新人アルバイト
ダンジョンコンビニ山田店のアルバイト募集を出して、数か月が経とうとしていた
「いやさー!ほんとはさ俺もここでアルバイトしたいのよ!!でもさ、放課後に毎日トイレに入って何時間も出てこないとさ!なんか放課後うんこ野郎ってあだ名がつきそうでさ!!この前も、友達にポーションだってオロ〇ミン見せたら、高校生にもなって中二病ヤバいって言われてさ!!!好きな子連れてこようにも男子トイレじゃん!!?男友達連れこようにも男子トイレの個室で何時間もナニやってんだってなるじゃん!!!俺もつらいのよーほんと!!」
あれから、常連客となった男の愚痴をききながら、今日も24時間1人で営業しないといけないと思うと辛いものがある
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
「今日のお布施はなにかなー」
こっちも何も買わない、立ち読み常連客の裸体天使だ。しかし、金の輪も足首にまできているけど、そろそろ堕天するんじゃないだろうか
「なんかさー!!女の人の裸って毎回見てるとなれるもんだよねー!!来光で肝心のとこは見えないんだけど!!!」
裸天使が、こっちを怪訝な目で見ている。どうやら、彼が茶色の足が六本生えてカサカサと走り回る虫に見えているらしい
昨日の売上を計算していると、休憩室の奥から母親が呼ぶ声が聞こえた
「まーくん、ちょっとこっちきて〜」
「ブォブォ」
「あっ、あなただめよ〜今から大事な話が、あんっ」
万年発情期の両親が呼びだしてから30分くらい経った頃、休憩室の方へ向かう
「はぁはぁ、あのねぇ〜まーくん従業員が欲しいって言ってたじゃあなぁい?」
休憩室の襖を開けると、汗だくの母親が仮面をつけて、父親を六甲縛りにしていた
「実はねぇ〜今日ねぇ、ママの知り合いの娘さんがぁ面接にくるみたいでぇ」
「聞いていませんが」
「ガウガウ」
「お黙りっ!ブタ野郎!そしたらねぇ〜パパの知り合いの息子さんも面接にくるみたいでぇ」
「聞いてませんが」
赤い蝋燭を垂らしながら、2人分の履歴書を手渡してくる両親の隣でモクモクと夕食を食べる弟の姿が見える
そりゃ成長も早くなるよな
「じゃあ、面接おねがいねぇ」
16時44分になり、面接予定時刻と同時に自動ドアの扉が開く
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
「すんません。面接うけにきたんすけどー」
がりがりの身体に頭に2本小さな角を生やした男が、入ってきた。鼻に通してるのは、ピアスだろう。
屍食鬼のグールだ
「自分、バイト初めてなんすけどー」
「採用で」
正直、はたらいてくれさえすれば誰でもいい。即、採用。即仕事
テッテレー♪ガー
「ちーす!あーしバイト面接みたいなー!」
今度は、母親の知り合いの娘が面接に来たみたいだ。青白い顔に、バサバサのまつ毛と金髪のおかっぱ頭をしている。
アンテッドだ
つーかオーガと聖女の知り合いって屍食鬼と死体って。相性最悪じゃないか
「じゃあ、お二方とも今日からバイトに入ってもらいます」
「ういーす」
「了ーかい」
見た目に反して、指示通り二人はまじめに商品棚に商品を並べていく。アンテッドは長いつけ爪を気にしながら、グールは落ちてくる目玉を気にしながらだが
「シフトは交代制で、差し支えなければ連絡網としてお二人の連絡先を登録しておきたいのですが」
「いっすよー」
「うーい、つーかお姉さん美人っすねー、めっちゃいい匂いするっす」
「やーだーうけるー!きんもーい」
「つーか、てんちょーのこと山田さんって読んだらいいっすか?」
「店長でも山田でもありません」
ある程度、仕事内容を覚えてもらい、週の2日、深夜のみ二人同時に入ってもらった。2か月ほどたったころ、二人の様子に変化がみられた
「アン!それとって」
「届かなーいグーとってぇー」
「ったくしょーがねーなー」
店内恋愛禁止にしとくべきだったか
休憩の合間をみてイチャコラと、そんなにくっつきあったら身体が千切れるんじゃないか
給料日のみ、昼勤務にしてもらっているのだか、3か月たったところで、明細を渡された二人が相談あると言ってきた
「てんちょー」
「店長じゃないです」
「あーし、実はグーと付き合ってんすけどぉ」
「知っています」
どうも、勤務中にもいちゃこらと抱き合ったり、つつきあったりしている時点でお二方が付き合っているのはわかっていたけど
「この前ーグーと外で会おーってなってぇー、あーし爪ながくて字が書けないからぁ、てんちょーの机にあったグーの住所やぶったんだけどぉ。地図見たら、うちらー住んでるとこ遠いってわかったしぃーお互いの家の真ん中でおちあおうってなったん」
「それ個人情報なのでやめてくださいね。あと店長じゃないです」
「そんでーあーし、別に手が早いおとこってー気にしないからぁー勝負下着もつけてってー」
「ちょ!アン!初耳だし」
「でもー会えなくてー!そしたら、なんかーすっごい顔したやつが襲ってきてぇー、まじやばかったんだけどー!」
「俺も、下向いて字書こうとすると目が飛び出そうになるから、山田さんの机に置いてあるアンの履歴書から、電話番号破って待ち合わせ場所にいったんすけど電話もつながらねーし、会えなかったんすよ!!」
「それも個人情報だからやめてください。あと山田じゃないです」
「必死こいて探したんすけど、いなくって!
で、アンが悪いやつに襲われてるんの知って、自分ゆるせんくって!せっかく途中で旨そうなの見つけて、アンにお土産でもっていけそだったんすけど、逃げられて!アンには、あえねーし散々で」
「はぁ」
「ここって、ドア出たら元の場所にもどるしー。外で会えないのつらたんだしー」
「俺もアンが危ない目にあうの心配だし、同棲しよって話になったんす!んで、決めた家ここから結構遠いみたいなんす!」
「はぁ」
「「バイト辞めます」」
はたして、外で出会えるのかすら不明だが、会えたら会えたでアンデッドはグールに本当の意味で食われるでしょうけど、あ、旨そうなってそういうことですか。
まぁ、お二人の幸せを祈ることにしましょう
ダンジョンコンビニ山田店には新しいアルバイト募集の貼り紙が再び貼られていた