62その婚約待った!
私達はすぐに婚約をしようと聖教会に書類を提出した。
だが、マクリート大神官から待ったと言われる。
どうやら私がキアラルダ帝国の聖女だと言う事で他国、それもニルス国の全国王の弟との婚姻に反対の声が上がっているらしい。
反対しているのは特に王妃殿下とマクリート大神官だ。
「困ったわ、私達どうしたらいいの?」
「いや、ここは慎重に話を進めた方がいい。俺はエバンがいい人間だってわかってるから反対はしないが、キアラルダの人間からすればまたニルス国が聖女を連れ去ろうとしていると思われても仕方がないだろう?」
ラヴァード兄様がエバンにそう話を振る。
「まあ、それを言われるとなぁ。迂闊だった。俺がここにいる事も誤解を与えるかもしれないな。どうも、フレイシアの事となると周りが見えなくなってしまうからな。メイズ辺境伯に迷惑が掛からなければいいが‥この話は一旦置いといて俺はしばらくニルス国に帰った方がいいのか?」
「そんな‥」
私はせっかく思いが通じ合ったのに離れ離れになるのが嫌だった。
「フレイシア。ああ、なんて可愛いんだ。俺と離れるのが嫌なのか?」
エバン様が蕩けるような微笑みを浮かべて私を抱きしめる。
彼の温もりに包まれるとなおさら離れたくなくなる。
ぎゅっと彼に抱きついて胸に顔を埋める。
「お前ら‥俺もいるって忘れてないか!ったく‥とにかく、お互いの国が納得できるように調整をして行かないとな」
「ラヴァードにならそれが出来るよな?お前、王になるんだろう?」
「そんなの‥クリスだってそのつもりなんだ。俺がいきなり出張っても貴族たちの賛同も必要だろうし、勝手に出来る事じゃないだろう」
「まあ、そりゃそうだな。悪い、つい‥俺も今ニルスに正式な交渉人としてもらうよう頼んでいる所だ。返事が早く来ればいいんだが‥」
「ああ、そうなればおかしな誤解もなくなるかもしれんが‥ああ、エバン。言いたいことはわかってる。でも、帝国民の気持ちもあるし、ここは慎重にやらないとな」
「ああ、仕方がない。でも、フレイシア。俺の気持ちは何があっても変わらないからな。結婚がいつになろうと俺はいつまでも待つから」
「ええ、私も自分の立場を考えるべきだった。形式的な事より気持ちの問題ね。エバン様、私も同じ気持ちだから」
もうエバン様、好き。好き。好き。
「ああ、絶対に大丈夫だ。安心しろ。それでなんだが‥フレイシアに渡そうと思っていたんだが‥いや、その‥これは母が元国王から貰ったものなんだ‥‥‥いや、新しいのが良ければ」
エバン様がもぞもぞ品がポケットから小さな箱を取り出した。
「ううん、うれしい。お母様の形見なんでしょう?」
エバンが小箱を開いて差し出した指輪は金色のリングにスピネルが輝いている。ルビーよりも希少で何より濃い赤。私の瞳と同じ緋色のように。
「ああ、母はダイアモンドや紺碧色の宝石を好まなかった。それで国王がこれをって」
「お母様って未来が予測できたのかも‥」
「ああ、俺もそんな気がした」
エバン様が私の手を取って指輪をするするとはめてくれた。
「きれい‥」
「フレイシアの方がずっときれいだ。ずっと一緒にいたい‥離したくない‥」
「エバン様ったら」
どんな贈り物よりうれしい。また、好きだって思いが増える。
「ああ、俺はわがままになったんだ。フレイシアのせいだぞ。俺は割と子供の頃から我慢強い子だった。大人になってからも自分のわがままは言った事はなかった。でも、フレイシアの事になると我慢が効かなくなる」
「うれしいです」
私は気持ちを堪えきれなくて背伸びをして彼にキスをする。
互いに見つめ合って、もう、ほおが緩みっぱなし。
その日の午後、王妃殿下からお茶の誘いがあった。
メイズ辺境伯、ラヴァード兄様、エバン様、私と一緒に話がしたいと。
ラヴァード兄様、エバン様、私とで王妃の腹を探る。
「エバン様との婚約の事ですかね?」
当然そう考えるのが普通だ。
「まあ、そんなところだろう。だが、俺たちの機嫌も取っておくべきだと思ってるんじゃないのか?」
「俺は警戒されてるんだろうな。こいつ聖女をキアラルダから連れ出す気かって、なぁ、そんなつもりは全くないんだが、まあニルス国がやって来たことを考えたら無理もないよな」
エバン様は頭をがしがし掻きまわす。
「でも、それはエバン様のせいじゃないわよ。私も聖女としてキアラルダ帝国の安泰に努力するって言うわ。でも、ニルス国の人たちも放ってはおけないと思う。だからそのことを一度きちんと話した方がいいわよ」
「まあな、それに俺が王になるかもしれないって王妃も気が気じゃないんだろうからな。クリスも同席して気持ちをはっきり聞いた方がいいな」
「クリスって言えば、エバン様を襲った賊はわかったの?」
「いや、闇ギルドで雇われた奴らだろうって話だが、そいつらを特定するのはかなり難しいらしいからな。指示を出した奴の事もそいつらが口を割らない限り難しいだろうな」
「もう、一体誰なの。そんな事をやらせる人って、セレストは捕まったんだし」
「まあ、一番可能性があるのは王妃だろうな」
「王妃が?まさか」
「いや、案外子供を守るためなら母親は何でもするって言うからな」
「明日のお茶会大丈夫なの?」
「まさか、全員がいる前で毒を盛るなんて出来ないだろう。もちろん護衛は連れて行くしな。安心しろフレイシア。それにお前に手を出す事は絶対にないさ」
「私よりエバン様が心配よ兄様」
「フレイシア、それは男としてちょっと情けないだろう。そこはお前は絶対に守るって言わせて欲しいんだが‥」
エバン様が言葉に詰まる。
「ええ、頼りにしてる」
「ああ、任せろ!」
彼は誇らしげに胸をバン!って叩いた。
もう、エバン様ったら。ほんとにあのジェリクと血繋がってるんだよね?お母さんが良かったのかな?
「どうしたフレイシア?」
「ううん、いい男だなって」
「ブ、ハッ!~~~~~~」




