50フレイシア攫われる(フレイシア・イリ)
私はあれから眠ったらしい。
目が覚めるともう夜になっていてクリス殿下もかなり前に帰ったとイリから聞いた。
「熱、下がった見たいですね。良かった。何か召し上がった方がいいです。フレイシア様何か欲しいものはありませんか?」
イリが尋ねた。
「そうね‥プリン」
不意にエバンと一緒に食べた時の事が思い出された。
「プリン?ですか。調理場に行ってみますがきっとプリンはないかと‥代わりに果実水や果物をお持ちしましょう。それから」
「ええ、ごめんなさい。プリンはいらない。サンドイッチでいいわ」
慌てて思い出と一緒にプリンを否定する。
「はい、食欲が出たなら良かったです。すぐにお持ちしますね」
イリは嬉しそうにして出て行った。
食事をしたらお風呂に入りたい。
そこでやっとエバンが捕まった事を思い出す。もう、私ったら何してるんだろう。
クリス殿下には押されっぱなしのくせに、エバン様の事となると気持ちを押し殺してしまう。
でも、考えずにはいられない。エバン様はどうなっただろう?今頃牢に入れられて?まさか拷問とかされてないかな?
(キアいる?)
(うん、ここにいるよ。顔色良くなったみたい。良かった)
(ごめんね心配かけて‥キア、エバン様がどうしてるかわかる?)
(騎士隊の牢にいるみたい。元気はないけど怪我とかはしてないみたい)
(‥そう、それなら良かった。そうだ!キア、エバン様と話しできるのよね?)
(ああ、あの時はちょっと彼に同情もしてたからつい話しかけたら聞こえたみたい)
(それって今も話せるって事?)
(きっと話せると思うわ。どうかしたの?)
(エバン様に何をすればいいか聞いて欲しいの。私で出来ることがあれば誰かに取り次ぐとか必要なものを用意することだって出来るかも知れないでしょう?)
(フレイシア、やっぱりまだ彼が好きなの?)
(そ、そんなんじゃないわ。私に会いに来て捕まったから、それに彼はニルス国を救うためにいろいろしてくれたって聞いたし‥そんな人がひどい目に合うのは気が悪いっていうか‥)
(もう、はっきりしなさいよ!エバンが好きなんでしょう?)
(そりゃ好きだけど‥でも、事情が変わったのよ。私は聖女だしキアラルダの王女みたいだし‥)
(それがどうしたの?エバンはあなたが平民だった時でもあなたが好きだって言ってたじゃない!それにお互い王族同士なら何の問題もなくなったって事かもよ)
(あっ‥)
私ったら何を勘違いしてたんだろう。それに何にこだわっていたんだろう。
エバン様が会いに来てくれた事でずっとあった心のわだかまりは全部じゃないけど彼との距離が近付いた気がした。
寧ろ彼がやっぱり好きだってはっきり気づいたくらい。
急いで立ち上がると鏡台の引き出しからエバン様がくれた髪飾りを取り出す。
金と銀が仲良くまじりあって作られた髪飾りを両手で握って胸に抱く。
不意に黒い影が近付いて口を塞がれた。
「‥うっ、ぐぅ‥」そのまま何かをかがされたのか気を失った。
*~*~*
「フレイシア様?どこです。食事をお持ちしました」
部屋にいないので洗面台を見て来る。だが、フレイシア様がいない。
床にはあの大切にしている髪飾りが落ちていた。
おかしい。
そう思った矢先。窓にシュテが現れた。窓を開けてシュテを入れる。
「シュテ、ちょっと待って」
ラヴァード様からだ。
『イリ迂闊だった。フレイシアは無事か?もしかしたらフレイシアが狙われるかもしれない。セレストに取って彼女は金のがちょう。油断するな。俺たちもすぐに行く』
もう、遅いですよ。
すぐに返信を書こうとしていると窓からラヴァード様達が入って来た。
「フレイシアは?」
「連れ去られたみたいです。ほんの少し前の事だと‥にしてももっと早く連絡が来てれば彼女のそばを離れなかったのに!」
「直ぐに近くを探そう。まだそうと奥に入ってないはずだ。急ぐぞ」
「あの、ラヴァード様。辺境伯がお越しなのでは?」
「こんな事言えるか?殺されるぞ。いいから一刻も早くフレイシアを探し出すんだ!」
「ですね。了解です」
私達は四方に別れて捜索を開始した。




