らくらくちっちゃい便
ダンジョンコンビニには、レジの横に4段のトーテムポールがたっており、それぞれの口の中には小さなインディアン、妖精、小さなおじさん、小人の国へと繋がる魔法陣が描いてある
手紙や小包など、急ぎの便でないものは、なかなかレジを空けることができない店員がトーテムポールの口の中にいれて、その者達に依頼して送ってもらっている
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
「この荷物を贈りたいのだが」
雄々しい鬣に強靭な牙をはやし、つぶらな瞳のキマイラが耳を後ろに下げながら疲れた様子でレジの上に荷物を乗っける
「宅急便ですか?」
「いや、らくらく便で」
そう言うとキマイラは、いくつかのバーコードが書かれたシールを数枚取り出した
「らくらくちっちゃい便ですね」
3段目のトーテムポールの口にシールをいれると、小さなおじさんが受け取り、遠くから小人が荷物の大きさをチェックする
「あといつもの宝箱と聖女の涙を購入したいのだが」
「かしこまりました」
店員は、金銀と宝石が散りばめられた宝箱と小瓶を取り出すと、休憩室で投影魔法で壁に映された年末スペシャルで大笑いしている母親の、目元から流れている涙を瓶にいれ、キマイラに渡す
「もしかして、中流ボス戦がはじまりますか?」
「あぁ、まいどまいど困ったもんだよ」
キマイラは、聖女の涙を自分の尻尾にかけると、ぐったりしていた蛇が目を覚ます
「いったいわらわらと何なんだ彼奴等は。こっちが必死で家族のために集めた宝をこぞって盗みにきやがる、いい大人どもが働かずに大勢でけしかけて、盗人ニートばかりだ」
大きなため息をつきながら、キマイラは盗人が落としていく盾や防具、剣などを店員から受け取った箱や袋に丁寧に詰めていく
「しかも平気で物を捨てて散らかしていく。まだ、使えるものばかりなのに。あいつらはあちらこちらにこれらを、捨てていくんだ。壊れたものも直して少しでも誰かの為になるならと思ってな。売れたら宝箱に入れて貯めて置くんだ」
節約家のキマイラは、メッセージカードに謝礼と大切にお使いくださいと、書き込むと荷物に入れた
テッテレー♪ガー
「ありがとうごさいましたー」
店員は、受け取った荷物をトーテムポールの口のなかで、キラキラと鱗粉をまきながら様子を伺っていた数匹の妖精に手渡すと、ティースプーンに花の蜜をすくって渡した
3段目から羨ましそうに、見ていたバーコードチェック係の小さなおじさんには炙ったスルメを渡し、危険物センサー係のインディアンにはトウモロコシを、小人達には角砂糖を手渡した
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
勇者を筆頭に戦闘で汚れた冒険者達が入ってくる。あれは新人だろうか、やけにボロボロの武器と鎧だ
「お前たち、だからいっただろ!安けりゃいいってもんじゃない!高くてもちゃんとした武器を買えって!」
「そんなぁ~勇者さん、俺たちまだペーペーっすよ〜この武器買うのがやっとです」
「何、甘えたことを言っているんだ!武器は命だぞっ!高くてもいい武器を買うんだ」
勇者の武器って始まりの村で引っこ抜いてタダでもらった聖剣だよな
「ったく。しょーがねーな!今回は俺が奢ってやる!」
「マジっすか、店員さんここで1番いい武「ちょーとまてっ!」」
勇者がレジに群がる新人部下たちに立ちはだかる
「お前たちにはまだ早い!!中古品で十分だ!」
ゴゾゴソとズボンのポケットから、勇者はグシャグシャになった紙を取り出した
「ここで買え!」
「えぇ〜これってステータス画面で買える中古品フリマのチラシじゃないっすか」
「なにを贅沢な!掘り出し物も沢山あるんだぞっ!ほら、これなんか俺が折れて捨てたレプリカの聖剣にそっくりだ!」
威力10倍の聖剣を捨てないで欲しいのだが、こうして、リサイクルされていくからキマイラの苦労も報わていくんだな
「いいか!お前たち!次のボス戦で一攫千金を狙うぞ!働かざる者食うべからずだ!!」
「おー!!」
ニート大量生産者は、ステータス画面でボチボチっと中古品で注文すると商品をコンビニ払いで払っていった
テッテレー♪ガー
「ありがとうごさいましたー」