38ラヴァードの正体
ラキスとスクトが帰って来た。
実は俺は数年前からメイズ辺境伯と連絡を取り合っている。これは隊長も知っている事だった。
俺はキアラルダ帝国の王子ラビウドだ。
だが、エバンやみんなには隠している。
エバンに保護されるまで俺は乞食のような生活をしていた。何も望まず流されるまま悪い事も平気でやって来た。
だが、彼はこのままでいいのかと俺に居場所を与えてくれた。きちんとした生活を送るようになるとこれまでの生活を立て直そうと思い始めた。
そして5年後20歳になった時俺はメイズ辺境伯の身内だとエバンに打ち明けた。もちろん王子だと言うことを明らかにする気はない。
何しろエバンも同じ境遇だった事に衝撃を受けたもんだ。
エバンはそんな境遇にもへこたれずこの辺境を素晴らしいところに変えようとしていると思うと自分にも何かできないかと思うようになった。
そしてメイズ辺境伯に連絡を取った。
祖父は俺が逃げて来た時に巻沿いを食って亡くなっていたが母シャロンの兄が後を継いでいた。
エストル・メイズ辺境伯と嫡男のガビアン・メイズ。ガビアンは俺と同じ年だ。
エストル叔父は俺は生きていることを知ってすごく喜んだ。でも、キアラルダの状況はセレスト国王代理が実権を握り今だ国に帰るのは危険だった。俺はそのままチェスナット辺境領に留まり騎士団で働くことにした。
エバンはニルス国の生末を案じていた。月光水晶の事でいずれ戦争にでもなるかもしれない事も危惧していて、それでキアラルダ帝国の状況を知りたいと言われ俺達は特殊部隊を立ち上げた。もちろんメイズ辺境伯も一緒に。
その名は《ビーストハンター》
ビーストハンターはギルドとして登録してキアラルダ帝国とニルス国を出入り出来るようにした。
表向きの仕事は魔物討伐で主にキアラルダの情勢を探る事。
メンバーは限られた人間で主にメイズ辺境伯が人選した。
ラキスはその一員だった。他にもシグスやメイトがいて商売人に成りすまして帝都の動きを探っている。
フォートは聖教会に入って神官をしながら情報を探っている。イリは女でメイドや侍女として貴族や王城に入り込んで情報を集めている。
みんなメイズ辺境出身者だ。
そして俺がこのビーストハンターのリーダーだ。彼らだけは俺がキアラルダ帝国のラビウド王子と知っている。
これは叔父のエストル・メイズが決めた事だった。
だが、俺は王子と名乗る気もないし帝国に戻る気もなかった。
帝都の動きはすぐにメイズやチェスナット辺境に入る事になっている。
魔物に関する情報もビーストハンターから知らせれていた確証がなかった。それがはっきりした。やっとニルス国の国王の重たい腰を上げさせれると思っていた矢先にこのざまだ。
クソ!
そんな状況でラキスとスクトは王都の状況を俺に報告をして来た。王都の事はラキスに任せてあったので月光水晶が破裂して暴動が起きているとだけは知らせが届いてはいたがくわしい報告を改めて聞く。
「王都が崩壊しただと?」
「はい、国民が王宮を開けろと暴動が起き、暴徒化した国民が王宮になだれ込みました。そこでは隊長やグラスリン侯爵がエグブランド公爵やジェリク殿下を拘束されていて、何でも月光水晶が粉々に割れて国王やエグブランド公爵、ジェリク殿下たちは硬直状態になったらしく、それに彼らと同じように不正やあくどい事をしていた貴族も同じように石化していたそうで、隊長は彼らはきちんとさばくことを約束して、すぐに王都の救助活動に取り掛かるように王国騎士団や国民に呼びかけ今必死で救助活動を行っている最中でして、俺たちはこの事を副隊長に知らせるように命令を受けました」
ラキスが口早に説明をする、
「それで副隊長。フレイシアさんが消えたんです。隊長はどんなに気がかりでも今は彼女を探せないと仰って我々にフレイシアさんが辺境に帰っていないか捜索するように言われました。副隊長、フレイシアさんがこちらに帰ってるなんてことは?」
スクトがそう言いながら辺りを見回す。
「いや、フレイシアは帰ってない。誰も見たとは言ってない」
「でも、もしかしたらグラマリンにいらっしゃるかも‥」
「あちらにも騎士が駐留してるからな。もしフレイシアが帰っていれば知らせがあるはずだ。だが、そんな知らせは届いてない」
「だが、どうしてフレイシアはいなくなった?」
隊長も隊長だ。こんな時に女の事など‥だが、いきなり消えたなどとそんな事があるのか?
「それは‥」
「何があった。言ってみろ!」
そして隊長からラキスたちが聞いた話は酷かった。
はぁぁぁ~、なにやってんだ。ったく。
大きくため息が出る話だった。魅了魔法にかかったのか?隊長ともあろうものが何たる不始末。挙句にフレイシアがいなくなった。なるだろう。そんなところを見せられて平気な女がいるはずがない。
きっと、感情的になって何もかも投げ出して逃げ出したんだろう。
だがニルス国にはすでに身内はいない。いっそキアラルダにでも逃亡したかもな。
「わかった。スクトお前は騎士団に合流して今まで通り魔物の見回りに入れ。フレイシアの事は任せろ。いいな」
「了解です」
スクトはすぐに部屋から出て行った。




