表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

はげの親父

作者: 橘 蜜柑

 俺の親父は売れない芸人だった。

頭がハゲているのをネタにして、笑いをとろうと必死だった。

必死すぎて、子供の俺は、見ていられなかった。


ハゲを売りにした人気芸人はすでに何人もいたので、親父の入り込む余地はなかった。

何しろ、親父ときたら、馬鹿のひとつ覚えみたいに、それしかネタがなかったのだ。


ーーどうして母ちゃんは親父なんかと結婚したんだろう。

苦労している母ちゃんを見て、ずっと思っていた。


芸人だけでは食っていけないので、親父は色んなバイトを掛け持ちしていた。

一度、商店街のちんどん屋の列に加わっているのを見たことがある。

ハゲの上にハゲのかつらをかぶって、ひょっとこみたいな顔をして、一生懸命おどけながら、踊り歩いていた。


笑わせようと、必死になっているのが空回りして、いまいち面白くないのだった。

子供心に、そこは親父の尊厳を傷つけるのがわかっていたので、俺は決して口にはしなかった。

だが、親父は親父なりに悩んでいたようだった。


ある日、親父は芸人を辞めると宣言した。

そして、知り合いの土建屋の建築現場で働き始めた。

必死に働きながら、頭の汗をてぬぐいで拭う親父の姿を見て、俺は初めて親父を尊敬した。


定職についた親父のおかげで、俺は大学までいくことができた。

安定した会社に就職もできた。


結婚して、子供も生まれ、親父は今ではおじいちゃんになった。

孫の前で、昔のネタを披露して笑わせようとする親父を見ると、俺は何だか無性に切ない気持ちになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