52/死霊術師ヒリエム⑨
ヒリエムには予想外だった。これほどまでの数の怪物を既にあの男が用意していたなんて。ヒリエムも剣を取り立ち向かうも、多勢に無勢。これでは勝ち目はない。
逆転の策として試したこと。あの怪物の操る死体に霊を憑依させようと試みてみたが駄目らしい。既に死体ではないのである。あれは既に一つの生物なのだ。
死者の肉体を乗っ取り自分の物にしてしまう。それでは私の方法でゾンビには出来ない。既に魔物に操られるゾンビとして生を受けているのだ。
私は息絶えた傭兵の元に駆け寄ると術を行使した。
この際、誰でもいいのだ。
傭兵が立ち上がる。周りの者にはまだ生きていた男が力を振り絞っているように見せなければ。新鮮な死体なら動きは鈍くならないことをその時に学習した。
生き返らせた傭兵には剣を持たせ戦わせた。銃などの扱いなどヒリエムが知りようもない。肉壁としてなんとか魔物たちの侵攻を抑えなければ。
駄目だまるで数が足らない。
いくら精密に操作ができても囲まれた私のゾンビは袋叩きにあって粉砕される。
この町に墓地はないのか。あるとしたらどこなのだ。早くそこへ行かねば。
気持ちだけが焦る。町の人々を逃がすことなど出来ない。なんとかしなければ。焦る気持ちだけが先行する。