秋の宇宙人を食す
お昼時、ダンジョンコンビニの1番混む時間帯である
アルバイトが辞めてから、数カ月が経ったのだが、最近は弟が手伝うようになり少しは楽になった
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
お昼ごはんを求めて何千人とくる顧客を相手に、淡々とレジをこなしていく弟
いつの間に分身の魔法を覚えたのかと思ったが、よく見ると最近産まれた双子の弟たちも混ざっている
午後2時、お弁当の在庫も少なくなってきた頃、自動ドアの前で7色のライトがクルクルクルと回っているのが見えた
テッテレー♪ガー
「ワレワレハウチュウジンデアル」
「いらっしゃいませー」
数本ものウネウネした手足に丸いアタマがついて目玉が1つ自分を宇宙人だと称する顧客は、ゴソゴソとA4サイズの紙を差し出してきた
「コノテハイショハッテホシイ」
宇宙人が差し出してきた手配書には、目の前の宇宙人とは色違いのピンク色のウネウネした体の宇宙人が載っている
「ヒメサマユクエフメイ」
どうやら自分達の星のお姫様が、行方不明になっているらしい。旅客船で宇宙旅行をしていたらしいのだが、ブラックホールに巻き込まれたのだと
「コノヘンデハンノウミラレタワレワレハヒメサマソウサクタイノウチュウジンデアルヒメサマココカラニオイガスル」
「あの、申し訳ないのですが普通に喋れませんか」
「喋れるよ」
宇宙人は、お弁当が並べられていた棚のところまで移動するとウネウネと頭を横にかしげた
「ここから姫様の匂いがする」
「そこは最近、お客様にお土産を頂いて置いていた所です」
ここ2週間夕方の時間は静かで穏やかな時間となっていた
異世界転生者が修学旅行とかなんとかで、コンビニを訪問することがなかったからだ
それが、おととい戻ってきて「店員さん!めっちゃ美味いお土産買ってきたー!」って何か食べ物を置いて帰ったのだ
箱に食べ物の絵が描いてあったのだか、丸いフォルムから覗く吸盤のような足がどうしても受け入れられず、賞味期限も短いようで、食べ物にも罪はありませんのでお弁当とともに並べて売りさばいてしまった
それにトイレから持ち込んできたというのも受け入れられない
テッテレー♪ガー
「いらっしゃいませー」
「店員の兄ちゃん!昨日買った弁当めっちゃうまかったわー!あれ今日は、置いてないのか!」
勇者が、昨日のお弁当についていた小さな木の棒を口にくわえながら入ってくる
「姫様の匂いがする」
「おっ、なんだ外人さんか?」
宇宙人は勇者の口元に顔を近づけスンスンと匂いを嗅ぐ
「しかし、あんな珍しい生き物が入った食いもん初めてだったわー!何かピンク色のウネウネしたもんがいい出汁でててなあー!」
勇者がうっとりとした顔で食レポを始める
「なんつーの?海鮮系?いやーうまかったわー」
「こいつ姫様の匂いがする。誘拐犯か?」
「お客様です」
宇宙人は勇者の足にウネウネと絡みつき、口元についたソースの後をジッと見つめている
「おぉ!なんか積極的な外人さんだなあー!めっちゃいい匂いするわー!これ昨日の弁当の匂いにも似てるなー!」
夕方、いつもどおり異世界転生者が来たのだが、手に持っていた小さな機械の箱で「漁獲船にてピンクのタコ発見!搬入先で茹でタコに間違われ、たこ焼きとなり売られていた」と書かれたニュースを見せられた