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クッタリアの魔物  作者: 赤異 海
56/59

56/鍛冶師タカード④

燃える私の家が。


私たちが遺跡の門からでると直ぐ、外に残っていたあの怪物たちが一目散に襲ってきた。


私の家をだ。


 あの中には、娘が。なぜ家に向かう。私たちを見たのに。私はこの時ばかりは無慈悲な神へのあまりの怒りで胸焼けがした。胃が苦しい。内側から臓物が溶けるように痛む。今にも吐きだしてしまいそうなほどに。


私は無我夢中で娘のいる家へとは走った。大声で叫びながら。


――気付け。怪物ども。こっちだ。ここに俺が。襲うなら俺がいる。


 ただの悲嘆の言葉にならない叫びだが心では娘への思いがずっと駆け巡る。


 怪物の一部がこちらを見た。駄目だ。他の怪物の視界に入れない。振り向かせる事ができない。


 私はその時見た。ナルシアの入口に見える一団がいた。中央の男の手の指先から複数の火線が迸るのを見た。それは小さな火種であったが、その一つが怪物にぶつかると急に火薬に引火したかのように爆炎に変わる。


 奇跡だ。


 次々と火線に触れては吹き飛ぶ怪物たち。一体、二体と炎に包まれていく。


 火線は一瞬のうちに怪物たちを一掃してしまった。


 奇跡が起きた。私の目の前に火線があった。私の手に触れる火線。


 私はあまりの熱に手を素早く引く。


「――」


 私の目の前で火線が炎の大蛇に化け、私を覆い尽くそうとしたが、また一瞬で炎が風に吹き消されるように消えた。


「すみません!生存者の方でしたか!」


 私はどうやら怪物と間違えられて燃やされるところであったらしい。


 しかし、目の前の奇跡に。その行使者であるその男に。私の視界では男には後光が差して見えていた。

「娘が!メレが中にいるのです!」


 私はしどろもどろに叫び、そう伝え、家の中に真っ先に入った。娘を探す。隅から隅まで。そして見つけた。


娘は私の工房の中で泣いて蹲っていた。よほど怖い物を見たのだろう。私は娘に声をかけてからそっと抱きしめた。


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