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僕が本当の医者になれた日  作者: 木痣間片男(きあざまかたお)
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出会いと進展1-3

 愛里たちが入職して一年が経とうとしたある日のことだった。今日は朝から雨が降っていたので、温かいメニューの昼食にしようと思って、僕は病院のコンビニでレンチンうどんを買おうとしていた。一二時少し前の時間で、売店はそろそろ混みはじめていた。そこに彼女ともう一人の同僚看護師がやってきた。が、別にそれはたいしたことではない。彼女が売店でモノを買うことはもちろんぜんぜん珍しいことではないし、病棟以外の場所で顔を合わせることなど日常的だった。僕としては、普段から顔を合わせているわけだし、昨日の夜勤でも、そしてその前の日勤でも会っておしゃべりもしている。だから、「やあ」とだけおざなりに声をかけた。ただ、このときの愛里は少しだけ、ほんの少しだけいつもより機嫌がよく、笑顔が輝いているように見えた。


「こんにちは小竹先生、今日はウドンですかぁ?」

 どういうわけだか、立ち止まってまで、彼女のほうから話しを広げてきた。

「ああそうね。まだ外来が終わらないから、いまのうちに買っておこうと思ってね。今日は雨だから・・・・・・、うどんだね」

「雨だとウドンなんですかぁ?」

「そうだね。うどんで有名な香川県は雨が少ないから、そんな過酷な環境でも育つように小麦の栽培に力を入れるようになったんだ」

「んっ・・・、それって、今日のウドンとなにか関係ありますぅ??」

「うーん・・・・・・、雨の日は感謝のつもりでうどんって言ったんだけど、あんま関係ないね」

 愛里は声を上げて笑い出した。

「何それ、ぜんぜん関係ないじゃないですかぁ。小竹先生、いつも面白いですねぇ」

 そんなおかしくもないだろう、「いやいや、面白くはないよ」

 

 いつの間にか愛里との会話はこんな感じになっていた。だいぶ年下の女の子といってもいいくらいの小娘にからかわれている。信頼されているのかもしれないけれど、悪く言えば、やはりバカにされているようでもある。

「じゃあ、外来に戻るから、また後で、病棟で」

 話しをしていてもさりとて意味がないと判断した僕は、そう言い残して、その場を立ち去ろうとした。 

 が、そのときだった。愛里がちょっと恥ずかしそうに言葉をつないだ。

「先生、いつになったらご飯、誘ってくれるんですかぁ?」

 ドキッ!、えっ・・・。

「・・・あっ、なに? 本当に行きたいの?」

「はいっ、行きたいです!!」

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