魔法少女と魔女
ここはダンジョンコンビニ
24時間営業のブラックコンビニ
テッテレー♪
「いらっしゃいませー」
ドア側の方を見ると誰もいないが、レジの下の方からゴソゴソと音が聞こえた
少し首を伸ばして覗き込むとトンガリ帽子に真っ黒のケープを羽織り、肩に黄色いカエルを乗せた小さな魔女が箒に乗っていた
「ちゅみませぇん、荷物の宅配お願いちたいんですけど」
「速達ですか?普通便ですが?」
「えっとぉ、んっと」
小さな魔女は背中に背負ったリュックからゴソゴソと木箱と手紙を取り出した
テッテレー♪ガー
「ちょっとお、何で先に行くのよ。あと、切手、忘れてるってばぁ」
「ありぃ?うっかりちてた。ありがとう」
切手シートをパタパタと振りながら、今度はピンクのフリフリ衣装にステッキをもった魔法少女が入ってきた
フリルのついた胸元はボタンが弾けそうなくらいボンと膨らみ、赤いリボンが巻かれた腰はキュッとしまっており、何層にも重なったフリルのスカートからはカボチャパンツを履いたお尻がボンっとのぞかせている
「あのさーお母さん、もう258歳になるんだから、しっかりしなよぉ」
「ゴメンねぇ。えっとぉ速達でお願いちまちゅ」
小さな魔女は、セクシー魔法少女から切手を受け取ると、ペロッと切手をなめて木箱と手紙にペタッと貼り付けた
「送り先を書かれていないようですが」
「ありゃりゃ~うっかり、えっとぉ住所ー住所ー」
「んもう!魔女の谷でしょ!叔母さん宛で」
「そうでちた、お姉ちゃんに送るんだった」
「もう!かして」
魔法少女は、魔女が持っている箒を取り上げてクルクルっと回すと箒が小さな筆に変わり、黄色いカエルから吹き出ている油を撫でると、木箱の宛先のとこに【西の魔女の国の谷底の果ての果ての魔女宛】と書き込んだ
「あと、手紙も入れ忘れてるから!」
「ありゃりゃ~、そりを入れないと、意味ないん」
小さな魔女はペロッと舌を出して、頭をかいていた
「では、速達でお受けしました」
店員が認証印を押すと同時に、自動ドアの開く音がする
テッテレー♪ガー
「今日も高校生男児が来ましたよっと!って、魔女っ子と魔法少女キターーーー!!!!!ってちょっとまって何か違くない??」
またややこしいお客様が・・・
「いらっしゃいませー」
「ねぇ、ねぇ!店員さん!!なんか違くない?俺の世界の魔女と魔法少女とちがくない?」
うざくてもお客様は神様で・・・でも神様も裸体天使の上司かと思うと信じられない
「ねぇ!魔法少女のお姉さん!!」
「店員さん、ナニこの触手・・めっちゃキモいんですけどぉ!!」
なるほど、魔法少女の敵は触手になるんですね
魔法少女は宝石のついたステッキで、触手をガンガンと殴りつけた
「ぐえぇ!!」
「だ、だめでちよぉ。偏見と暴力はだめでち」
その様子を見ながら小さな魔法少女も眉毛と口元をひくひくさせながら止めている
「キモいキモいキモい!!!!まじ、この触手しつこい!あーもうっ!あんたの好きにはさせられない!!お願いルルトラブル!!!愛の華サク召喚魔法!デュアコンパクト!!出ておいで!キュアキュア!!」
セクシー魔法少女がステッキを振り上げ、セリフを叫ぶと腰のリボンについた宝石がキラリと光り、まばゆい光と小さな星が飛び交う。ボインボインして、どこに集中してみればいいかわからない
テッテレー♪ガー
「きゅぴるん!よんだデボ?」
なんか、こうマスコットみたいなやつが自動ドアから入ってきた
「いらっしゃいませー」
二足歩行をするマスコットの頭から生えた3本の毛はトレードマークだろうか、大事そうに右手で櫛を使いながら毛を横に流している
「キュアデボ!!この触手を倒して」
「マスコットづかいが荒いデボ。めんどくさいデボ」
マスコットは、自動ドアの横に立ててある経済新聞を広げると胡坐をかきながら、鼻くそをほじっていた
「まじかー!!魔法少女にマスコット!!ここだけ王道じゃん!!」
男は目をランランとさせ、セクシー魔法少女とマスコットを見つめる
「きっしょ!!めっちゃクネクネしてんじゃん!!キュアデボ早くたおせってば!!!!」
「ふーぅ・・・めんどくさいデボねぇ・・・」
マスコットはほじった鼻くそをピンッと飛ばすと、だるそうにお腹のポケットに両手をつっこみ、レジの方にガニ股で歩いてきた
「おうおう!!触手の兄ちゃんよぉ!王道ったぁ聞き捨てならねぇなぁ!!この魔法業界、キャラ被んねぇように目立ったもん勝ちなんだよ、こっちも、仕事なんでね」
触手の言葉がわかるのは、普通にすごいことなんだが、そろそろ宅配を始めないと速達の意味がないので、小さな魔女に許可をもらい少しだけ、レジの前に「レジ休止中」のプレートを置かせてもらった
「すみませんが、少しの間お願いします」
休憩室の両親にも許可をもらい、店員は宅配の準備に取り掛かる。
一触触発している顧客を前に、店員はレジ下にしゃがみ込むと、床下収納の扉の取ってを掴み、ゆっくりと開ける。
ビュービューと風が吹きこみ、床下収納の中は真っ黒な空間が広がっていた。ここは店員以外が入ることはできない異空間となっている
「西の魔女の国の谷底の果ての果ての魔女のお宅へ。速達便で」
店員が宅配先を唱えると、異空間がぐにゃりと曲がり、床下収納の中に、たくさんの木々が生えた谷底が見えた。店員は木箱の住所を確認し、目的地を確認すると、床下収納の中に飛び込んだ
5分後、受取伝票にサインをもらった店員が戻ってくると、レジ前では、男とマスコットキャラがまだ言い争っていた
「だから、魔法少女は幼女で!魔女は黒が似合うお姉さんが王道なんだって!!」
「王道だと顧客がつかないんデポ!!」
「その王道がいいんだって!!!ためしにさ!ロリ魔女さんとセクシー魔法少女を交換してみてよ」
他のお客様の迷惑になるので、外で言い争っていただきたいのだが、自動ドアを出ると転送元にもどってしまうから出れないのだろう
「ね!!デポっち!!ためしにさ!」
「埒が明かない触手デポね!!そんなに言うならやってみるからお前責任とれデポ!!」
「プロデュースしてやんよ!!」
とばっちりとうけた小さな魔女とセクシー魔法少女が、「はぁ?」と首をかしげている
「交換魔法デポ!!!触手プロデュース!!!魔女と魔法少女をそれぞれ王道に!!デポデポでポリンデポ!!!」
マスコットが大きく両手を広げると、小さな魔女とセクシー魔法少女の身体が光だし、音楽とともに某変身シーンが発動される
約2分ほどで、魔女と魔法少女の姿が(男曰く)本来の姿となった
「まじで!!これぞ王道!!異世界でバズるってばよ!!」
後日、触手の眼の部分に黒い線で隠された写真と【邪道、ロリ系魔法少女と卑猥魔女の真実!!触手プロデュースの闇と個性的趣味の実態 デポ「本当はこんな格好はさせたくなかった」】と見出しが書かれた週間ゴブリダと新聞がコンビニに並んでいた