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クッタリアの魔物  作者: 赤異 海
44/59

44/魔法騎士ユサン③

それからしばらくして、私にはまだ実感がないが、私の様に魔法が使える者を集めた秘密部隊の会合とやらへ参加するために迂遠な城内を歩き、やっとのことでその一室と思しき部屋へと着いた。あまり良い部屋ではない。


城の地下や隠し通路を幾つも通ってきたので少し私にもカビ臭い匂いが染みついた気がして癪であった。


ここはその迷路のような王族の脱出通路の中にある一室なのだろう。余り、というか全く掃除がされている様子がない。会合の度に会う場所は変える様なので期待はしていなかったがそれより酷い。


そんな部屋には既に複数の人影があった。


その中で一際異彩を放つ存在に私は心を奪われた。


きりっとした眉に、その眼差しは妖しく、緑色の瞳が宝石のように煌めくのでさらにその妖しさに拍車がかかる。鼻筋はすっと通り、その唇にはうっとりとする。


凶悪だ。


髪は金糸のように輝き揺らめいている。この世の物とは思えない魅力的な存在だが、これは凶悪だ。


この場に似つかわしくないその存在は、この部屋との落差から一気に心が魅了されてしまうかと思ったほどである。


「新人がさっそくルアーノに惚れたな」


 神々しいルアーノの存在で他の者の容姿に気付かなかったが、この男も自分に自信がある事がその言葉の端々に窺えた。このルアーノという美人がいなければ彼にも目が行っただろうが、比べようがない。


私が寄る辺がなく初めの言葉を発しかねてると、ルアーノが私の方へ歩み寄ってきた。思いがけず高鳴る胸。


「私はこの魔法部隊の隊長を任されているルアーノだ。よろしく頼む。これは君の剣だ。すまなかったな。だが、特に何も感じなかった。持っていても安心だろう」


「は、はい」


 思わず見惚れてしまった。


薄暗い部屋で遠くから見るのと間近で見つめられるのでは話が違う。


「ルアーノは私の物なんだから。男女が手を出すんじゃないよ!」


「私が何時お前の物になったんだシャスリン」


 ルアーノに名前で呼ばれてとても嬉しそうな女シャスリン。特に見栄えのしない女だ。


「おいおい、こんな良い男たちがいるってのにルアーノだけに群がるなよ」


「おう、随分仲が良いな。もう馴染んだのかいお坊ちゃんお譲ちゃんたち」


 私の後ろからコーマックが入ってきた。


いちいち癪に障る男だ。


「遅くなったがお前らに集まってもらったのは他でもない。この新人の顔合わせ。それだけだったんだがな。どうにもクッタリアの方で不穏な動きがあるらしい。俺も今日知ったんだが、あそこへの派遣に行かせていた兵士の一人がずたぼろになってこの王都に運ばれてきた。俺の選んだ部隊だ。あれには俺の腹心を向かわせたんだが。どうも事態が急変したらしい。奴が送ってきたメモと書物のページを見返すがどうにもこの町は臭い。何かが起こっている。それを確かめに行ってもらいたい」


「私たちでなくとも新たな兵たちを向かわせれば済む事では。私たちの存在を露見させるにはまだ尚早かと」


「それがそうも言ってられないんだ。俺の元へ話が来るまでもう三週間かかっている。奴の読みが当たっていたらあの周辺はもう亡者や動く屍でいっぱいだろう。ただの兵隊には任せておけない」


「なぜそんなに時間が」


「どうもお偉いさん方が折角の情報を途中で止めちまったようでな。まあ信じられない話だが俺に一言もないってのは。全くやってられないぜ」


 私は何のことだかさっぱりだった。まだ何も説明を受けていない。


そんな私の様子にコーマックは少し笑うともう一度説明するがと事の成り行きを喋りだした。


一同は黙ってコーマックの話を聞いている。


私にはまだ知るべき事がたくさんあるのだが、そんな事を思うより先にこの件を片づけなければならないようだ。


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