57天狼と会う(クリス)
そして天狼からつなぎが来た。
その男は漆黒の瞳だった。音もなく私の部屋に忍び込んで来た。男は私の前に傅く。目以外は真っ黒い頭巾で隠していて分からない。
「あの方より指示を受けて参りました。最初にお話しておきますが我らに関する事はいかなる場合も誰にも漏らされない用お約束頂きたい」
「もちろん約束する。お互い知られたくない秘密を共有するのだからな」
男は大きくうなずいた。
了解したという意味だろう。
「それで、ご用件はどのような事でしょう?」
「帝国騎士隊に捕らえているある男を調べて欲しい。男の素性、生い立ち、目的などすべてだ」
「わかりました。すぐに取り掛かりますか?」
「ああ、なるべく急いでもらいたい」
「わかりました。今夜中にすべてを明らかにして見せましょう。では、失礼する」
それだけ言うと男は風のように消え去った。
転移か。かなりの魔力の持ち主と見える。さすが天狼。
天狼という集団がどこにいるか。どんな人間がいるのか。何人の集団なのか。すべてが謎で誰もそれを知る者はいないと言われていた。
そして明け方天狼から知らせが届いた。
天狼の使いの真っ黒い鳥が手紙を届けた。その声を一度聞けば消えてしまう手紙だ。
『男はニルス国のエバン・チェスナット辺境伯。アダム国王の弟で母親は平民すでに死亡。
エバンは20年前チェスナット辺境伯として辺境に、ずっと辺境にいたがおいであるジェリク殿下が婚約者だったフレイシア・タンジールを王都から追い出しチェスナット辺境に送った。
エバン・チェスナットは王都からフレイシアに近づき辺境に到着後その夜には一夜を共に過ごしたと白状した。
互いに思い合っておりいずれは結婚も視野に入れていたが王都の危機でフレイシアとの間に誤解が生じ、月光水晶の破壊でフレイシアがキアラルダに来たことを知り3週間ぶりに尋ねて来たと判明した。
いずれも催眠自白強要魔法のため嘘はない物と思われる。』
俺の心に憎しみ、怒り、憎悪が沸き上がる。
こんな気持ちになったことなど生れてこの方なった事がないほど。
これが嫉妬という気持ちか?
フレイシアと恋仲なのか?あの男が。おっさんだぞ。フレイシアはあんな男がいいのか?いや、違う。フレイシアは無理やり純潔を奪われあの男に騙されているんだ。そうでなかったら‥
それに相手はニルス国の王弟。また、聖女を奪う気かもしれん!
くそぉ、そうはさせるか。
私はすぐに返事を書いて鳥を送り返した。
返事にはその男は殺してはならないが、精神魔法で心をぐちゃぐちゃにしてくれと頼んでおいたのだ。二度と日の目を見れないようにと。
それが今日になってメイズが現れセレストが断罪されラビウドまで現れるとは。一体どうなってるんだ?
それよりエバンはどうなっただろう?
困ったぞ。私がそれを命じたとは死んでも言えない!!




