


 地下からまたゾロゾロと……何かの虫かな?


「なんだこれは……」

「どうなってやがる!」


 あちこちに仲間が倒れ、焼け焦げていたらそりゃ驚くってもんだ。


「てめえがやったのか!?」

「そうだが?」

「こ、こいつもしかしてボザドの兄貴をやったやつじゃ……?」

「ボザドの兄貴? もしかしてハゲの大男か?」

「そうだ! やっぱりあいつが……」

「で? どうするんだ?」


 ボザドの兄貴を倒したと知って用心して攻めてこなくなったな。


「そっちからこないなら俺から行くぞ」


 火球を投げ込んでどんどん吹っ飛ばしていく。


「ま、まてまて! 地下の人質がどうなってもいいのか!?」

「いいんじゃないか? 俺には関係ない」

「な! なんだと!? てめえは人の心がねえのか!」

「……お前らに言われたく無い」


 俺が一歩前に歩けばゴロツキは一歩下がる。

 ちょっと面白いな。

 ズンズン前に進むと地下まで来た。

 確かに牢に何人かいるな……よし。


「な、なんだ?」

「消えた?」

「こっちだこっち」

「い、いつの間に後ろに……」

「これで人質取れなくなったな」


 ゴロツキの背後を取り、地下への階段前に現れる。 ゴロツキは俺を気味悪がって逃げ始めようとする奴らが何人かいるけど、逃すわけないだろ。

 俺は火炎魔法でまとまっていたゴロツキどもを倉庫共々全員焼き消し炭にするとゴロツキどもは阿鼻叫喚で全滅した。


「ついでだしな」


 フードをかぶり直しマスクをして顔がわからないようにしてから、地下牢に囚われていた子共や女性を解放して、俺はさっさと2人の場所に戻った。


「戻ったよ」

「あいつらは!?」

「全員倒したからもう安心だ」

「さっきの爆発はもしかして……、……ありがとうございます! それじゃ約束通り私が……」

「いや、僕が!」

「おいおい、まてまて、俺は奴隷なんていらないぞ」

「そんな……、……それじゃお願いがあります! 僕達兄妹2人を弟子にして下さい!」

「え!? で、弟子?」


 2人はそろってグイグイくる。


「それはやめといた方がいい。 俺は追われてる身だ。 俺に着いて来たら2人もお尋ね者になっちゃうぞ」

「かまいません!」

「私も着いて行きます! 私にも魔法を教えて下さい先生!」

「僕にもお願いします! 師匠!」


 先生に師匠ときたか……、まいったな……どうしたものか……2人とも真剣だ。


「……ふむ……わかった、いいだろう」

「やった!」

「ただし、俺の旅に着いてこれるかの試験をする。 足手纏いはいらないからな」

「試験ですか……、わかりました、頑張ります!」

「試験は簡単だ。 ここから少し歩いた森にゴブリンがいる。 それを1匹倒してくるだけだ」

「ゴブリンを1匹……」


 2人はお互い顔を見合わせている。

 ゴブリンはこの世界の魔物で比較的弱い部類の魔物だ。 身長も130センチくらいしか無いし、力もそれほど強くは無い。 ただし……知能はそれなりにあるし、1匹だけ倒せば良いとは言ったがゴブリンが1匹だけでいる事は珍しく、普通は3匹以上のグループでいる事が普通だ。


「この町には1週間はいるから、期限は3日で頼むぞ」

「3日でゴブリンを1匹退治……ですか……」

「大丈夫だリアン、僕に任せとけって!」


 男の子はやる気のようだが……。


「手ぶらで立ち向かえとは言わない。 短剣を2つ渡しておく。 それと……これだ」


 俺は空間から短剣と小さな丸い石を取り出した。


「この石はなんですか?」

「これは緊急時に俺に知らせる石だ。 ピンチになっら地面に思いっきり叩きつければ俺が駆けつける。 だが、それを使ったらこの試験は不合格になるから考えて使えよ」

「わかりました。 絶対合格してみせます!」

「それじゃ、明日から試験開始だ」


 2人に武器と石を渡して……。


「俺は宿に泊まってるからゴブリンを倒したら宿に来るんだぞ」

「はい! そうだ、まだ僕達の名前言ってませんでした」

「いや、名前はいい。 試験に合格したら聞くよ」

「そ、そうですか?」

「もしゴブリンにやられた場合、名前を知らなければ2人の兄妹がいたな……で済むからな。 名前を知ってしまうとずっと頭に名前が残ってしまうから聞かないことにしておくよ」

「「…………」」


 この人面倒くさいなとか思われてそうだな……まあいいけど。


「それじゃ、頑張れ」


 2人を置いて宿に向かう。

 果たして合格出来るかな?


