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クッタリアの魔物  作者: 赤異 海
38/59

38/兵士ローバス⑧

 次の夜も、その次の夜も、また次の夜も何日もあの怪物たちは町に現れては徘徊を繰り返している。


何が目的なのかさっぱり分からない。私たちは朝も町から出たら襲われるのではないかと怯えながら過ごし、夜は眼下で彷徨う怪物たちを何度も眺めた。何かを探しているのか。


あれほど知能が有るように見えたのは嘘であったかのように怪物たちの行動は意味不明である。私たちを襲う事は無いが、日に日に数が増していっているのが目に見えてはっきりしだした時、私の心の中で建物が崩壊したような地響きが鳴った。


「この町を出よう」


 その私の提案に誰も意見は言えなかった。


しかし、どこへ行けばよいのか。どこが安全なのか見当もつかない。


あの怪物は襲ってくる事を本当に止めたのかどうかすら怪しい。


王都へ行こうとして道の途中で襲われたならどうしようもない。北へ逃げるのも同じだ。ナルシアに逃げるのだって無駄かもしれない。


ならどうする。私の中では先送りにしていたが決断しなければ。


答えは出なかった。


私もどうかしているのだろう。決める前に言葉に出してしまった。町の人々も逃げる事には賛成だが、どこに、どうやって安全に逃げるのか、策を立てかねていた。


こんな時こそ何処からか立派な騎士が来て怪物を全て退治するのがお約束だが、その騎士たちの役割である王国からの救援は未だに来る気配すらない。


ジャーン君ではなく他の者を行かせていれば。


あんな老いた馬ではなくしっかりした馬を用意していれば。


後悔が絶えないがそんな現実からの逃避が何の足しになるものか。しっかりしろ。しっかりと気を確かに持つのだローバス。自分の身のあまりの恋しさに予測不明の事態に心が激しく動揺しているのだとしても、使命を果たせぬことに無念を感じているのだとしても。お前が平常心を保てなくて誰にこの事態を収束に導けよう。お前は年長者なのだ。その前にあの戦場を生き残った勇敢な兵士なのだ。あのいつなんどき仲間がアクセサリーとなるかも知れない東の地よりもこの身の安全のまだ保たれている現状で、何を心を壊しているのだ。情けない。


私は自分の心との対話の時間が少しずつ長くなっている事に気が付かない。


不満を他人に漏らし、余計な混乱を招くよりはましであるが、これでは身が持たない。考える時間が多い分だけ、あの東の地よりも心の消耗は早かったのかもしれない。


何か行動に移さねば、何か策を思いつかなければ。考えれば考えるだけ深みに嵌まっていった。


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