表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
訃報  作者: 夏見里
2/2

秋から冬へ。

 ある日の学校からの帰り道。

 家も近いカナとは、ほとんど毎日一緒に帰っている。社交的なカナは、なかなかの情報通で、いつも色んな話を聞かせてくれる。誰と誰が付き合いだしただの、誰はどこの高校を狙ってるらしいだの。

 ところが、今日に限ってどうにも大人しい。

 試験の結果が、悪かったのか。体調が悪いのか。

「何、カナ、今日大人しくない?」

「そう?そんなことないよ?」

 分かりやすすぎるよ…。

 しばらくの沈黙の後、カナが口を開いた。

「んー…あのさ?」

「うん?」

「聞きたくないかもしれないんだけど。」

「聞きたい、聞きたい」

「いや、そういう話でもないんだけど。」

 どうも今日のカナは歯切れが悪い。そんなに私が嫌がる話?誰か私の悪口でも言ってたか。

「うん、大丈夫だから言ってみて?」

「言うよ?あのね、ヒロね、キョーコと付き合うんだって。」

「へぇ。」

「で、何でそんなに、歯切れが悪いの?」

「だってユウ、ヒロのこと好きなんじゃ…。」

「なんで?そんなこと言ったことないじゃん。」

「だって、いつもヒロのこと見てるし…。」

「そりゃぁ、あれだけ目立ってればねぇ。…って、そんなこと気にしてるってことは、カナこそヒロのこと…。」

「ユウが、ヒロのこと好きだと思ってたから言えなかったんだけど…。」

「言ってよー。」

 そう言って、笑う私。

 その後、カナの失恋話に付き合う私。

 しまった…。10分前の私を返してくれ…。


 カナからヒロが付き合い始めた話を聞いた瞬間は、カナの話の「ヒロ」は自分の好きな「ヒロ」ではないような気がしていた。だから、すぐに「へぇ。」と返事ができた。実際、その話の「ヒロ」を認識したのは、カナと別れて一人で家に向かう時だった。そして、本当に「ヒロ」が付き合いだしたと認識したのは、彼らが一緒に帰るのを目撃した時だった。

 照れくさそうに、ズボンのポケットに手を突っ込んで歩く。一回り小柄な彼女が、彼の少し後を追う。


 本当に付き合ってるんだ…。

 こう目の前にさせられては、信じざるを得ない。「心に穴が空く」とよく言うけれど、「心にバズーカ砲」だ。でっかい穴に、風邪がびゅうびゅう吹きすさぶ。

 

 季節は、秋から冬になろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