「よしリアン、町を出て森までどのくらいかかりそうだ?」

「そうね……私達の足だと10時間くらいかな?」

「時間がもったいないから今夜出発しよう」

「うん、わかった」


 2人は時間の節約で夜出発か、ちゃんと森に行けるといいが……。

 なんで2人の行動を知っているか……それは、緊急用に渡した石には位置がわかるようにしてある。

 だから宿にいても2人の行動がわかるのだ。


「やっと森に着いた……」

「途中休憩入れたから思ったより時間かかったね」


 夜通し歩いて森の入口に着いた2人は一息入れて森に入りゴブリンを探し始める。


「リアン、いたぞ……」

「3匹もいるよ……」

「1匹になるまで待つか?」

「うん、3匹は無理だよ」

「そうだな、隠れて様子を見よう」


 2人はゴブリンを草葉の陰から見ていたはずだが、夜通し歩いていたせいなのか、疲れて眠ってしまった……。


「う……ん……、……あ! 兄さん!」

「う〜ん……まだ早いよ〜」

「何言ってるの! ゴブリン達いなくなっちゃったわよ!」

「……は! しまったーー!!」


 目を覚ましたのは月も上る真夜中。

 静かに眠っていたせいで、他の魔物に見つからなかっただけ良かったのかも知れない。 でもゴブリンはまた探さないといけなくなった。


「今日は出てこないだろうし、休んで明日探そう」

「そうね、下手に動かない方がいいかも知れないし……でもお腹空いたね……」

「ああ……でもゴブリンを倒すまでの我慢だ」

「うん」


 2人は交代で眠り、朝もう一度ゴブリンを探し始めた。


「兄さん、ゴブリンいたよ! 昨日のゴブリンかな?」

「3匹いるし、そうかも知れないな……今日は目を離さないようにしなきゃ」

「うん」


 ゴブリンが1匹になるのを待ってはいるが、一向に1匹にならない……。


「このままだと今日も何も出来ない事になるな」

「どうしよう兄さん」

「3匹か……2匹なら僕でもなんとかなるかも知れないんだけどな……もう少し様子を見よう」


 日も傾き始めた時、森で木の実やキノコを取っていたゴブリンが1匹離れて行く。


「チャンスだ! 1匹離れて行くぞ! あいつを倒す! リアンはここで待ってるんだぞ」

「兄さん1人で大丈夫?」

「1匹なら問題無いさ」


 ゴブリンの後を着いて行き、短剣を出して不意をついて攻撃しようと飛びかかった。


「うわああああ!!」

「ギッ!?」


 大声で叫びながら飛びかかるとゴブリンに気が付かれ応戦されてしまう。

 短剣の攻撃はゴブリンに弾かれ、ゴブリンは遠吠えのような叫びを上げた。


「ギギガアーー!!」

「なんだ!?」


 すると草むらがガサガサと動き、ゴブリンが現れた。

 おそらくさっきいた残りの2匹だろう。


「仲間を呼ばれた……」


 3対1はさすがに無理だとさとり逃げようとした時、リアンが心配して来てしまっていた。


「兄さん!!」

「リアン!? なんで来た!? 早く逃げるんだ!!」

「え!?」


 3匹のゴブリンの内、1匹が妹の方へ近寄って行く。

 残りの2匹は兄に向かって行くので、逃げながら戦う事になった。


「はぁはぁ……あっ!」


 走って逃げていたが木の根につまづいてしまった妹のリアン。

 そこにゴブリンが追いついた。


「ギギ……ギ!? ジュルル……」


 ゴブリンはよだれを拭き取るような動作をしながら骨のナイフを持ってリアンに近づいて行く。


「う……あ……」


 ゴブリンはリアンの元まで来ると骨のナイフを振りかぶった。


「兄さん! ごめんなさい!!」


 リアンは俺から貰った石を地面に投げた。

 石からは眩い閃光が走る。


「ギャ!」


 ゴブリンは閃光によって一時的に目眩しをくらい、後退りをしているが、閃光の光が消えるとうっすらと見えるリアンに向かってきた。


