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枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる  作者: はるくうきなこ


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31/84

31キアラルダ帝国に飛ばされていた

 

 目が覚めた私はどこにいるのか分からなかった。

 (ここはどこなんだろう?それにしてもここは診療所のような場所みたいだわ。白い壁、白い天井。個室だけどあるのはベッドの小さなサイドテーブルでシーツは清潔で真っ白でカーテンまで白いわ)

 そしてほんの少し消毒薬のような匂いがしていた。


 それにしても私‥

 ニルス国の王宮であった事を思い出すのは辛かった。

 エバン様も私を裏切るなんて。ジェリク殿下のやった事が悪魔の仕業に思える。自分の婚約者と他の男にあんな事を‥

 吐き気がする。

 何も考えたくもなかった。


 「失礼します」

 突然声がして男の人が入って来た。見た目は襟元まで詰まった神官が着るような服を着ている。

 私は上掛けをぎゅっと握りしめて首元まで上げる。

 「どなたです?」

 「お目覚めでしたか。これは申し訳ありません。驚かれましたよね。ここはキアラルダ帝国の帝都カラルーシにある聖教会にある診療所です。私は神官の一人でフォートと言います。どうぞよろしくお願いします」

 「え。‥」

 いつの間にキアラルダに来たわけ?帝都と言えばキアラルダ帝国の真ん中あたり、ニルス国からはかなりの距離があるのに‥

 「驚かれるのも無理はありません。私達もあなたが現れた時には驚きましたので‥」

 「あの、助けて頂いてありがとうございます。私はフレイシア・タンジールと言います。その、フォート様、良ければその私が現れた時のことを聞かせてもらっても?」

 こんな言葉使いをするべきではないだろうが、何しろ驚いてそれどころではない。


 「はい、2日前の事でした。私達は聖教会の祭壇の前で祈りを捧げていました。するといきなり月の女神キアーナ様の像が光りました。その光は眩く私達は目を覆って次に目を開けた時には祭壇の上にあなたがおられました。そして女神キアーナ様の声が聞こえました。このものはキアラルダの聖女であると‥」

 フォートと名乗った神官は酔いしれたような顔で私を見た。


 「いえ、いえ、そんな。違います。確かにニルス国で月の女神の精霊の加護を受けていると聖女と言われてますが、ここは本家本元のキアラルダ帝国ですよ。私が聖女だなんて違いますから‥」

 「いえ、間違いありません!何人もの神官が聞いております。あなたは間違いなくキアラルダに降臨された聖女様です!」

 「いいえ、そんなはずは‥」と言いかけた時。


 ふわりと身体が浮き上がる感覚がしたと思ったら目の前に女性が浮かんでいた。

 それはまさにニルス国の聖教会にあったキアーナ像みたいに美しく慈愛に満ちた姿で。

 「もしかしてあなた様は月の女神。キアーナ様では?‥」

 私の口から言葉が零れ落ちる。


 【ええ、そうよ。私はキアーナ。話はキアから聞いたわ。ニルス国で酷い目に遭ったんですって。だから私が貴方を助けたの。あんな男ども溺れ死ねばいいんだわ!!】

 女神キアーナ様は憤りも露わに興奮している?ように見えるけど。

 (女神さまにそんな風に思って頂けるなんて‥ありがとうございます)

 脳内でキアと同じように思ってみる。


 【いいのよ。本当のことだもの。コホン。それでね。行き場を失ったあなたにぴったりの仕事を授ける事にしたのよ。キアラルダには竜神レオンのしでかした不始末を何とかしなければならなかったの。だからフレイシアあなたには私の権限でキアラルダで起きている疫病やその他もろもろ出来る治癒の力。そして天災で生きている飢饉に対処できる力を授けたわ。竜神レオンはすでに天に帰って反省しているしこれ以上の被害は出ないはず。なので後の始末をお願いしたいのよ】

 (いえ、そんな大仕事。私にピッタリの仕事とは思えませんが‥?)

 恐ろしくもめちゃめちゃ大変そうな大役。引き受ける自信などないない!

 それよりキアーナ様の態度がものすごくフレンドリーなんだけど。

 

 【あら、じゃあ聞くけど、あのままニルス国にいた方が良かったわけ?あなたが月の精霊の加護を持っているとすぐにばれるわ。そうすれば嫌でも協力させられるはずよ。まあ、月光水晶はもう私が壊したからあなたにその力もなくなったはず。そうなれば後は無理やりジェリクのものにでもされるとか?だから、あんな事やそんな事‥ほらあの衝撃的なシーンを見たら‥エバンとはうまく行かないと思うし。だから、一気に私がキアラルダに連れて来ちゃったってわけ。ここで新たな生活を始めると言いんじゃない?】

 (あ、あの‥あんな事やそんな事すべてお見通しって事?キ、キアーナ様もあれを見たって事?)

