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苦悩
帝都保安局の留置場に長く拘束されていたジョン・クリスティの姿は、日に日にやつれていった。
身体の衰弱のみならず、精神の疲弊も激しく、瞳の輝きは薄れていった。
相談役アイリス・カロルは、重い進行性瘴毒症(胃瘴毒)に侵されながらも、病床でなお工房の未来を案じていた。
彼女の弁護士は、何度も保釈請求を帝都裁決院に提出したが、すべて拒絶された。
「医療を願う者に、これほどまでの冷酷な裁きを下すとは」
彼女は窓の外の淡い光に目を細め、静かに呟いた。
工房で働く女性職員の一人は、数十回に及ぶ取り調べの中で心身を蝕まれ、重いうつ病を発症。
孤独な闇の中で、彼女は静かに叫んでいた。
二〇二六年二月五日、代表ジョンと常務フェリシアは十一か月ぶりに釈放された。
しかし、解放の喜びは短く、二月七日には相談役アイリスが療養院でその生涯を閉じた。
帝国司法の冷酷さと、保安局の杜撰な捜査がもたらした犠牲に、社会の非難は強まった。
にもかかわらず、事件を主導した第五監察課指揮官マグナス・ハースティングは昇進を果たし、誰一人責任を問われることはなかった。