「ギャアァァ!」

「え!?」


 突然ゴブリンの叫び声でリアンはゆっくりと目を開くと、ゴブリンは跡形もなく消し炭となっていた。


「大丈夫だったか?」

「だ、大丈夫です……それより先生! 兄さんが大変なんです!」

「どれ……まだ生きてるといいが……、……へぇ〜……」

「あ、あの……」

「いる場所はわかった。 これから向かうから落ちないようにな」

「え? ええ!?」


 リアンをお姫様抱っこして走って兄の元へ向かう。


「ぐっ……はぁはぁ……、くるならこい!」


 左腕からは血を流し、右足には矢が掠めた傷があるが、なんとか立っている状態のようだが、逃げながらもゴブリンを1匹倒したようだ。


「ギ、ギギ……」


 走れなくなった姿を見て距離を取り弓矢を持っていたゴブリンは骨のナイフに持ち替え向かって行く。


「ギギャー!!」

「やああああ!!」


 1匹と1人の攻撃が交差する。


「ぐっ……」

「ギ……」


 ゴブリンの骨のナイフは脇腹をかすり、短剣はゴブリンの胸を貫いていた。


「やっ……た……」


 その場に倒れ意識を失ってしまった……。

 それから数刻……。


「はっ!」

「兄さん! 気がついたの!? よかった……グス……よがったよ〜」

「リアン……ここは……?」


 起き上がったのは宿のベッドの上。

 そして俺は椅子に座って後ろを向いていた。


「リアン! 聞いてくれ! 俺、ゴブリンを倒しー」

「ごめんなさい兄さん! 私……襲われそうになって……怖くて……石を使っちゃったの! ごめんなさい!!」

「ーそ、そうか……、……いやリアンが無事だったならいいんだ……」


 どうやら状況を把握して全部わかったようだ。

 自分も俺に助けられて体の傷も治療してくれたんだと言うことを……。

 兄はベッドから起き上がり2人して俺の前にやってくる。


「助けてくれてありがとうございます。 これもお返しします」


 2人は短剣を返して来た。


「これからどうするつもりなんだ?」

「試験は不合格になりましたから、前の暮らしに戻ります。 でもいい経験になりました……ありがとうございます」


 2人して頭を下げて、部屋から出て行こうとする。


「おいおい、ちょっと待て」

「はい、なんですか?」

「俺は不合格とは言ってないぞ」

「「え??」」


 2人は顔を見合わせてどう言う事かよくわかっていない。


「でも私、石を使っちゃいましたし……」

「そうだな。 本来ならそこで不合格だが……兄貴の方は嘘をつかずにゴブリンをちゃんと倒してきたじゃないか?」

「でも……?」

「石を使った時、既にゴブリンを倒していたかも知れない。 君を助けに行った時にはゴブリンを2匹も倒していたからな。 だから兄貴の方は合格だ」

「い、妹は? リアンはダメなんですか?」


 妹の手を握り心配そうに聞いてくる。

 良い兄貴だな……。


「本来なら石を使ってるから不合格と言いたいが、兄貴が妹の分までゴブリンを倒しているんじゃ文句は無い。 妹も合格だ」


 2人の顔は安心したように明るくなり、その場で飛び上がった。


「やった! やったよ!」

「兄さん! やったね! ありがとう!!」


 2人を見ながら俺もまだまだ甘いのかも知れないなと思っていた。

 読んで頂きありがとうございます。

 頑張って書いていきますので、モチベを上げてあげようと思っていただけるようでしたらブクマや★評価をつけていただけますと作者が喜んで踊りながら遅い執筆も早くなると思いますので、どうぞよろしくお願いします。


 

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