20手当て
「こっちだ」
急いでラキスさんについて行く。
騎士団の救護所にはたくさんの怪我人がいた。
その奥の部屋に血だらけのラヴァード副隊長が横たわっていた。
「しっかりしろラヴァード!すぐ手当てをするからな。頑張れ!」エバン様が傷口を止血している。
「うあ”、ぐはぁ~」
かなり痛むのだろうあの冷血漢が顔を歪めて脂汗もたらたらだった。
見れば腹が開いている。
うわぁ、これもう無理かも‥私は顔を背けた。
でも。
「フレイシア、来てくれたのか」
エバン様がほっと安心したような顔をした。それだけで私はやる気が出た。だって私を頼っているってわかったから。
「はい、でもこんなひどい傷治せるかわかりません。でも、やってみます」
「げほっ‥余計な事をするな。俺は自分の怪我は自分で何とかする。いいから他の奴の治療を‥ゴホッゴホッ‥」
「ばか、ラヴァード。いくらおまえでもこれは無理だ。いいから俺達に任せろ。フレイシア頼む」
「はい、やってみます」
(キア、お願い)
(任せてフレイシア。さあ、力を込めて‥)
手のひらを傷口にかざして満身の力を困るつもりで。
手のひらから神々しいほどの光があふれ出る。
その光がぱっくりと開いた腹を覆うように光の粒子が傷口を包み込む。次第に傷口が閉じて行く。
完全に傷口が閉じた事を目視すると私は手のひらの力を緩めた。光は一気に吸い込まれるように消えた。
どたん!
私は力を使い過ぎたのかよろめいて尻もちをついた。
(フレイシアやったね。すごいよ)
(うん、キア。良かった‥)
「フレイシア!大丈夫か?こんなになるほど君は‥ありがとう。おかげでラヴァードは命拾いした。ほんとにありがとう」
エバン様が私を抱き上げて頬ずりして来る。
私は当然の事をしただけだと言いながら意識が遠のいた。
*~*~*
私は目が覚めると身体が気だるかった。
「わたし‥?」
「気が付いたのか?良かった。フレイシア無理をさせて済まなかった」
ベッドに横たわったままエバン様がすぐそばでそう言った。
「無理?ああ、そう言えばラヴァード副隊長は?」
「ああ、無事だ。フレイシアのおかげですっかり傷は治っている。安心して。それより気分はどう?」
「ええ、大丈夫です。あんなに力を使ったの初めてだったからきっと身体がびっくりしただけだと‥」
「そうか‥」
「あの、今何時ごろでしょうか?私どれくらい気を失ってました?」
「4~5時間かな。ああ、そう言えばフレイシアあのミニピザはどうしたんだ?マリンがフレイシアが作ったって聞いたぞ。みんなに食べさせて欲しいからって、もう、みんな大喜びで食らいついてたぞ。ったく、俺はまだ食べてないと言うのに!」
エバン様はほっとした顔をしたのも束の間、今度は驚いた顔をして次に悔しそうに拳を握りしめた。
「それって‥エバン様はずっと私についててくれてたって事で、す?」
「当たり前じゃないか。俺達の為にこんな事になったのに、すまなかった。ほんとうにありがとう」
そこに扉がノックされる音が。
「フレイシアさんは気が付いたみたいですね?すみません、声が聞こえたので食事をお持ちしましたよ。さあ、旦那様の分はきちんと残してありますからどうぞ一緒に召しあがって下さい」
「マリン!」
エバン様の耳が赤くなっている。
「だって残ってるかご心配だったんでしょう?もちろんわかってますよ。フレイシアさん気分はいかがです?心配しましたが旦那様が私達を入れて下さらなくって」
「マリン!」
「だって、本当の事です。あっ、騎士の皆さん美味しい美味しいってあっという間に平らげてました。フレイシアさんにお礼を言って欲しいと頼まれました」
「そうですか。よろこんでいただけてよかったです。マリンさんありがとうございます。そうだ!あの、冷蔵箱にプリンがあるので良かったらマリンさんやマクベルさんで召し上がって下さい。一つだけエバン様にも持ってきていただけると‥」
「まあ、そんなサプライズが!?もう、フレイシアさんったら!すぐにプリンお持ちしますね」
マリンさんはあっという間にプリンをふたつ持ってきてくれた。
「では、ごゆっくり」
「いえ、マリンさんも一緒に‥」
「フレイシアさん、私を失業させる気ですか?旦那様後はよろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をするとマリンさんはさっさと出て行った。
「エバン様。わ、わたし自分で食べれますから、お気遣いなく」
「はっ、あれほどの貢献をしたフレイシアにそんな事をさせられると?いいから口を開けろ!あ~んだ」
何だかエバン様の顔がものすご~く威圧的で‥その眉間の皺。何とかなりませんか?と言いたくなるが‥
「ほら、あ~ん」
「はぃ、あ~ん」ミニピザが口の中に。次はスープが。
エバン様は合間にミニピザを口に運んではうまいうまいと次々に食べて行く。
良かった。みんなが喜んでくれて。
「さあ、今度はお待ちかねのプリンだ。ほら、口を開けてあ~ん」何だかもうあ~んするのも慣れてると言うか完全にエバン様のペースにはまっている。
「あ~ん。ごくん。う”っ!」のど越しマイルドなプリンが口の中でほぐれて行く。
ああぁぁぁ~やっぱり裏ごし5回やって良かった。なに、このまろやかな舌触り。今までで最高じゃない?
なんて歓喜に震えプリンを堪能してしまう。
わちゃわちゃと感激している私を楽しそうに眺めていたエバン様がごくりと喉を鳴らした。
「うまいか?じゃ、俺も‥う”う”う”ぅぅぅぅぅ~何だこれは‥こんな美味いプリン初めて食った。これ最高じゃないか?フレイシアお前ってやつは~。これは俺以外の奴には食わせるなよ!隊長命令だ。絶対にだ!!いいな」
エバン様の顔が戦闘態勢みたいに、いかついた顔になっていた。
「あの‥マリンさんたちはいいですよね?」
「‥‥‥」
ぐっと目つきが鋭くなって考え込んだ。
あっ、これだめってこと?
そんなにプリン好きだったんだ。