 怒涛の衝撃!

 これ最大重要漏洩ってやつじゃない。エバン様が私を裏切ったことまで‥まあ、あの衝撃は脳裏に焼き付いて二度と忘れられそうにないからキアーナ様の言う通り‥って言うか、もう、あんな奴こっちから願い下げだけど。

 それはそれじゃない?


 【ねっ、よく考えればそう思うでしょう?】

 (でも、なんだかキアーナ様の都合にあわされたような気もしますが‥私、聖女なんて無理ですから)

 【まあ、フレイシアほど理にかなった聖女はいないのよ。もう、仕方がないわね。あなたは知らないのよ。いいわ教えてあげる】

 (何です?)

 これがほんとに女神と人間の会話でいいのかとも思うがキアーナ様は気にしてなさそうなので気軽な返事で返してはみるが‥

 何だか押し付けっぽくて納得がいかないなぁ~。


 【いい、良く聞きなさい。あなたのお母様は前国王の側妃だったの。メイズ辺境伯の娘で側妃として召し上げられたのよ。それで先に王子を産んだの。王妃にはまだ子が出来なくてシャロン。お母様の本当の名前よ。シャロンはすごく王妃から疎まれた。そして20数年前、王に毒を盛ったと罠にはめられてシャロンは父親を頼って逃げた。でもキアラルダにいることは危険でニルス国に逃げたの。名前をせピナと変えてお腹には国王との間に出来たあなたがいたからあなたを守るために、そしてローダン・タンジールと出会って結婚したのよ。あっ、もちろんシャロンもローダンを愛してたわよ】


 (そんな訳‥ああ、両親が愛し合ってたって言うことはわかるけど)キアーナ様の言う事に頭がついて行かない。


 【それにね。キアラルダでは王族に女の子が生まれると必ずと言っていいほど月の精霊の加護を受けるの。だから王女が生まれると月色樹を植えるのよ。儀式で月色樹の樹液を飲んで精霊と契約をするのよ。だからお母様は月色樹を植えてあの時あなたに樹液を飲ませたんだと思うわ。キアラルダの王女であるあなたにはその権利があるから】

 (うそうそ。そんなの出鱈目よ。母様は平民だって言ってたもの。私がこの国の王女だなんて‥こんな髪色で緋色の瞳を持った王女なんているはずがないわよ!エバンの事だけでもいっぱいいっぱいなのに、私がこの国の王女?もういい加減にしてよ)



 不意にフォート神官が口を出した。

 「いえ、確かに。緋色の瞳はキアラルダ帝国の王族の色です。私達ももしかしたらと思っていました。そうなんですね。あなたは側妃でいらしたシャロン様の忘れ形見だったとは‥キアーナ様それでフレイシア様を聖女として迎える事にされたのですね?」

 【まあ、そういう事よ。キアラルダを助ける聖女が必要なの。それはあなたにしか出来ない事なの。フレイシア諦めて聖女としてこの国を救ってちょうだい。お願いよ。私もうそろそろ帰らなきゃ。また、あのポンコツが騒ぐとまずいでしょう?じゃあ、よろしく。あっ、それからフレイシア、あなたの手の平には竜と月の刻印が現れてるはず。それがキアラルダの王族の証でもあるから。何か疑われたりしたらそれを見せるといいわ】

 そう言うが早いかポワンと煙のようにキアーナ様は消えた。


 「キアーナ様。待って下さい。こんなの無理ですよ。私にこの国を救えなんてひどすぎません?私を助けてくれたんでしょう?これじゃ助けた意味ないじゃないですかぁ~!!」

 と大絶唱で叫んだ。

 【‥‥‥】一切の応答なし。


 しゅんとうなだれた私の手をフォート様が取った。

 「フレイシア様、あなたはキアラルダ帝国の王女。そして聖女様であるとキアーナ様のお導きがあったのです。私はすぐに大神官様にこの事を報告します。どうか、今しばらくお心安らかに休まれていてください。すぐに参りますので‥」

 「いえ、私、そんなつもりは‥」

 そんな‥ほんとに私が王女なの?信じられないんだけど。一体これからどうなるのよ~!

 そっと手の平を見る。

 手の平に月の上に乗っかった竜が。

 いた。

 「うそ~!!」







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