女性恐怖症の俺とヤンデレの幼馴染
皆さんこんにちは。俺、椿薫。ごく普通の高校1年生。だが、俺は○○恐怖症なん。それは――
「おーい。薫おはよー」
朝の登校時間。俺はいつもと同じように、7時半に家を出ていつもと同じ通学路を歩いていた。そこに俺の名を呼ぶ一人の女子が走って僕の方へと向かってくる。
「う、うわぁ! 来るな!」
「う、ひどい……」
俺の一言で、走ってきた少女は僕から約1.5mの所で急停止。 腰まである長い黒髪を後頭部らへんでツインテールと言う髪形にしている。スタイルは女子高生のそれ。一つ違うのは、胸が少し大きいくらい。そんな彼女の名前は、鈴桐つかさ。つかさは、漢字ではなく平仮名。
中学1年の頃に知り合った、俺の数少ない女友達。
「ご、ごめん」
「まあ、いつもの事だもんね。薫の女性恐怖症は」
そう。俺の○○恐怖症と言うのは、女性恐怖症。初めて会う女の人ですら、俺は怖いと思ってしまう。触られたらなんかしたら、一瞬でオーバーヒート。
だが、何も最初からこうだった訳ではない。幼い頃に、近所の女の子が原因で僕はこうなってしまった。
「つかさはさ、何でこんな俺にかまったりするの?」
「え!? だ、だってそれは……あの時からずっと……」
顔を真っ赤にして、手をモジモジしてどうも歯切れが悪い。
「うん。今日こそ言う。私ね、薫の事――」
「おー。朝から仲がいいですな、お二人さん」
「ん?隆二。おはよう」
「おう。おはようさん」
つかさが何か言おうとした瞬間に、俺の親友の坂本亮二の登場で不発した。亮二とは、つかさと同じく中学1年の頃に出会った。こんな女性恐怖症の僕でも、男ならなんともない。
「で、つかさ。何を言おうとしたの?」
「別に……」
さっきまでとは大違い。完全に冷え切った眼差しで亮二を睨みつけるつかさ。何でそんなに不機嫌なんですか?つかささん。
「そう。なら、早く学校行こうか」
「あ、ああ」
「そうね」
若干亮二がつかさにびびってるように見えるのだが、気のせいかな?
◇
「はーい。席に着いてくださいねー」
黒板の前では、いつもやる気にのない担任。西条光先生が立っている。 スーツの裾は出たままで、肩まである髪はボサボサ。眼が半開きと、本当に教師なのか疑いたくなる。
「お前等喜べ~。今日はこのクラスに転校生がくるぞ~」
「先生!その転校生は、男ですか?女ですか?」
西条先生に、右手を天井に大きく上げて質問する亮二。
皆の一番聞きたかったことを代弁して問う、その姿はよく言った的な眼差しで見守られている。
「気になるのか~。よし、なら答えてやろう~。女だ」
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」
青春真っ只中の男子生徒の雄たけび。唯一俺だけは喜ばなかった。 だって、女だなんて。女性恐怖症の俺にとっては逆だよ……。
それにしても、何故か斜め前の前の前の席にいるつかさが、俺をチラッと見たかと思ったたら、何故かほっとその大きな胸を撫で下ろす。
なんか、今日のつかさは変だな……。
「それじゃあ、入ってこ~い」
西条先生のやる気のなさそうな声とともの、教室のドアがゆっくりと開かれる。
そして、入ってきたのはとんでもない美少女だった。 日本人特有の黒髪をつかさ並みに長く伸ばして、それをポニーテールと言う馬の尾みたいに結んでいる。
そして、きめ細かそうな白い肌に身長は平均的。男なら誰しもが虜になりそうなそんな彼女を見て、クラスの男子共は飛び跳ねたりと大騒ぎだ。
だが、俺は違った……。足の振るえが止まらない。寒気がする。鳥肌が一気に全身を覆う。初めて会う女に対しては、やっぱり怖いけどここまで恐怖を感じる事はない……。
「福谷奈々(ふくたになな)と申します。小学生の頃までこの街で暮らしていて、三年と二ヶ月ぶりに帰ってきました。どうぞよろしくお願いします」
そう言って、彼女はニコっと微笑む。そのかわいらしい笑顔は、更にクラスの男子を盛り上げる事となる。
