69プリンとミルクココア
私は急いで帰って出来上がったプリンをエバン様の元に持って行った。
プリンとサンドイッチを籠に入れミルクココアは水筒に入れた。だって転移で零れるかもって思ったから。
もちろんキアに様子を見て来てもらって見張りがいないって確認してエバン様にも私が行くことを伝えてもらった。
でも、行けたのはもう夕方近かったけど。
「エバン様」
転移して姿を消したまま彼に声をかけた。
ちょうど夕食の前で見張りは後退の時間らしいので誰もいなかった。
エバン様は怪我もしていない。良かった。また拷問にでもと心配していたけど。
「フレイシア、こんな所に来てはだめだ。キアにもそう伝えるように言ったのに」
「ごめんなさい。でも、これだけ‥」
私は姿を現して籠と水筒を渡す。今日は水玉柄のワンピース。彼にもらった髪飾りも付けている。
「プリン?これを?」
いきなりエバン様の顔がぐちゃぐちゃになって行く。
「ごめんなさい。私なにかいけない事を?」
「ちがっ、うれしいんだ。危険を冒してまで‥俺の為にプリンを‥フレイシア」
いきなりがばっと抱きしめられる。
ちょ、籠が。プリンが。
私は両手を広げて必死で籠と水筒を死守する。
「え、えばん様‥プリンが」
「すまん、つい‥」
「いいんです。私も喜んで頂けてうれしいです。さあ、誰か来るといけませんから」
目尻に皺が寄って頬が緩んで。またぐちゃぐちゃな顔。でも、こんな顔も好き。
エバン様はプリンを掬うとニマニマしながら口に運んだ。二口目は私に差し出され「あ~ん」私はさっと口を開いてひな鳥みたいに彼からプリンを貰う。
「もぐもぐ、えばんさまが食べて下さい。これも」
水筒からミルクココアを注いで差し出す。
「これは‥ミルクココアか?」
「きらい?」
「大好きだった。でも、大人になってからは口にしてないな」
「みんな大好きだって、イリもラヴァード兄様もラキスさんもシグスさんもいました‥「俺だけ飲んでなかったのか?」
ショックな顔をされて‥あっ、て。
「そんなつもりじゃ‥だってあの時エバン様は捕まっててみんなが私を助けてくれて‥それで」
「すまん。そんなつもりじゃない。でも、今日は俺だけだ」
「ええ、エバン様だけに作って来たから」
ここは、みんなの分もいっぱい作るとは言えないと。
ニッコリ笑顔でエバン様を見つめる。
「ずる。‥うまいな。何だかフレイシアを味わってるみたいだな。プリンもモルクココアも‥」
「もう、え、えばんさまったら!‥それで、いつごろ出れるんでしょうね。エバン様のせいじゃないってもう、みんなわかってるはずなのに‥ああ、それだ。ニルス国から正式な交渉人としての書簡が届いたって兄様が言ってましたから」
「そうか良かった。これでもうすぐ出れるはずだ。でも、国と国の事は色々とあるからなすぐにってわけに行かないんだろう。フレイシア、こんな事になってごめんな。俺がきちんと正式な手続きをして来れば良かったのに‥フレイシアに会いたくてそればかりでやり方を間違った」
「ううん、急いで会いに来てくれた。すごくうれしかった」
(フレイシア、もう、戻った方がいいわ)
キアの声がした。
(あっ、うん、わかった)
「キアが戻った方がいいって」
「ああ、旨かった。ありがとうフレイシア。元気を出してもうすぐ出れるはずだから」
「ええ、こんな事してるのがばれたら大変ね。あっ、サンドイッチ食べて、じゃあ‥‥そうだ。エバン様に加護を掛けておくから」
「そんな心配はないだろう」
「ううん、なんだかそうしたい気分なの。いいでしょう?」
それはいきなりだった。何だか胸騒ぎがしてキアがあの時言ってたことを思い出した。あの時も加護のおかげで無傷だったって言った事を。ふっ、おかしい。でも、少しでも気持ちが収まるならいいかなって。
「ああ、うれしいよ」
手の平から光の粒子がエバン様の中に注ぎ込まれた。
「これで良し!じゃあ、行くね」
「ああ、フレイシアも気をつけてな」
私は籠にプリンの入れ物や水筒を持って転移した。




