28プレゼント(エバン)
フレイシアを部屋に連れて行くと俺はすぐにオキウス・グラスリン侯爵と連絡を取った。
彼は俺の父(前国王)の側近だった。若いが切れ者と言われていた。
そして何より数少ない俺の恩人で虐げられている俺の身を案じていつも心を砕いてくれた。
勉強や剣術を勧めてくれたのも彼で、時々王宮から連れ出して屋敷に連れて行ってくれた。
夏季休暇や舞踏会シーズンなどは1~2か月屋敷で過ごさせてくれたりもした。
今でも、時折王都の様子などを知らせてくれたり、他にも宰相のキロフ・エグブランド公爵がジェリク殿下と通じて何やら画策しているらしい事も知らせて来た。だが、俺は今まで王都の事には全く無関心だった。
辺境の事が大変だったし後継者争いに巻き込まれて嫌な思いをするのも嫌だった。
だが、王都に来て後悔した。
もっと早く王都の様子を知るべきだった。知らん顔をしているのではなくフレイシアの様子も気にかけていれば‥
今さら悔やんでも仕方のない事だが、だからこそ今回はニルス国の為にも、月の加護を受けているフレイシアの為にもやるべき事をしたいと思っている。
フレイシアが休んでいる部屋に声をかける。
「フレイシア入ってもいいか?」
「はい、どうぞ」
「無理をさせたすまん」
「とんでもありません。私の方こそ足手まといになってしまいました。でも、エバン様が動いて下さって本当に心強いです」
そんな事を言われる資格などないのに‥
「フレイシア、すまんが俺は少し出かけて来る。なに、護衛の騎士はいるし安心して待っててくれ!‥あの‥‥フレイシア、これを」
彼女の手の上に髪飾りを置いた。
グラスリン侯爵からの連絡を待つ間に宿の近くの小物の店を訪れてフレイシアに髪飾りを買って来た。
思えば彼女の両親の墓参りにも連れて行ってなかった。魔物討伐や他にもいろいろと忙しく買い物に行けとは言ったが何もプレゼントしていないと気づいた。ったく!遅いだろと思う。
急いで小物屋を見つけて中に入って見るが女性のプレゼントなど選んだことのない俺にはさっぱりわからない。
でも、一つだけこれはと思う髪飾りが目についたのでそれを買ったんだが‥
金と銀を使ったリボンを型取った髪飾り。真ん中には赤いフレイシアと同じ瞳の色の宝石が。でも宝石の名前までは知らんが。
「これは?」
フレイシアが驚いた顔でその髪飾りを食い入るように見つめている。
「いや、両親の墓参りに連れて行くと言ってまだ行けてないし、それにこうして無理をさせただろう‥その‥何かプレゼントをと思って‥いや、いいんだ。俺は女のものなんか良くわからんから‥気に入らなければ捨てて‥」
俺はてっきり彼女が気に入らなかったのかと慌てて髪飾りを取り上げようとした。
途端に彼女が髪飾りを握りしめた。
「そんな、こんなに可愛い髪飾り。すごくうれしいです。エバン様が選んでくれたんですよね?大切にします。ありがとうございます」
「いや、気に入ったなら良かった。では、行って来る。先に寝ていてくれて構わないから」
「はい、わかりました。エバン様も無理をなさいませんように」
フレイシアが手のひらを俺にかざす。
淡い光の粒がハラハラと舞い俺を包み込んで消えた。
「お祈りです。エバン様が無事に帰って来れますように」
「ああ、もちろんだ。行ってくる」
俺は護衛の騎士を残してグラスリン侯爵に会いに向かった。
ラキスとスクトには最初に言ったように王都の様子を探ってくるように指示を出した。
二人は宿に着くと間なしに宿から出て行った。




