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クッタリアの魔物  作者: 赤異 海
19/59

19/聖ノートルニア時代書解読本②~恐るべき禁忌の世界~

イデオム王の黒い噂の一つに禁忌破りの汚名があることを読者の諸君はご存じだろうか。


聖ノートルニア時代書には数々の禁忌が記されているが、その中の一つが生と死の混在、生と死への冒涜である死霊術である。霊魂と肉体の繋がりについてはシュッツィー博士の解釈の魂魄論が最も一般的であるので参考までに一節を借りよう。



『時代書には生と死は循環するとあるが、ノートルニア教の書物ではより核心に迫る事が書いてある。人は死の際に己の魂を神の裁定の場に送り、その抜け殻である魄を大地に還すとある。我々は神の裁定を受けた魂と大地から借り受けた肉体の結合体であるということだ。』

(シュッツィー作「ノートルニア教信仰における生と死」から一部抜粋。)


お解りだろうか。我々が死に触れる部分は精神を支える魂だけである。抜け殻である肉体はハイル大陸と同化して生き続けるのである。


その神秘の循環を汚すものとして死霊術は多く書物でも語られている。ここではその多くの論に触れるつもりはない。ただ時代書の内容のみに触れるものとする。


時代書には殊更に多くの死霊術の内容が書かれている。時代書作成にイデオム王が深く関与していた可能性については前章で触れたが、このイデオム王が死霊術師であったとする悪評もそこを起因としたものである。他の禁忌に触れた部分が少なすぎるのだ。


その効力までは記されているが、どのような術式を用いるのか準備する物は何かまで細かに現代に残されているのはこの死霊術だけである。残念なことに我々人間に魔術の素養のあるものは海辺の一粒の砂のように少なく、その誰もが死霊術の再現に失敗しているのであるが、死霊術自体の存在の否定にはならない。


(中略)


ここに最も賢明な種族と自負する南の異種族の友人との会話のメモがあるが、その友人は生憎口が悪く筆舌に尽くしがたいので要約を載せる事を申し訳なく思う。



・人間が大地と同じくして生まれた火と岩の生物であるなら、その蘇生も構造を知れば容易いのではないか。

・東の異種族は土塊に意思を宿すという伝承があるが人間はそれと同じなのではないか。

・石像が意思を持ち生物を襲う現象が複数報告されている。

・他の種族では死者を生前のように動かすようなことは起こり得ない。


 会話内容はとても我々を愚弄した内容であったためそのほとんどを割愛させていただく。


この友人との対談で分かった事は他の地方や他種族では生物として認められてはいないが、我々の様な出自を持つ事象が数多くあるようである。


惜しむらくは彼らの知識はほとんどが既に失われた石碑や口碑であり、我々のように現存する資料を論趣として議論を重ねる文化的な種族としては心許ない。


しかし、大いなる可能性が発見できた。古今東西の様々な似たような事象を紐解いていくことで、死霊術の復活だけでなく、我々の起源であるノートルニアの神々との対話も不可能ではないと本書では付け加えておきたい。


また、魔術を用いない新たなアプローチとして既に有志の者たちが集まり、錬金術なるものの発展に日夜寝食を忘れて精を出している。来る日に神の国への引導の師として我々を導いてくれることを期待せずにはいられまい。


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