5ー8
オリヴィエと離れてから三日。飛竜から馬車へと乗り継ぎ、都市アラディアの方角を目指すマーリンとカナメ。
ここら一帯の上空は危険で、飛び回っている野生の魔物は見境なく人間を襲ってくる。地上にいる分には滅多に襲ってこないといった理由で、現在二人は馬車の荷台に揺らされていた。
木々の隙間から差し込む暖かな陽の光。人や馬車が通れるよう整地された道を馬がゆったりと歩いていく。小鳥の鳴き声が聞こえる中、向かい合う形でマーリンとカナメは座っていた。
「最悪」
荷台には五人。内一人が荷台の壁に背中を委ね、マーリンを見てそう呟いた。カナメの隣にいるその女性は先まで被っていたフードを外し、木漏れ日の下、素顔を晒している。グレーの目に長いまつ毛、切り揃えられた短い金髪。カナメよりも背丈が小さく、白くて綺麗な肌が陽光ではっきりと分かる。
「どんな確率よ。そもそも何でエルドラにいるわけ?」
「体を戻す為に来たんだ。まさか会えるとはな、リア」
「私は二度と会いたくなかった」
「元気そうで良かった」
「いま最悪の気分ですけど」
辛辣な言葉を吐き続ける女性、リアにカナメは戸惑う。荷台に乗り込む際、フードを被った女性にマーリンが声を掛けていまに至った訳だが、カナメは二人の関係が分からないままでいる。
リアは冷たい瞳で、子供の姿をした魔術師へと視線を向ける。
「その姿。ブリタニアでは見つからなかったのね。いい気味」
「いや、ブリタニアにも可能性はある。どう解除できるか間違った方法で探してたからな。どちみち、エルドラの術式が絡んでるからこっちでも探すことに変わりはないが」
「あの方の魔術がそんな簡単に解けるわけないでしょ。せいぜい苦しめ」
「厳しいな。でも、最初から簡単とは思ってないよ、リア」
「……ふん」
つまらなそうに、頬に手をつくリア。
「あの、マーリン」
困惑しながらも、黙って話に耳を傾けていたカナメが声をあげる。
「ああ、悪い。リアは、」
紹介するよりも先に、マーリンに向けてリアが指をさす。
「そいつに殺されたヴォーティガーン様の腹心、リア・ローズ。貴女は?」
「え……?」
言われたことをそのまま飲み込むことができず、言葉に詰まってしまうカナメ。
ヴォーティガーンの、腹心?
どうしてここに、という疑問が一番先に浮かぶ。
いや、そんなことよりもと、もう一つの考えが頭を支配する。
リアにとってこの状況は復讐をする絶好の機会だと。




