72ニルス国で(スクト)
そんなころニルス国ではアレクが国王になりなんとか国の立て直しをしていた。
各領地も貴族たちもアレク国王の元一致団結して国の再建に尽力していた。
チェスナット辺境領もエバンが留守でラヴァードも留守の間、執事のロバートたちが領地管理を担っていた。
チェスナット辺境騎士隊長代理のタンも大忙しだったし新米の俺も奮闘していた。
そんなある日フレイシアの故郷であるグラマリンの聖教会から連絡があった。
聖教会にはフレイシアの父の後2番目の神官になるレガス神官が派遣されていた。
彼はローダン・タンジールが残していた遺品の整理をしていて気づいたらしい。
その時にはすでにフレイシアがキアラルダの聖女となっている事、キアラルダの王女であることも知れ渡っていた。彼女たちがこの聖教会で暮らしていた事も。
その彼女の母親の手紙を見つけたのだ。これはフレイシア宛てになっていて彼女が20歳になったら渡して欲しいと書いてあった。
義父のローダンはすでに亡くなり手紙はそのまま彼の遺品として残っていたらしい。
これは大変だと騎士隊に連絡が来たってわけで。
本当なら聖教会がキアラルダ帝国の聖教会に知らせればいいのだろうが何しろキアラルダ帝国には恨まれている。こんな大切な手紙を利用でもされたらそれこそ大事だと辺境騎士隊に連絡があった。
それを受け取りに俺が向かう事になった。
王女に残されていた母の手紙。何やら意味深で、いや、そうではないのかもしれないがレガス神官には、何かあるのかもという予感めいたものが浮かんだと言われた。
俺自身もその手紙に触れると何かがある気がした。おかしいよな。俺には魔力なんかないのに。
でも、一番最初にフレイシアさんに会った時から彼女は特別だって思った。好きとかそういうんじゃなくて。
とにかくこの手紙をフレイシアさんに届けなければならない。そんな義務のような気持ちが俺の中に沸き上がったのは事実だ。
そして俺はメイズ辺境領に向かった。執事のマリスさんが話を聞いてすぐに騎士隊に連絡をしてくれた。
メイズ辺境領では鷹を使って連絡が取られた。手紙は声を聞けるらしい。
すごいなと思った。これじゃニルス国が太刀打ちできるわけもないのにとも。でも、ニルス国も何とか立ち直ろうと頑張っているってフレイシアさんに伝えたいとも思う。
「今返事を待っている所だが、スクト隊員には転移で向こうに行ってもらうかも知れんな。行き先は帝都カラルーシにある宿。心配ない。君は手紙を届けたらすぐに転移でこちらに帰れる。その代りメイズ辺境伯にこの手紙を届けてもらいたい」
「わかりました。必ずメイズ辺境伯に届けます‥‥あの、少し向こうにいることは出来ませんか?」
「それは無理だろう。あっちでもかなり厄介な事が起きているらしいからな‥君まで巻き添えになっては申し訳ない。もうしばらく待ってくれ。返事が来て時間がはっきりしてから転移してもらうからな」
「はい」
俺は初めての転移に緊張した。旨く対応できるだろうか。いや、そんな事を言ってる場合じゃないだろ。
チェスナット辺境伯やラヴァード副隊長を見習わなきゃな。
俺はぐっとこぶしを握り締めた。




