幼女と義父
異世界転生者は放課後に現れる。そういった日常は、突如覆されることがある。その世界には、学校というものがあるらしいのだが、7日目には必ず休みというものがあり、24時間ブラックダンジョンコンビニ山田店には穏やかな休みというものがない
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
「ちょちょ・・ちょ!痛い痛い!ガーちゃんやめて!!!」
自動ドアが開くと同時に、小さなガーゴイルに頭をガジガジかまれながら、男は現れた
「店員さーん!!助けてください!!ここに来たと同時にガーちゃんが攻撃してくるっす!!!」
「・・・」
本来、ガーゴイルはおとなしく友好的で少し人見知り(AIによる概要)な性格のはずなのだが、男に対する態度はとても狂暴で、その鋭い牙で、甘噛み以上に男の頭を噛んでいた
「ガーちゃん、俺の世界ではぬいぐるみだからおとなしいんっすけど、ここ来て本体に戻ったらめっちゃ怒ってるんす!!」
「・・・」
「キュアキュア鳴くんすけど、何言ってるかわかんな・・いって!!」
「・・・おなかがすいているみたいですね」
ダンジョンコンビニには認識魔法がかかっているため、異種間同士でも、言葉の壁は皆無なのだが、この魔力0の男には、ガーゴイルの言葉は理解できないらしい
「お食事は差し上げていましたか?」
「・・・・('Д')」
男のふがいなさにガーゴイルもガブガブと男の頭を丸のみしそうな勢いで噛み続ける
「え・・え・・!ガーゴイルって何か食べるの!!??」
「・・・」
「だって!こっちの世界ではぬいぐるみだったからさ!!それにガーゴイルだしさ、ごはんもいらないかと思って!!!」
店員は小さなため息をつきながら、棚から液体の入った瓶とカウンター下から木箱を取り出し、蓋を開けた
「まだ幼少期のようですので、総合栄養ミルクに魔石を溶かして1日6食あげてください」
木箱の中には色とりどり小さな宝石のような魔石が、箱いっぱいに詰められていた
「おおう!!魔石!!魔石初めてみた!!」
「5万ペソです」
「たっか!え、たっか!!一介の高校生には買えませんて!!」
ここはダンジョンコンビニ、様々な商品を手軽に買える分、正規の商品を正規の値段で売るのがウリなのだが、今回は自分の母親の責任でもある
店員は、休憩室から宝箱を持ち出すと男の前に置いた。奥で「あーんママのへそくり〜」という声が聞こえたが無視し、宝箱の蓋を開けると虹色の魔石が1つはいっていた
「少し手間がかかりますが、こちらの魔石を一削りしてミルクに混ぜて飲ませて上げてください。お客様の、2番くじの商品が生き物でしたので初回養育セットとして処理させていただきます」
「ラッキー!!ひゃっほーい!!」
腑に落ちない喜び方なので、少し腹が立つが仕方がない
「あと、店員さーん!このガーちゃんの言葉が分かるようになる商品とかなーい?」
男が顔の横で両手をスリスリして足元を見やがる
「ニコリさんの商品で、魔物を一時的に人化させれる商品がありますが」
「マジで!!」
「15万ペソです」
「たっか!!」
そういえば、今朝ニコリさんがお客様にお配りする試供品を持ってこられた中に、似たような性能のものがあった
「こちらは試供品ですが、一時的に言葉を理解できるようになる効能薬ですが試して見ますか」
「ぜひ!!」
ミルクに魔法石の粉を混ぜて、ニコリさんの薬を混ぜる。ニコリさんは商品名を翻訳こんにゃ・・といっていたが
「おおお!!めっちゃ飲む!!腹減ってたんだなーうん。ガーちゃんごめんなー」
「うるせぇくそジジぃ」
「うわーカワイイなぁ・・・めっちゃ飲んでんなー」
「もっとよこせやクソが。普通に腹減るのわかるやろクソが、何日も食わせんとか虐待じゃ」
「ちょ・・ちょっとまって!めっちゃ口悪い」
ガーゴイルは、哺乳瓶に入ったごはんを飲み切ると大きなゲップと火炎を吐いた
「え・・ガーちゃんめっちゃ口悪いじゃん。めっちゃ声カワイイ女の子やのに・・」
「うるせぇ!お前、きたねぇおやじのくせに仮にも娘の育児放棄してんじゃねぇぞ」
「せめて、パパって呼んでぇ・・あっちぃ!!ガーちゃん熱いって!!」
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
レジ前で火炎ブレスを男に吹きまくるガーゴイルを取り押さえようと必死に男が抱きかかえる。店員が飛び火が商品に回らないように消火器を向けていると、勇者とドラゴンが同時にコンビニ入ってきた
「お、何か大変そうだなコンビニ兄ちゃん!」
「ぬ、また変な匂いがしているではないか・・」
「助けてくださいっす!!」
「なんだ!!お嬢ちゃんを襲っているぞ!!コンビニ兄ちゃん危険だ!!よけろ!!なんなんだこいつは!!」
勇者が聖剣に手を当てて、戦う準備に入っている。店内で暴力ざたはやめていただきたい
「お客様です」
「客だと!!?こんなカワイイお嬢ちゃんを襲っているじゃないか!!」
「そうだぞ店員どの、こんな匂いは美しいお嬢さんには危険だ」
勇者には黒い霧がカワイイ女の子を襲っているように、ドラゴンは不快な匂いが美しい女の子を襲っているように見えているらしい
「はぁ・・やっと落ち着いた」
いっぱい食べて、火を吐いてストレス発散できて安心したのか、ガーゴイルは目を閉じて男の腕の中で丸くなって寝てしまった
「ところで、店員さん。ガーちゃんのごはんってぬいぐるみの時はどうしたらいいっすか」
「あげてください」
「あげるったって、ぬいぐるみの時は口も閉じてるし、飲ませられないっすよ」
「栄養を補充できるための穴があるはずです。そこからごはんをお入れください」
男は、寝ているガーゴイルを隅々まで見ると、身体を持ち上げ、お尻の穴を見つめる
「もしかしてアナ・・」
「背中にあるはずです」
男の腕の中で寝るガーゴイルをうっとりした目で見る勇者とドラゴンを見て、大人になって人化したらきっと容姿端麗な姿なのだろうと男は、15万ペソ貯めようと決意したのだった
テッテレー♪ガー
「ありがとうございましたー」