60もう、死ぬかと思ったぞ!(ラヴァード)
3日前。俺たちが騎士隊の牢に着いた時にはエバンもフレイシアも倒れていた。
二人とも意識がない。
俺は心臓が止まりかけた。
急いで二人を運び出し王城の部屋に運び込んだ。王族専用の医者を呼びすぐにそれぞれの部屋で治療を始めた。
どうやらエバンは自白剤などを投与されたりして拷問を受けたらしい。
拷問と言っても殴ったりするものでなく一番質の悪い精神魔法ではないかと思われた。
だが、フレイシアがどうしてあそこにいたのかはさっぱり分からなかった。
彼女は聖教会でイルやフォートの警護の目を盗んであんなところに行くとは思えない。
「とにかくエバンは闇ギルドのやばい奴らの仕業でしょう。でも、そいつらを捕まえるのは無理です。それよりそいつらを使っている奴が誰か突き止めることが一番やるべき事です!」
「ああ、すぐにガビアンに頼もう」叔父は急ぎ出て行った。
二人の意識はまだないまま。だが、命に別状なないだろうと言われた。
やっと、ほっと息をつく。が。
「クリス。お前何か知ってるだろう?エバンを捕らえたのはお前だ。まさか、お前が裏組織の連中に指示を出したのか?」
「フレイシアがどうしてあんなところにいたんだ?まさか、彼女まで巻沿いにするなんて!!」
俺たちは手当てを受けるエバンとフレイシアの横で大声でクリスを突き上げる。
「いや、ラヴァード。誤解だ。私は何も知らない!」
そう言うが目はウロウロ泳いでいる。
はっ!どうせこいつが母親にでも泣きついたんだろう。あの王妃が裏で手を回してエバンを。そしてフレイシアにまで。クッソ~!!
「うっ‥」
その時エバンが意識を取り戻した。俺はエバンの襟首をつかんで「エバン!エバンしっかりしろ。おい!」と揺する。
「ラヴァード様、彼は重病人ですぞ!」
医者から止められてエバンの襟首を離す。
「ここは?」
やっとエバンが気が付いたらしくベッドの上できょろきょろと辺りを見回す。
すぐにでもフレイシアに何があったか問いただしたいが、彼も戸惑っているのは明らかだった。
落ち着け。急がば回れだ。まずはエバンを落ち着かせなければ。
今度はゆっくりとエバンに声をかける。
「エバン気づいたか。ああ、ここは牢じゃない。王城の中の一室だ。お前は精神魔法で酷いことをされたらしい。覚えているか?」
「うん?‥‥牢に連れていかれて‥あれ騎士ではない。黒ずくめの男達に何やら魔法をかけられたと思う。きっと俺はすべて洗いざらい喋ったんだろう。それからどれくらい時間が経ったか‥また、そいつらが現れて、今度は気分が悪くなって頭が割れるように痛くてそのうち何も考えられなくなって‥その後のことは何も覚えていない」
「そうか‥エバン、もう一度思い出してくれないか。実はお前の横にフレイシアも倒れていたんだ」
「フレイシアが?」
エバンが驚いて起き上がる。
「ああ、二人は折り重なるようにして意識を失っていた。考えられるのはお前を助けようとフレイシアが牢に行ったとしか思えない。今の話からするとお前はかなりやばい事になっていたはずだ。最初は自白効果のある薬でも盛られたかで次は精神魔法でやられたんじゃないかと医者も話している。でも、今は元に戻って思考もはっきりしている。それはフレイシアが何かの手段を使ってお前を助けたとしか考えられない。だろう?」
「‥‥フレイシアが俺の為に?あんなに怒っていたのに?そんなバカな。それにどうやって牢に入った?いくら何でも‥」
その時声がした。
(私はキア。月の精霊)
(ああ、キア。君は知ってるのか?フレイシアがどうやってあそこに行ったのか。何があったのかを)
(ええ、知ってるわ。フレイシアは色々な魔力が使える。例えば転移。浄化だって‥でも、エバンの状態はすごく悪かった。それでもフレイシアは絶対助けたいってそれで魔力をものすごく使ったの。それで、レオン様やキアーナ様も助けてくれたのよ。だからきっと大丈夫な‥はずなの)
キアの声はか細かった。フレイシアの意識が戻らないことをすごく心配しているのだとすぐに分かった。
(キア、教えてくれたありがとう。君がいてくれていつも感謝しているよ。フレイシアは絶対に大丈夫だ。だって神様が助けてくれたんだろう?だからもうすぐ意識も戻るはずだ。キア、そばで見守っていてくれるかな?)
(ええ、ずっとフレイシアに精霊の力を与えているわ。彼女を死なせたりするもんですか!)
(ああ、キアありがとう。フレイシアを頼む)
(ええ、任せて)
そしてそれから3日フレイシアは眠ったままだ。
エバンは寝る間も惜しんでフレイシアに付き添っている。
クリス?あいつは毎日見舞いに来ているがエバンがすぐそばで張り付いていてフレイシアの手さえ握らせないから
「フレイシア、早く良くなってくれ。待ってるよ」なんて言葉だけ掛けるとそそくさと帰って行くらしい。
エバンはそれさえも嫌みたいだが、何しろクリスはもうすぐ王になる相手。そう邪険にも出来るはずもないからな。
だが、もし俺が王になれば‥
いや、俺は王になんかなる気はない。




