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勇者とドラゴン

ここはダンジョンコンビニ

よい子が寝た夜も、ひっそりと煌煌と光りを放ち続ける24時間営業のブラックコンビニ

店員は黒髪に褐色の肌をした丸い眼鏡をかけた男ただ1人


ピッピッカシャン


「合計で2450ペソになります」


今日も店員はその凝り固まった表情筋を崩すことなく、レジの中央に立ち、次から次に来る客を相手に淡々と接客を済ませていく


陳列された商品は、まるで美術館に飾られた展示物のように綺麗に整理整頓され、顧客が取りやすい位置と目線の先に配置されており、監視カメラなどなくてもレジの中央からすべてが見渡せるように計算しつくされている


男から見て左側には顧客が出入する自動ドア、右側には商品の卸売業者が出入する裏口となっている


テッテレー♪ガー 

「いらっしゃいませー」


毎回、通るたびにレベルアップもしていそうな音楽が店内に鳴り響き、ともに自動ドアが開く音が聞こえる


ダダダダダダダッバンッ


自動ドアが開くと同時に、その成人男性はコンビニの中に駆け込みレジの机に汗だくの両手をついた


「すまんが!16番の回復薬を売ってくれ!!」


その男は、金色の頭髪と、額にはサファイアの装飾が施されたサークレットをつけ、程よい筋肉質の身体に銀色の甲冑を纏い、右腰には始まりの村で引っこ抜いたであろう聖剣をさしている


人は彼を勇者と呼ぶ



テッテレー♪ガー

「いらっしゃいませー」


店員が、レジの後ろにある棚から番号順に並べられた回復薬の入っている瓶を取ろうとしていると、また自動ドアの開く音がした


ドカッドカッドカ


重厚のある足音で、ゆっくりとレジに向かってくるお客様は、大きな長いしっぽを左右に振り、複数の角を体中に生やし、横長の眼光がきらりと光っていた


冒険者たちは、その者をドラゴンと呼ぶ


「すまないが、4番の回復薬を売ってくれないか?」


数千点もある商品の中から、回復薬だけを一目散に求めてくるお客は、このダンジョンコンビニでは珍しくない


0番から99番まである回復薬の銘柄は、各種族により体格や年齢によって効能・効果のレベルが違うが、ここのコンビニの商品は、形も大きさも全て同じだというのに、どの種族にとっても効能が変わらないと人気商品の1つだ


今回は16番のMP回復と4番の擦り傷に特化したものをお買い求めのようだ

ちなみに初心者冒険者は毒でも腹下しでもオールマイティに使用できる7番から使用するのがおすすめだ



「むっ?君も回復薬が必要なのか?お互い手ごわい相手と出くわしたようだな!」


勇者が、脇腹を擦っているドラゴンに目を向け話しかける


「うむ。強敵というほどではないのだが、なかなかにしぶとい奴でな。古傷ばかりを狙ってくる卑怯なやつだった」


「そうか!それはとんだ目にあったな!うちは、後衛のやつがやられてしまってな!回復役を狙うとは、なかなか頭の切れる卑怯なやつだった!」



ドガンッ


それは卑怯なやつだと共感するとでも言いたそうに、ドラゴンは強靭なしっぽを一振りして床を叩く

コンビニ全体が少しだけ揺れた


「しかし、おっさん、いいガタイをしてるな!まるで鋼のように硬そうな胸筋じゃないか!それにその傷は、そうとう修羅場をくぐってきているな!」


「うむ、次から次へと何の因果かわからぬが、ネズミどもがわらわらと押し寄せてくるものでな。日々、鍛錬だ」


古傷どころか、身体の隅々にまで生新しい傷が残る姿はとても痛た痛たしいのだが、それを誇りだと言いたげに口角を上げるドラゴンの背中を勇者はポンポンと叩いた


ピッ

「1200ペソになります。袋はどうされますか?」


「おっ!すまないねコンビニ兄ちゃん、このままでいいよ!ここの回復薬が一番効くんだよな!少し割高だけどよ」

ドラゴンもしっぽを一振りする


ここがいくら頑丈なコンビニだとしても、そう何回もしっぽを床に叩きつけて揺らされると、頭が小刻みに揺れて酔うからやめてほしい


店員は、少しだけずれた眼鏡を直すと、勇者から1200ペソの代金を受け取った


「じゃあ!強そうなおっさん、また外で出くわした時はよろしくな!」

「うむ、互いに共闘しようぞ」


テッテレー♪ガー


ピッ

「400ペソになります」

「pesopesoで」

カードを出すドラゴンを背に、勇者が先に自動ドアを出ていく


「あの雄はよくこのコンビニに来るのか?」

「常連様ですね」

「そうか。あの強靭な鱗に、額に光るブルーアイ。よほどの強者と見受けした。いつか彼の者の巣へと遊びに行きたいものだ」


2ポイントついたレシートを受けとるとドラゴンは、満足そうにゆっくりと自動ドアから出て行った


テッテレー♪ガー


「ありがとうございましたー」


ガー・・シュンッ


「聖回復師!待たせたな!コンビニで回復薬を買ってきたぞ!」


コンビニのドアを出るとすぐに元のダンジョン階層へ転送される

各階層にコンビニ転送の魔法陣が設置されており、勇者は両手をぶんぶん振りながら、魔法陣からゆっくりとパーティーの元へと歩いてきた


「いやー!遅くなってすまんすまん!」

「・・・・あんたね・・・もう少しで天に召されるとこ・・・だったわよ」

「はっはー!コンビニで強そうな冒険者と会ってな!あの強靭な体!地鳴りを鳴らすほどの強固なサバトンを履いた大男!次にあった時はパーティーに勧誘したいもんだ!」


第98階層では、勇者の笑い声が鳴り響いていた


ここはダンジョンコンビニ。勇者からモンスターまで様々な種族の顧客を相手に、何千点もの商品を売るお店


今は一人で店を切り盛りしている店員の男は、眼鏡越しで、勇者とドラゴンが会話をしている姿を見ていたが、この店員の幻覚魔法により客同士は、自動ドアをくぐれば互いが理想とする種族に見えてしまう異空間コンビニとなっている


ちなみに、夫婦間や兄弟など、血筋のつながりが濃ゆい場合、色々とめんどくさいので魔法は解除されるご都合主義の魔法である



どこの階層にあるのかも、どこのダンジョンに存在するのかもわからない


ただ、お客様が求める限り24時間、煌煌と光り存在し、今日も淡々と商品を売り続けている


ダンジョンコンビニー山田店ー











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