序章
ほう、と。
ため息をついてしまう。
目の前で次々と組み上げられていくパーツ。尖った頭、細長い胴、大きい翼が二枚、尾翼も。組み上がったら塗装されて、三角形の飛行機は完成した。
やっぱり……。
「……すごいなぁ」
うっかり声に出してしまう。
「はは。気に入ったかな?」
たった今デモ展示用のプラモデルを作ったばかりの店長さんは、わたしに笑いかけた。
「かっこいいです」
パッケージには「CONCORDE」と書いてある。
「コン……?」
「コンコルド。イギリスとフランスが共同で開発した旅客機だよ。この三角形の翼を使って、超音速で飛ぶんだ」
「超音速……って音より速いってことですか? すごいですねぇ」
店長さんは、乾くまで触っちゃダメだよ、と注意して、道具を片付けていく。
「でもいろいろ問題があってね、就航期間は30年にも満たなかった。確か墜落事故も起こしたんじゃなかったかな。……デザイン性は高いからプラモデルでは人気なんだけどね」
わたしは、その三角形の翼を、夢中になって眺めるのだった。
「コンコルド……」
……ってどういう意味なんだろう。
英語かな。それともフランス語?
「コンコルドはフランス語だよ」
びっくりして顔を上げると、店長さんは得意げに説明している途中だった。
「あ、あはは……、そうなんですか」
……心を読まれたのかと思った……。
「意味は『協調』だったかな」
協調……か。コンドルか何かだと思ったけど違ったのか。
ふと、店の外を見ると、もうそろそろ日が暮れそうだった。
「あ、わたしそろそろ帰ります」
「そうだね。もうこんな時間か。気をつけて帰るんだよ」
「ありがとうございました」
言いながら、店の外へと飛び出す。
日が落ちるまでに帰らないと大変だ。
沈みかけの太陽は、空を真っ赤に染めていた。
上を向いて歩いていると、足元がふらつくけど、なんだか楽しい気分になる。
ふらつく感じも浮遊しているみたいで大好き。危ないけど。
「空と翼、かぁ……」
むむむ……。
暗くなる前に帰ろう。