――ガクガクガク。心の底から恐怖が込みあげてくる。
一度微笑んだ後、彼女は僕と視線が合わさった瞬間に「二ィッ」と誰にも分からないように不気味な笑みを零した。
(福谷奈々……)
俺の女性恐怖症の原因。あの頃の恐怖は、僕の心の奥深くまで植え付けられている。
無理だ。今にも壊れてしまいそうになる……。
◇
休み時間。福谷奈々は転校生の宿命として、質問攻めに合っていた。彼女はそんなクラスメイトの質問に常に笑顔を絶やさず答える。
俺はと言うと、自分の机に突っ放してガクガクと震える恐怖に耐えていた。いつ、彼女が僕の所に来るか分からない。小学六年の頃に引越した彼女。3年の間に見違える程の美人になっていた。だが、僕には彼女が福谷奈々と言う事が一目見ただけで分かった。
彼女も、僕に漏らした不気味な笑み。覚えている気がする……。
「ねぇ薫」
「え!?ああ……つかさか……」
「大丈夫?すごい汗だよ?」
ダメだ。恐怖が止まらない。精神的にかなりきついぞこれは……。
「保健室行く?」
「そう、だな。保健室で一眠りしてくるよ」
確かに、このままでは授業どころではない。それに、保健室なら当分は安全なはずだ……。
そう思い、俺は席を立ち上がり教室を出ようとした瞬間。声をかけられた。
「あら、どこかに行くんですの?椿薫さん……」
おそるおそる後ろを振り返る。そこには、クラスメイトに囲まれている福谷奈々が俺に視線をロックしていた。
「福谷さん、椿君の事知ってるの?」
「ええ、私がこの街に居た頃に親しくさせて頂いてた、幼馴染ですもの」
「「「「おお~」」」」
男子一同は、俺に鋭い視線を。女子一同は、ピンク色の雰囲気を出している。
「俺、保健室に行ってくるから。じゃあ」
そう言って、俺はその場から保健室まで猛ダッシュする。 やばいやばいやばい。あいつやっぱり俺の事覚えてやがった。俺の楽しい学生ライフが恐怖に変るかもしれん。
でも、あいつ、どこか雰囲気が違ったな。性格変ったのか?俺は、そうであって欲しいと願う。
◇
「すみません。少し体調が悪いので、休ませてもらえませんか?」
「あら。椿君じゃないの。また、例の女性恐怖症?」
保健室の先生。久遠怜奈先生。俺の恐怖症の事は教師全員が知っている。 一時期は、男子高に行かせたほうがいいと言う事にもなったが、社会に出たときの事も考えて、学生の内から慣れるように共学に入った。
「じゃあ、奥のベットでいい?別に今は誰も居ないからどこでもいいんだけど」
「あ、はい。すみません」
「いいのよ。 あ、私はちょっと用事で、今から出張だけど一人で大丈夫?」
「大丈夫です。少し休めばいいと思うので」
「そう?じゃあ、ゆっくり休んでいってね」
そう言って、久遠先生は保健室を出て行った。
「…………」
静かだ。この時間が今は、天国にでもいるように感じる。
◇
キーンコーンカーンコーン。 チャイムの音で、俺は目を覚ました。ふと、時計を見ると既に11時を回った所だった。
「もう、4時間目が終わったのか……」
俺は、体を起こして教室に戻ろうかと思ったその時。ドアがガラっと開く音が聞こえた。
(嘘だろ……まさか……)
ゆっくりと俺のいるベッとに足音が近づいてくる。背中に冷や汗がツーと流れるのが分かる。 そして、シャっとカーテンが開かれた。
「薫?大丈夫?」
「はぁ、はぁ、はぁ。つかさか……よかった~」
「何がよかったよ。そんなに息荒らしちゃって。ちゃんと寝てなさいよ」
そう言って、つかさは俺のふとんとかけようとする。 ビクッと体が跳ねる。それを見たつかさは、ごめん……と言って俺から少し距離をとる。
「俺は大丈夫だから、早く学食に行かないと混むぞ?」
「分かった。ゆっくり休みなさいよ?今日はいつも以上になんだかしんどそうだから」
「ああ。心配してくれてありがとう」
「べ、別に心配なんてしてないけど……」
顔を真っ赤にして、保健室を飛び出すつかさ。何か、恥ずかしい事でもあったのだろうか?
