①ー6
「え?」
驚き声を上げ、起き上がるとキョロキョロと視線をさ迷わせる
ハァーッと盛大な溜息を吐き出すお姫様に気付き視線を固定する
ジーッとお姫様の顔を見て再び驚愕する
「私?」
うり二つとまではいかないが、私に似ているのだ
姉妹と言われたら頷ける位そっくりだ
しかし、髪色、瞳の色の違いで凄く印象が異なる
黒髪に黒の瞳
フワフワな髪質は編み上げられ、真っ黒な睫毛がびっしりと生える瞳
少し勝ち気そうに見えるのは気のせいでは無いだろう
育って来た環境がそうさせてるのか、自信に満ちた気高いオーラ
これはもしかしたら本物のお姫様かも知れない
「貴女ね、何時までもボーッとしてないでお立ちになって!」
言われるままにガバッとたちあがると直立不動の如くピシリと固まる
「早く向こう側に帰らなければ....」
ブツブツと呟きながらお姫様が手を伸ばす
オーブに手を翳しホッとした様に息を吐き出すとさぁ早くと促される
オーブにもう一度手を付ければ戻れると教えられ一歩進む
一歩進むと一歩下がるお姫様
しかし、次の瞬間
「ぎゃっ!」
と言う声が響き渡り
オーブが次の瞬間、ポーンと跳ね上がる
そう、正しくボールの様に天高く跳ねたボール、じゃ無くオーブは次の瞬間真っ逆さまに落ちて来て、大きな音と共に崩れた
ボコンだか、グニャだがガダンだが音を響かせ崩れたオーブを唖然と見つめる四つの瞳
先に声を出したのはどちらだったか....
渇いた声が響き渡る
「ハ.....ハハハ.....ハハ」
唇の先がピクピクと痙攣するお姫様
何があったかと説明するならば
お姫様が一歩下がった所でバランスを崩し、すっ転んだ
すっ転んだお姫様のおみ足がオーブをポーンと蹴り上げたのだ
お姫様は以外とおっちょこちょい?
えっと、その....と声を出した所でお姫様がグルンとコチラを向いた
泣き出しそうな、叱られる前の顔をするお姫様
「ご、ごめんなさい」
先程まで偉そうな態度がシュンとうなだれる
こんな時に私は違う事を考えてた
きっとコウちゃんに叱れる前の私ってこんな顔してるんだな、など関係の無いことを考えてて....
真っ青になるお姫様に気付かなかった
私は呑気に考えてたのだ
ここは夢の中
目が覚めれば何時もの景色、日常が待ってると
しかし、此処はオーブの向こう側
私の夢はオーブのあちら側で
グニャリと歪む景色に目が覚めると思えば、お姫様の真っ青な顔と何かを叫ぶ声が遠くで聞こえる
「す、ぐに.......」
しかし、何て言ってるのかうまく聞き取れず
目が覚めれば暖かい布団に包まれては居らず
「此処何処......」
何処までも続く地平線は小麦色
碧い空に高い雲
こうして私の異世界漂流が始まった
正に異世界で迷子
異世界にお巡りさんは居ますか?
その頃あちら側の世界であんな事が起こってたなんて知りもせず
「まだ夢の中?」
今回の夢はやけに長いし、変なのと空を見上げて居たりする