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貴方と異能戦場へ  作者: ゆうま
第1章 血みどろな童話の世界へ
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番外編 佐治と東恭一

 「“貿易の”の護衛。サンドウィッチとても美味しかったよ。ご馳走様」

 「喜んでいただけて良かったです」

 「ところで」


 皿を洗う手を止めてちらりと武闘のボスを見ると、たまに見る嫌な笑みを浮かべている。


 「君は随分と、自分のボスに意地悪だね」

 「そうでしょうか。武闘のボス、あなたの部下のように少々正直な場面があるだけかと思います」

 「ふぅん、可愛くないね」


 自分の部下にない部分を僕に求められても困る。


 「可愛いといえば絢子さんの服、よく似合っていますし可愛いですね」

 「そうだろう?だけど皆あまり良い顔をしないんだよ」


 そりゃ、ここに来るのにゴスロリなんて着ていたらね。


 「武闘のボスご自身が選んで差し上げたのですか」

 「うん、そうだよ。どうせ文句を言われるなら私の趣味の服にしようと思ってね。絢子くんに似合いそうだとは思ってたけど、まさかあんなに似合うなんて」


 随分と振り切ったねぇ。今回はどうせ目立つから、とでも思ったのかな。


 「やはり駄目かな」

 「駄目だと思います」


 しまった。つい食い気味で言ってしまった。

 武闘のボスってなにを言われても、なにを言っていても、貼り付けた笑顔で、なにを考えているのか分からないんだよなぁ。


 「うん、君がいれば安心だね。これからも弟を可愛がってあげてね」


 どんな反応をすれば正解なんだろう。


 「そうだ。これから君のボスは妙に優しくなると思う」


 想像出来ない…。


 「それにはこんな理由があってね――」


 話を聞き終えた僕は、思わずにやけた。


 「悪い顔だね」


 その表情を見てなんとなく、あのときの言葉を思い出した。貼り付けた同じ笑みにしか見えないが、何故だか結びついた。

 ついでに聞いてみようか。


 「ひとつ疑問に思ったことがあるのでお聞きしたいです。答えるかは質問を聞いてから決めていただいて結構ですので、質問を聞いていただけますか」

 「どうぞ」

 「武闘のボスは霞城さんを異能戦争へ行かせたくないのだと最初は思ったのですが、あっさり承諾されましたね。良いのですか」


 シンクに身体を預けるように腰掛けると、大きく天井を見上げる。


 「私も出来れば行かせたくないよ。玩具がなくなってしまう。それに、玩具を玩具に取られそうで不服なんだ」

 「また新しい玩具を買えば良いではありませんか」

 「君は別の組織へ異動になったら、その組織のボスで今のように遊ぶのかな」


 嫌な言い方をするなぁ。少々からかうことはあるけど、遊ぶなんて。…まぁそんなに変わらないか。


 「いいえ」

 「玩具がなくなることよりも、玩具を玩具に取られそうなことが問題なんだよ」

 「表現には共感しかねます」


 南絢子も警戒していた農園のボスは正直不気味。他のボスもなんとなく距離を置いているのに、武闘のボスは他よりも少し仲が良い。

 きっと、この辺りの理由があるんだろうなぁ。


 「でも僕も良い気はしないです。共感とか理解とか、そういう言葉でない概念で分かり合っているような雰囲気に苛立ちを覚えます」


 僕が欲しいもの。僕が渇望しているであろうもの。


 「うん」


 僕を見たその表情は、やはり貼り付けた笑顔だった。けれど、何故か泣いているようにも見えた。


 「秘密だよ」

 「…はい。僕の方も秘密でお願いします」

 「そうだね。きっと顔を赤くして構ってもらえなくなってしまう」

 「まぁ究極、それもありですね」


 なにか上手いことを言おうとして口をついて出た言葉だった。ちっとも上手くないし、なにも面白くない。失言だったなぁ。

 けれど武闘のボスは、笑った。


 確かに、笑った。

今回の更新で番外編は終了です。次回の更新から本編へ戻ります。

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