第一章 黒い封筒
———続いてのニュースです。連日世間を騒がせている、少年少女の失踪事件ですが、昨日また一名、失踪者が出ていたことが判明しました。
今回発覚したのは、月山高校三年、男子生徒の柳原カイ君で、月山市内のアパートで一人暮らしをしていたとのことです。
この事件の失踪者はこれで二十三人目となり、警視庁は————
またか・・・。
最近ほとんど毎日の勢いで失踪者が出ている。しかも今回の現場はここ、月山市だ。
何気なく窓の外を見ると、真っ暗な中、街灯と家の明かりだけが点々と灯っているのが目に入る。
正直、かなり不気味だ。
「———二十四人目は私かな・・・」
冗談のつもりで呟いてみたけれど、背筋を嫌な汗が伝るのが分かった。
もう一度テレビに目を移す。
ちょうどアナウンサーが「引き続き、情報提供を呼び掛けています」と言い、次のニュースに移るところだった。
溜息を吐いてテレビを消すと、そういえば夕飯がまだだったと気づく。
只今の時刻は午後八時。
今日も両親は、仕事の都合で隣町に出かけて帰ってこない。
今家にいるのは私だけ。
———月山市内のアパートで一人暮らしをしていたとのことです。
先程のニュースが頭をよぎる。
テレビなんてつけなければよかったと、今更ながら後悔した。
「・・・もう寝よう」
夕飯を用意しても、喉を通りそうにない。
こういうときは、さっさと寝てしまうのが一番良いのだ。
パジャマに着替え、寝室に向かおうとした時だった。
ピーンポーン・・・
家の中に響き渡る独特の音。
来客を知らせるインターホンが鳴った。
「・・・?こんな時間・・・ってほどでもないか。誰だろ・・・」
とりあえずリビングに戻り、インターホンを確認すると、宅配業者のような服装をした男性が映る。
通話ボタンを押すと、「宅配便です」というお決まりの声が聞こえた。
今出ますと返し、印鑑を持って玄関へ。
ドアを開ける。
「・・・え?宅配便さん・・・?」
そこにいるはずの宅配業者の姿は忽然と消え、玄関先に黒い封筒が一枚。
「印鑑・・・良いのかな・・・」
そんなに急ぐ用事があったのだろうか。
または、リビングから玄関に来るまでの、ほんの十数秒の間に何かあったというのか。
まさかこれが、最近話題のあの・・・失踪事件というわけではあるまいな。
そう考えると急に恐怖が押し寄せる。
置かれていた封筒を引っ掴むと、逃げるように家に入った。
*
「何だったんだろう、今の・・・」
こういうことって、あるのだろうか。
宅配業者失踪事件、なんて、明日にでもテレビでやっていたら、目撃者として情報提供とか、その他諸々しなくてはいけないやつなのか。
「・・・そしてこの封筒、宛名は・・・私?」
封筒の裏面に白い文字で書かれた「白峰雪乃殿」という五文字。
住所や郵便番号は記載されていない。
「よく届きましたね・・・白峰って珍しいから届いたとか?」
確かにこの辺りで同じ苗字の人に出会ったことはないが、だからといって届くものなのだろうか。
というか宅配業者って手紙サイズの封筒も届けるのだったか。
そういうのは郵便で届くのでは・・・?詳しくは知らないから何とも言えないのだが。
「・・・開けてみようかな」
自分宛だから開けても問題ないが、何せ消えた宅配業者が置いていった封筒だ。
やっぱり緊張する。
「・・・・・・よし!」
意を決し、封筒の糊を剥がす。
ペリペリッという快音の後———フローリングの床に、カードが一枚落ちた。
「何これ・・・?」
カードに書かれていたのは、またも白い文字で綴られた文章だった。
声に出して読んでみる。
「———―おめでとうございます。貴方は神により選ばれました。こちらの世界にて、貴方がご健闘されることを祈っております。・・・ってどういうこと?・・・ん?」
——————すぐにお迎えに上がりますので、少々お待ちください。
最後の方に小さめの文字で書かれていたこの一文。
「お迎え・・・すぐに・・・?」
意味が分からない。どういうことなんだろうか。
「・・・悪戯、か」
そう思って封筒を机に置いた・・・直後。
グラッ
視界が、揺らいだ。
立っていられないほどのめまい、激しい頭痛。
目の前が真っ暗になり、そして・・・
意識が途絶えた。




