52救出(ラヴァード)
俺たちは四方向に別れてフレイシアの行方を追った。
だが、それらしい形跡もなく時間だけが過ぎて行った。
3時間ほど経って一度4人で集まる事にする。
フランニークでは遠すぎるので聖教会の前に集まった。
「西に向かいましたがそれらしい形跡はありません」ラキスが報告した。
「東も同じです」シグスが。
「北も見つかりません。そんな遠くには行ってないはずだと思うんですが‥私が付いていながら!!」イリが悔し気に歯ぎしりする。
「ああ、こっちもそれらしい形跡はない。困った。朝になる前に見つけ出したいが、こうなったらメイズ辺境伯とマクリート大神官に頼むしか‥」
俺は頭を抱える。
その時だった。
(ラヴァード聞こえる?)
小さな声が俺の耳孔に響いた。
「うん?今、俺を呼んだか」
「「「いえ」」」
(ラヴァード。私はキア。あなたの頭に直接話しかけてるの。聞こえたら声は出さなくてはいいから、頭の中で返事して)
「キアからコンタクトみたいだ。みんな静かにしててくれ」
3人が驚いた顔をしたがすぐにうなずいた。
(ああ、キア聞こえる)
(良かったわ。時間がないからすぐに話を始めていい?)
(ああ、そうしてくれ)
(フレイシアはこの近くの貴族の屋敷に連れ込まれたわ。でも、私は貴族の名前がよく分からないから‥でも、大きな屋敷ではなかった。別邸みたいな感じ。彼女は地下室に閉じ込められてるの。どう?わかりそうかしら?)
(ちょっと待ってくれ)
「キアが言うにはこの近くで別邸みたいな屋敷にフレイシアは連れ込まれたらしい」
みんなに尋ねる。
「別邸と言えば、すぐ近くにフォンタール伯爵の別邸がありますよ。羽振りが良くなって大きな屋敷を構えましたから今はほとんど使われてないはずです」
シグスがすぐに気づいてくれた。
「フォンタール伯爵か。セレストがやりそうな事だな。疫病もほとんど終息したし領地の方も回復のめどが立って来た。そうなるとフレイシアが邪魔で仕方がないと言う事か‥クソ。おい、すぐにフォンタール伯爵の別邸に行くぞ!」
俺はすぐに乗り込む算段をつけるとキアに尋ねた。
(キア聞いてるか?)
(ええ、聞いてるわ。場所が分かったみたいね。それで、どうすればいいの?)
(さすがだな。じゃあ、キア。フレイシアには騒がずじっとしているように言ってくれ。必ず助けに行くから心配するなと。頼めるか?)
(ええ、任せて。可愛い妹ですものね。お兄様が助けに来るって言ってもいいかしら?)
(ちょ、どうしてそれを知ってる?)
(私は精霊よ。それくらいお見通しよ。でも、余計な事はしないって決めてるから言ったりしないわ。安心して。ちょっとからかっただけ。うふっ。じゃあ、気を付けて)
(ああ、助かった。フレイシアのそばにいてやって欲しい。頼んだぞキア)
(ええ、でもくれぐれも気を付けて)
(ああ、わかってる)
「よし、手はずを決めよう」
俺たちはフォンタール伯爵の別邸に忍び込む。
まずはシグスが影魔法で姿を消して中の様子を探った。
真夜中ということもありフレイシアを攫った奴らは酒を飲んでぐっすり眠っているとわかった。
シグスが中から鍵を開けて4人が侵入。
二手に分かれる。もちろん俺は真っ先に地下に向かいフレイシアを救出に。
「フレイシア無事か?」
「ラヴァー「しっ!さあ、静かに音をたてないように」」
俺はフレイシアの拘束を解いてそっと抱き上げる。
「歩けます」小さな声で言うフレイシア。可愛すぎる~!
「いいから黙って」俺はここぞとばかりにフレイシアを堪能する。
兄として妹を守ると言う役目を果たすまで。
まあ、ただシグスやラキスに触らせたくないと言う気持ちもあるが。
抱いたまま別邸から連れ出してそのまま聖教会の中に走った。
フレイシアの部屋ではなく、もっと奥まった部屋に連れて入った。
「ここまで来れば大丈夫だ。怪我はないか?どこか痛むところは?」
「あ、ありがとうございます。大丈夫です‥あの‥ラヴァード副隊長、もう下ろして頂けませんか」
見れば頬を染めてもじもじとするフレイシア。
グフッ!悶絶。
「ぶはっ!いや、すまん。これは不可抗力で、ああ、すぐに下ろすから」
後ろからイリが「もう!ラヴァード様狡いですよ。フレイシア様をひとり占めなんて、許せません。恐かったでしょう?もう、大丈夫です。これからは私がずっとそばにいますから安心して下さい」
「イリ、あ、ありがとう。でも、あなたに迷惑はかけれないわ。そんなずっとそばを離れないって無理だもの」
「ほら見ろイル。フレイシアは迷惑だって言ってるぞ。フレイシア、ふたりで交代で警護に当たる。なっ、これなら問題ない。だから安心しろ!」
フレイシアが後ずさる。
「そんな。ご迷惑はお掛けするわけには‥それより、私の杖が部屋にあるか見て来てもらえませんか。私、ずっと肌身離さず持ってたんですが、攫われた時ほんの少し杖のそばを離れていて‥」
「ああ、それでしたらこちらに」
イリがさっと懐から杖を取り出した。
フレイシアが満面の笑みを浮かべる。
「うわぁ、イリさん。すごいです。私悪い奴に取られてたらどうしようって‥ありがとう」
フレイシアがイリに抱きついた。
イリは抱きつかれたまま硬直して「い、いいんです。お役に立てて良かったです!」
お前ばっか狡いぞ~!
俺は心でつぶやいた。