つかさが、保健室を出て行き俺は再びベットに体を預けた。そして、もう一度眼を閉じて一眠りしようかと思ったその時。ボフっと、布団の上から俺は体に重みを感じた。
何かと思い、瞑った眼を数秒で開く。
「薫君。あの子は何?」
サーと血の気が引いていくのが分かる。そして、体中がガクガクと震えだす。冷や汗が止まらない。あの福谷奈々が馬にでも乗るかのように、俺の体の乗っているのだから。
「な……な……」
「薫君。もう一度聞くよ?あの子は何?」
俺の上に乗ったまま、奈々は顔をズイッとキスでもしそうなぐらい近づけてくる。
やばい。ただでさえ、女にこれ程密着されたら意識が飛ぶかもしれないのに、相手が俺の女性恐怖症の根源とあれば尚更やばい。
「つ、つかさは、お、俺の友達…だ……」
「ふ~ん」
そう言って、奈々は俺から顔を引き離す。俺は今にも意識がどこかに飛んでいってしまいそうになっていた。 だが、それを奈々は許さない。
俺の腕の皮膚を思い切りつねって、痛みで俺を覚醒させている。
「ねぇねぇ。薫君は私が帰ってきてうれしい? 私は帰ってきて、薫君に会えたからもの凄くうれしいよ? 薫君も私と同じだよね?ね? どうして答えてくれないの? そっか。私と再開して、嬉しすぎて言葉が見つからないんだね。もう、薫君たらそんなに私の事好きなんだ。恥ずかしいな。でも、私も薫君の事好きだよ。薫君の為なら私何だってしてあげる。そうだ、今からキスしようよ。あの時は、薫君が恥ずかしがって出来なかったもんね。でも今はもう高校生だし、薫君もうれしいでしょ?あ、でも私ファーストキスだからそんなに上手くないの。薫君もそうだよね?薫君が、私以外の女の子とキスなんてしないもんね。そうだ。なんなら、キスが終わったらしちゃう?恥ずかしいけど、薫君が望むなら私は全然いいよ? 保健室でなんて、ちょっとドキドキするね。でも、保健室の先生は今出張中なんだよね。だったら別に心配する事ないかも。あれ?でも5時間目が始めるまでに終わるかな?そうだ。今日はサボっちゃおうか。転校初日からサボるのなんて、薫君の為ならなんとも思わないよ?だって、私は世界。宇宙で一番薫君が好きだから。薫君以外の人なんてどうでもいいの」
俺は、限界に近かった。こいつ、昔と何も変ってない。俺が、こいつをこんなにしてしまったあの時から何も変ってない。朝のあれは、猫被ってたのか。流石に、皆の前ではこの性格は出さないだろうが、俺が言ったら何も気にしないだろ。
(やばい。つねられている所の感覚が無くなっていく。ああ、俺落ちるなこれ……)
俺は、奈々の言葉に答えないまま意識を失った。
◇
「ねえ、薫君?寝ちゃったの?もう。恥ずかしがりなんだから。でも、これからは毎日薫君と会える。私すごく嬉しいよ」
そう言って、一度薫の心臓の音を聞くかのように顔をつける。
小学六年の時、親の都合で転校する事になった奈々。勿論親には物凄く反対したが、まだ幼い子供。一人残すのは心配な奈々の両親は、無理矢理にでも奈々を連れて行った。
転校先では、とにかく冷え切っていた。クラスメイトが話しかけても、薫君、薫君、薫君とずっと呟いていた。そのせいで勉強も手につかない。そして、中学卒業をまじかにした奈々は、とにかく必死に勉強した。そして、中学三年の頃には学年一位にまで上り詰めた。
それも、高校生になったら一人暮らしが両親に認められるからだ。 つまり、薫のいる高校に転校する形で入試に引っかからないために勉強した。 それ程までに、奈々は薫の事が好きだった。だが、奈々は普通に好きの限度を超えていた。 それも、小学生の頃に薫が原因で、こうなってしまった。
薫も、そんな奈々が原因で女性恐怖症となってしまった。
◇
昔、二人の間には色々とあった。 これは、そんな二人の関係を描いた物語………。
ども。ヤンデレってのを、上手く書けていたでしょうか?
てか、実際にこんな人っているんでしょうかね?いたら色々とやばいですが・・・
一応、連載として書きました。でも、なんだか自信がなくて・・・・出来れば感想などを頂ければ、嬉しいです。ではでは~♪