5ー13
慰めが欲しくて、話した訳でもないのに。
救われたのは一体誰なのか。
「それに」
カナメが下を向いて話す。
「それに?」
「わたしも、マーリンに話したいことがあるの」
そうして少年は知る。
どうしてここ数日、カナメが暗い顔をしていたのか、その理由を。
カナメの話を聞き終えた少年の肩が震える。
彼女から顔を逸らし、口元に手をあてる。
「……ふふっ」
「…………」
「くっくっくっ」
「…………ねえ」
「いや、わるい……くっ、ふふっ」
「…………ねえ!」
「あっはっはっはっ!」
「笑いすぎだよね!?」
顔を真っ赤にしながら立ち上がるカナメ。
「たったいま失望したよ! ひとの気持ち分かって!?」
「悪い悪い……いや、可愛いところがあるなと思って」
「ぐるるるる」
「どうどう」
野犬みたいに唸るカナメを見て楽しそうに笑うマーリン。笑ってくれるのは嬉しいけど、それとこれとは話が別だと彼女は憤慨する。
こっちは泣いたのに。
座って少年を睨むカナメ。
「似たもの同士だな」
「……なにが? ぐるるるる」
「悪かったって。……お互いがっかりされたくないから、自分を知ってもらうことを恐れてた訳だ。でもまさか、旅を楽しいと思ってくれてるとは」
「……楽しいよ。いままで魔物ばっかり倒してきて、景色を見る暇なんてなかった。でもエルドラに来て、竜にも乗って、空から見た景色が凄く綺麗で、オリヴィエさんにも出会って……それに、マーリンと一緒にいるのが何より楽しかった」
「……」
「にやにやするなっ……!」
誰だこいつを天使と表現した馬鹿は。
天使ではなくまるで悪魔だ。
「家族のもとへ帰りたいと思ってないか、無理して付き合わせてないか。そこも不安だったよ俺は」
「前に言ったよ、どこまでも付いていくって。わたしが選んだ道だからマーリンは心配しなくていいのに」
「……そうだったな。それなら、カナメも心配しなくていい」
「?」
「用無しなんて、そんな訳ないだろ? 大人に戻っても俺達の関係は切れない。カナメが住む町へ遊びにだって行くさ」
「……ほんと?」
「ああ、ほんとだ。約束する。何なら家族と一緒に何処かへ出掛けよう」
二人して笑みを溢す。
決して千切れることのない約束が交わされ、立ち上がる少年。
「さて、闘技場も近い。軽く手合わせでもしようか、カナメ」
少年に頷き彼女も立ち上がる。
あれだけ悩んでたのが馬鹿みたいだ。オリヴィエには感謝しかないと心底思うカナメ。彼女の言葉がなかったら踏み出す勇気を持てなかった。
「今日は優しくしてよ。あれだけ笑ったんだから」
「それとこれとは話が別」
「いじわる」
対峙する二人。
先までの暗い雰囲気は晴れた。
来たるその日まで、心身ともに研鑽を積む二人の魔術師。
闘技場まで後数日。のどかな昼下がりの中、時折会話を交えて、楽しそうに笑う二人の姿がそこにはあった。




