36殿下は異母兄ですよ
殿下の病気が治ったと知らせが行きすぐに王妃様やセレスト国王代理がバタバタとやって来た。
「クリス!あなた大丈夫なの?」
扉をいきなり開けて入って来たのは王妃様みたい。
殿下に縋りつき手をさすりまくっている。
「母上。はい、あんなに苦しかったのが嘘のように身体が楽になりました」
「良かった。良かったわ。もう無理かと‥聖女様ありがとう。これで国中の疫病は治せるわね。国民の不安はもう爆発寸前だもの。良かった~」
殿下に抱きつくようにしてうれしい悲鳴を上げる。
王妃様は金色の髪に翡翠色の瞳をしていた。クリス殿下は金髪に緋色の瞳。やはり王族の血は子供に出るんだ。
そんな事を思っていた。
って言うか。私これから国中の疫病を治すの?あなたたちが仕出かした後始末を私が?冗談ですよねと言いたかった。
「母上、皆さんがいらっしゃるんです。それに私はお腹がすきました」
「そうだったわ」
王妃様は改めて姿勢を正して私に向いてお礼を言った。
「聖女様本当にありがとう。心からお礼を言うわ。ああ、先にクリスの食事を頼んでちょうだい」
「はい、すぐに」フラン医師がすぐに手配をする。
「聖女様、私思ったのよ。クリスにはまだお相手がいなくてね。聖女様が婚約者になってくれたらどんなにいいだろうって。どう?あなたキアラルダ帝国の王妃になれるのよ。こんなチャンスもう二度とないわよ。まあ、婚約者になってもらうからには国中の疫病を治癒して回ってもらって天災で苦しんでいる民を助けてもらって、それから貴族たちの病に騎士団の魔物討伐にも参加してもらって‥」
「おいおいメルローズ。そんなにいっぺんに話すと聖女殿も驚くだろう。ハハハ‥聖女殿すまない。メルローズはせっかちなんだ」
ああ、この人がうわさのセレスト国王代理。彼も金色の髪、緋色の瞳をしている。
しかもクリストセレストの顔はそっくり。まぁ、同じ血族なんだから似ていて当然だろうけど‥
二人は笑い合って私を見た。
はっ、それにしてもよくも‥母様を追い出した悪女のくせに。それとそのでぶった偉そうな態度。あなたもグルなんでしょ!誰が協力なんか。
それに本気?彼は私の異母兄なのよ!
「失礼ですが私はそのような気はさらさらございません。もちろん疫病に苦しんでいる人は助けるつもりです。飢饉で苦しんでいる人たちにも協力を惜しみません。ですが殿下の婚約者など望んでおりません。では、私、忙しいのでこれで失礼します。マクリート大神官様、参りましょうか」
「はい、参りましょう。聖女様。ではセレスト国王代理。王妃様失礼いたします、殿下お大事に」
「ああ、マクリートご苦労」
「まあ、なんて生意気な!」王妃様が私を睨みつける。
「母上。聖女様に失礼ですよ」
「もう、クリスは優しいんだから」
いい気なものね。勝手に言ってなさいよ。振り返りもせずに部屋を後にした。
*~*~*
私はマクリート大神官に頼んで聖教会に一緒に帰った。あのまま王城に留まる気はない。何を言われるか分からないもの。
ところが翌日。元気になったクリス殿下から手紙が届いた。
要約すると私と婚約したいとの事。
はっ?誰か教えてやってもらえません。あなたと私、異母兄妹なんですよ。結婚出来ませんから!
さらに翌日。クリス殿下の突然の訪問。
「聖女様。いや、フレイシア。君は天使のように美しい。緋色の瞳ということは王族の娘。どこかの公爵の隠し子か何かなんだろう?もし、出目に問題があるなら関係ない。君は聖女なんだ。誰もが王妃にふさわしいと思ってくれる。だから私と婚約して欲しい」
だから、私ははっきり教えてやった。
「クリス殿下。私は20数年前国王の側妃に召し上げられたシャロン・メイズの娘なのです。母はお腹に私がいるときにあなたのお母様に王城を追い出された。無実の罪を着せられて。おまけにその後兄であるラビウド王子まで追い出して。あなたのお母様は鬼のような人なのよ。それからあのデブの国王代理とか言ってるくそも同じ穴の狢だと私は思ってるんですよ。見ます?ほら、私の手のひらにキアラルダの王族の証があるでしょう?私は紛れもないキアラルダの王女って事なんです」
私はここで手のひらをクリス殿下に見せる。
ヒィッ!クリス殿下の目が見開かれる。
そしてさらに。
「ほんと!良くも平然とそんな事が言えましたね。少し勉強してきたらいかがなんです?あなたのお母様と叔父様がどれだけ非道な事をしているか。呑気にこんな所で婚約して欲しいなんて言ってる場合じゃないんじゃありませんわよ。国民は今も苦しんでいると言うのに‥ったく。ふざけるんじゃないわよ!!さっさとお帰り下さい。ちょろいくそ✖&#がぁぁぁ!!」
あっ、すみません。つい、我慢が出来ませんでした。平民の使う汚い言葉を使ってしまいました。だって、我慢の限界でしたから。
クリス殿下が転びそうになりながら去って行った。
(キア、言ちゃった)
(いいわよ。あれくらい言わなきゃわからないわ。あの生ぬる~い温室育ちの殿下にはねぇ~)
(キア言うわね。最高に気分いい!さあ、みんなを助けなきゃ。私頑張るね)
(ええ、そう来なくちゃね!)
私達は笑いあった。
胸の奥で仕えていたエバン様への気持ちがほんの少し遠のいた気がした。
忘れよう。エバン様の事は‥




