5ー9
「わ、私はカナメって言います」
声は震えていないだろうか。緊張を隠せているだろうか。何かあった時に直ぐ対応できるよう、警戒するカナメ。
「カナメね。キャメロットでは見なかった顔だけど、マーリンとどういう関係?」
そんなカナメの気持ちを知ってか知らずか、淡々とした声で話を進めるリア。
「私とマーリンは」
身構えていることが悟られないよう、適当でもいいから相槌を打てばいい。
「私と、マーリンは…………」
頭ではそう分かっていても、返事が上手にできないカナメ。気まずい空気が流れる前に、少年が口を開く。
「相棒だ。俺には勿体ないほど出来の良い、な」
「……へえ?」
リアが不思議そうな表情でマーリンに目を向けてから、カナメをじっと見る。値踏みしているのか、何か疑いを持っているのか、俯いたままのカナメにはリアの真意が読めない。
「いきなり何? いままで部下を持ったことなんてないのに」
「必要なかったからな、全て俺一人で事足りてた」
「いちいち憎たらしいな。けど、事実か」
「それとリア、部下とは少し違う。カナメとは対等な関係のつもりだ」
「対等?」
マーリンの言葉を聞いて馬鹿にしたように吐き捨てるリア。口元に手をあてる仕種は笑みを隠しているように見えた。
「あんたと対等な人間なんているの? ははっ……ーー笑わせないで、化物。分かり合える人間なんて誰一人としていない癖に。だから殺せたんでしょ」
「…………」
カナメが顔をあげる。
口を噤む少年の顔を見てーー初めて見たその表情で、カナメはリアに敵意を向ける。
「あの」
「……びっくりした。急に声あげないでよ」
「決めつけないでください、分かり合えないなんて」
「はい?」
「それと化物じゃないです、マーリンはマーリンです」
「…………な、る、ほ、ど。確かに出来の良い」
マーリンを横目で見るリア。
「詳しいんだ? マーリンのこと」
「それ、は」
「別に貴女と口喧嘩するつもりはない。でも忠告はしておく。もしマーリンが元の姿に戻れたら、貴女、用無しだよ?」
沈黙が訪れる。
カナメを黙らせるには充分なほどの、核心を突いた言葉。
それはここ数日間ずっと、カナメの頭の片隅にあったどうしようもない不安で、考えたくもない未来のことだった。
「都合良いように使われてるだけ、って、まあいいや、貴女が決めることだし。誰かに仕えることを私は否定はしたくないから。ーー最後に。聞いておきたいことがあるの、マーリン」




